要約
アドニヤはダビデ王とハギテの子で、ヘブロンで生まれました。ダビデが非常に年老いたとき、王はソロモンが後を継ぐと誓っていたのに、自ら王と宣言しました。ヨアブと祭司エブヤタルがこれを支持しました。ダビデはソロモンをギホンで油注がせ、恐れたアドニヤは祭壇の角をつかみました。ソロモンは一度は赦しましたが、アビシャグを妻にと願い出たため処刑しました。どんな野心も神の選びを覆せないことを教えています。
アドニヤという名前の意味
アドニヤという名は、ヘブル語で「わが主は主」を意味するとされることが多いです。聖書はこの名の由来を説明していません。ダビデの第四子で、ヘブロンでハギテから生まれたと紹介されています(第二サムエル3章4節)。
アドニヤの時代背景
アドニヤはダビデ王の晩年、一般的な目安で紀元前970年ごろに登場します。ダビデは四十年王位にあり、ヘブロンで七年六か月、エルサレムで三十三年治めました(列王紀上2章11節)。王はひどく年老い、着物を重ねても暖まらず、シュネムの娘アビシャグが仕えていました(列王紀上1章1〜4節)。後継者の問題は未解決でした。ヘブロンで生まれた子らはアムノン、キレアブ、アブサロム、そしてアドニヤの順です(サムエル記下3章2〜4節)。アムノンとアブサロムはすでに死に、キレアブについては出生以後の記述がありません。アドニヤは自分を当然の跡継ぎと考え、王国は自分のものだったと語ります(列王紀上2章15節)。しかしダビデはバテシバに、ソロモンが跡を継ぐと誓っており(1章13、17節)、主がソロモンを選ばれたとも述べます(歴代志上28章5節)。物語は、息子の願望と神の決定を対比させています。
アドニヤの生涯
ヘブロンで生まれたダビデの四男
サムエル記下3章2〜5節ダビデがヘブロンで王であった七年六か月の間に、六人の妻から六人の子が生まれました。長男はアムノン、次男はキレアブ、三男はアブサロム、四男はハギテの子アドニヤ、五男はシパテヤ、六男はイテレアムです。のちに聖書は、アドニヤがたいそう美しい姿で、アブサロムの次に生まれ、父が一度も、なぜそんなことをするのかと言って彼を悩ませなかったと記します(列王紀上1章6節)。この名簿だけでは彼の行いは予想できませんが、母の違う王子が何人もいたことは、のちの緊張の背景を示しています。
自ら王と称する
列王紀上1章5〜10節ダビデが年老いた時、アドニヤは高ぶって、自分が王になろうと言いました。彼は戦車と騎兵、先に走る五十人を整え、ヨアブと祭司アビヤタルと話し合って、二人は彼の側につきます。祭司ザドク、ベナヤ、預言者ナタン、シメイ、レイ、ダビデの勇士たちは彼につきませんでした。アドニヤはエンロゲルのそばのへびの石のところで羊、牛、肥えた子牛をほふり、王の子である兄弟たちと、王に仕えるユダの人々を招きます。しかしナタン、ベナヤ、勇士たち、ソロモンは招きませんでした。
ナタンとバテシバがダビデに告げる
列王紀上1章11〜27節ナタンはバテシバに、ダビデが知らないうちにアドニヤが王になったこと、彼女とソロモンの命が危ないことを知らせます。そして王のもとへ行き、ソロモンが跡を継ぐという誓いを思い出させるよう勧めます。バテシバは、アビシャグが仕える王の寝室に入って身をかがめ、王座に誰が座るのか全イスラエルが王を見つめていると述べました。このままでは自分と子は罪人として扱われると訴えます。彼女が話している間にナタンが来てひれ伏し、アドニヤが王になるのは王の命令なのかと、宴会と、アドニヤ王万歳という叫びを挙げて尋ねました。
ダビデが誓いを新たにする
列王紀上1章28〜40節ダビデはバテシバを呼び、あらゆる苦難から自分を救い出された主にかけて、ソロモンが自分に代わって王になると誓います。続いてザドク、ナタン、ベナヤを呼び、ソロモンを王のらばに乗せてギホンに連れて行き、イスラエルの王として油を注ぐよう命じました。ベナヤはアーメンと答え、主がダビデとともにおられたようにソロモンとともにおられるよう祈ります。ザドクは天幕から油の角を取ってソロモンに油を注ぎました。角笛が吹かれ、民はみなソロモン王万歳と叫び、笛を吹きながらついて上り、その叫びで地が裂けるほど喜びました。
中断された宴
列王紀上1章41〜49節アドニヤと客たちは食事を終えるころ、この音を聞きます。角笛の音を聞いたヨアブは、町のざわめきは何かと尋ねました。話しているうちに祭司アビヤタルの子ヨナタンが来ると、アドニヤは彼を勇士で良い知らせを持って来た者として迎えます。ヨナタンは、ダビデがソロモンを王とし、ザドクとナタンがギホンで油を注ぎ、ソロモンが王座に着いたと告げます。家来たちの祝福と、今日わたしの跡継ぎを与えられた主をたたえるダビデの言葉も伝えました。アドニヤの客たちは恐れて立ち上がり、それぞれ散っていきました。
祭壇の角をつかむ
