聖書 — 口語訳 (1955)
創世記 32
概要
創世記32章は、ヤコブが二十年前にだました兄エサウと再会する前夜を語ります。ヤコブは恐れ、使者を送り、宿営を二つに分け、神の約束を思い起こして祈り、贈り物を整えます。夜、ただひとりヤボクの渡しに残ると、ひとりの人と夜明けまで格闘し、祝福を受けるまでは離さないと言います。腰を痛めながらも、イスラエルという新しい名を受けて去ります。神に頼らざるをえなくなった人の姿を示す章です。
この章の3つの区分
1さて、ヤコブが旅路に進んだとき、神の使たちが彼に会った。
2ヤコブは彼らを見て、「これは神の陣営です」と言って、その所の名をマハナイムと名づけた。
3ヤコブはセイルの地、エドムの野に住む兄エサウのもとに、さきだって使者をつかわした。
4すなわちそれに命じて言った、「あなたがたはわたしの主人エサウにこう言いなさい、『あなたのしもべヤコブはこう言いました。わたしはラバンのもとに寄留して今までとどまりました。
5わたしは牛、ろば、羊、男女の奴隷を持っています。それでわが主に申し上げて、あなたの前に恵みを得ようと人をつかわしたのです』」。
6使者はヤコブのもとに帰って言った、「わたしたちはあなたの兄エサウのもとへ行きました。彼もまたあなたを迎えようと四百人を率いてきます」。
7そこでヤコブは大いに恐れ、苦しみ、共にいる民および羊、牛、らくだを二つの組に分けて、
8言った、「たとい、エサウがきて、一つの組を撃っても、残りの組はのがれるであろう」。
9ヤコブはまた言った、「父アブラハムの神、父イサクの神よ、かつてわたしに『おまえの国へ帰り、おまえの親族に行け。わたしはおまえを恵もう』と言われた主よ、
10あなたがしもべに施されたすべての恵みとまことをわたしは受けるに足りない者です。わたしは、つえのほか何も持たないでこのヨルダンを渡りましたが、今は二つの組にもなりました。
11どうぞ、兄エサウの手からわたしをお救いください。わたしは彼がきて、わたしを撃ち、母や子供たちにまで及ぶのを恐れます。
12あなたは、かつて、『わたしは必ずおまえを恵み、おまえの子孫を海の砂の数えがたいほど多くしよう』と言われました」。
13彼はその夜そこに宿り、持ち物のうちから兄エサウへの贈り物を選んだ。
14すなわち雌やぎ二百、雄やぎ二十、雌羊二百、雄羊二十、
15乳らくだ三十とその子、雌牛四十、雄牛十、雌ろば二十、雄ろば十。
16彼はこれらをそれぞれの群れに分けて、しもべたちの手にわたし、しもべたちに言った、「あなたがたはわたしの先に進みなさい、そして群れと群れとの間には隔たりをおきなさい」。
17また先頭の者に命じて言った、「もし、兄エサウがあなたに会って『だれのしもべで、どこへ行くのか。あなたの前にあるこれらのものはだれの物か』と尋ねたら、
18『あなたのしもべヤコブの物で、わが主エサウにおくる贈り物です。彼もわたしたちのうしろにおります』と言いなさい」。
19彼は第二の者にも、第三の者にも、また群れ群れについて行くすべての者にも命じて言った、「あなたがたがエサウに会うときは、同じように彼に告げて、
20『あなたのしもべヤコブもわれわれのうしろにおります』と言いなさい」。ヤコブは、「わたしがさきに送る贈り物をもってまず彼をなだめ、それから、彼の顔を見よう。そうすれば、彼はわたしを迎えてくれるであろう」と思ったからである。
21こうして贈り物は彼に先立って渡り、彼はその夜、宿営にやどった。
22彼はその夜起きて、ふたりの妻とふたりのつかえめと十一人の子どもとを連れてヤボクの渡しをわたった。
23すなわち彼らを導いて川を渡らせ、また彼の持ち物を渡らせた。
24ヤコブはひとりあとに残ったが、ひとりの人が、夜明けまで彼と組打ちした。
25ところでその人はヤコブに勝てないのを見て、ヤコブのもものつがいにさわったので、ヤコブのもものつがいが、その人と組打ちするあいだにはずれた。
26その人は言った、「夜が明けるからわたしを去らせてください」。ヤコブは答えた、「わたしを祝福してくださらないなら、あなたを去らせません」。
27その人は彼に言った、「あなたの名はなんと言いますか」。彼は答えた、「ヤコブです」。
28その人は言った、「あなたはもはや名をヤコブと言わず、イスラエルと言いなさい。あなたが神と人とに、力を争って勝ったからです」。
29ヤコブは尋ねて言った、「どうかわたしにあなたの名を知らせてください」。するとその人は、「なぜあなたはわたしの名をきくのですか」と言ったが、その所で彼を祝福した。
30そこでヤコブはその所の名をペニエルと名づけて言った、「わたしは顔と顔をあわせて神を見たが、なお生きている」。
31こうして彼がペニエルを過ぎる時、日は彼の上にのぼったが、彼はそのもものゆえに歩くのが不自由になっていた。
32そのため、イスラエルの子らは今日まで、もものつがいの上にある腰の筋を食べない。かの人がヤコブのもものつがい、すなわち腰の筋にさわったからである。
鍵となる聖句
あなたがしもべに施されたすべての恵みとまことをわたしは受けるに足りない者です。わたしは、つえのほか何も持たないでこのヨルダンを渡りましたが、今は二つの組にもなりました。
ヤコブはへりくだって祈ります。自分は神のすべての恵みとまことを受けるに足りない小さな者で、ヨルダン川をただ一本の杖で渡った者だと言います。この祈りには、策略を離れ、恵みに寄りかかる人の姿があります。
その人は言った、「夜が明けるからわたしを去らせてください」。ヤコブは答えた、「わたしを祝福してくださらないなら、あなたを去らせません」。
ヤコブは相手にしがみつき、祝福を求めます。その粘り強さは力ではなく、神への切実な必要です。彼はすでに傷ついているからです。
その人は言った、「あなたはもはや名をヤコブと言わず、イスラエルと言いなさい。あなたが神と人とに、力を争って勝ったからです」。
名前が変わることは、アイデンティティが変わることを表します。人を押しのける者ヤコブは、神と格闘して祝福を得た者イスラエルとなります。
そこでヤコブはその所の名をペニエルと名づけて言った、「わたしは顔と顔をあわせて神を見たが、なお生きている」。
ヤコブはその場所をペニエル、すなわち神の顔と名づけます。神と顔と顔を合わせて見て、なお生きながらえたからです。この出会いは彼の人生に跡を残しました。
この章に登場する人物
このテーマで祈る
説教が語っていること
創世記32章についてよくある質問
創世記32章でヤコブと格闘した人はだれですか
本文はまずひとりの人について語り、そのあとヤコブは神を顔と顔を合わせて見たと言います。多くのクリスチャンは、神ご自身、またはその使い、ときには受肉前のキリストだと考えます。御使いだと見る人もいます。いずれにしても、神との現実の出会いであり、神はヤコブを祝福して名を変えられました。
イスラエルという名前にはどんな意味がありますか
本文自体が説明しています。あなたは神と人と闘って勝った、というのです。イスラエルは、ヤコブから出た民の名となります。ヤコブは力で勝ったのではありません。腰を痛めながらも離さなかったから、祝福を得たのです。
なぜヤコブはエサウに会うのを恐れたのですか
二十年前、ヤコブは策略で兄の長子の権利と祝福を取り、そのあと逃げました。帰る途中、エサウが四百人を連れて迎えに来ると聞きます。復讐されることを恐れて祈り、贈り物を整えました。
創世記 32を引用している記事
口語訳(1955年)— パブリックドメイン。