列王紀上1章50〜53節アドニヤはソロモンを恐れ、立って祭壇の角をつかみました。ソロモンには、アドニヤが、王は今日、しもべを剣で殺さないと誓ってほしいと願っていることが告げられます。ソロモンは、彼が誠実な人であれば髪の毛一本も地に落ちないが、悪が見つかれば死ぬと答えました。王は人を送ってアドニヤを祭壇から下ろさせ、アドニヤは来てソロモン王の前にひれ伏し、王は、自分の家に帰れと言います。事は終わったように見えますが、与えられた恵みは、今後の行いという条件に結びついたままでした。
ダビデの死とソロモンの即位
列王紀上2章1〜12節死が近づいたダビデはソロモンに、強く、男らしくあり、主の戒めを守ってその道を歩めば、何をしても栄えると命じます。子孫への約束と、ヨアブがアブネルとアマサにしたことを思い出させました。ダビデは先祖たちとともに眠り、ダビデの町に葬られます。治めた年は四十年で、ヘブロンで七年、エルサレムで三十三年でした。ソロモンは父ダビデの王座に座り、国は固く立ちます。この箇所にアドニヤは出てきませんが、彼の最後の行動は、この新しい治世の中でなされます。
バテシバへの願い
列王紀上2章13〜18節アドニヤはソロモンの母バテシバのもとへ行きます。彼女が穏やかな用向きかと尋ねると、そうだと答えました。そして、王国は自分のものであり、全イスラエルが自分を見つめていたのに、王国は転じて兄弟のものになった、それは主が彼に与えたからだと言います。さらに一つ願いがあるとして、王はあなたの願いを断らないので、シュネムの女アビシャグを妻にくださるよう王に話してほしいと頼みます。バテシバは、あなたのために王に話しましょうと答えました。
ソロモンの答え
列王紀上2章19〜25節バテシバが王ソロモンのもとに行くと、王は立って迎え、彼女に礼をし、自分の右に座らせます。彼女は小さな願いがあると言い、シュネムの女アビシャグを王の兄弟アドニヤの妻にしてほしいと頼みます。ソロモンは、なぜアビシャグをアドニヤのために願うのか、王国も彼のために願えばよい、祭司アビヤタルとヨアブのためにも、と答えました。そしてダビデの王座に自分を固く据えられた主にかけて、アドニヤは今日死ぬと誓います。エホヤダの子ベナヤが遣わされてアドニヤを打ち、アドニヤは死にました。
支持者たちの行方
列王紀上2章26〜35節ソロモンは祭司アビヤタルに、アナトテの領地へ行くよう命じます。死に値するが、ダビデの前で神の箱をかつぎ、その苦難を共にしたので助けるというのです。ソロモンはアビヤタルを祭司の職から退け、主がシロでエリの家について語られた言葉が成就しました。アドニヤの側についたヨアブは祭壇に逃れますが、王の命令で打たれます。ベナヤがヨアブに代わって軍の長となり、ザドクがアビヤタルに代わりました。こうしてソロモンの王座は固くなり、アドニヤについた者たちは職か命を失いました。
アドニヤの家族
- 父
- ダビデ サムエル記下3章2〜4節
- 母
- ハギテ サムエル記下3章4節
- 兄
- アムノン サムエル記下3章2節
- 兄弟
- キレアブ(ダニエルとも呼ばれる) 歴代志上3章1節
- 兄弟
- アブサロム サムエル記下3章3節
- 弟
- シパテヤ サムエル記下3章4節
- 弟
- イテレアム サムエル記下3章5節
- 弟
- ソロモン 列王紀上1章10節
- ソロモンの母
- バテシバ 列王紀上1章11節
アドニヤから学ぶこと
- 神のことばを無視した野心は失敗に至ります。アドニヤは神にもダビデにも指名されないまま、自ら王と宣言しました。
- 親は子を戒めることを知るべきです。聖書は、ダビデが一度もアドニヤを叱らなかったと記しています(列王記第一1章6節)。
- 神は人の策略があっても約束を守られます。主が望まれたとおり、王座はソロモンのために固く立てられました。
- 権力者の後ろ盾は守ってくれません。ソロモンが油注がれると、アドニヤの客たちは恐れて散っていきました。
鍵となる聖句
高ぶりに動かされ、容姿が良く、父に一度も叱られなかった人物が描かれます。彼の性格と転落を理解する手がかりです。
アドニヤ自身が、王位が移り、主がそれをソロモンに与えられたことを認めています。神のみこころを知りながら、なお手に入らないものを求め続けました。
ソロモンは、アビシャグを求めることはアドニヤ、エブヤタル、ヨアブのために王位を求めることだと答えます。ダビデの王座に自分を堅く立てた主にかけて、その日にアドニヤは死ぬと誓いました。
アドニヤについての説教
よくある質問
聖書のアドニヤとは誰ですか。
アドニヤはダビデ王の子で、ヘブロンでハギテから生まれ、アブシャロムの後に生まれました。ダビデが非常に年老いたとき自ら王と宣言し、ヨアブとエブヤタルの支持を得ましたが、代わりにソロモンが油注がれました。アビシャグを妻にと願ったことで、ソロモンに処刑されました。
ソロモンはなぜアドニヤを死刑にしたのですか。
アドニヤはすでにダビデの同意なく王になろうとしていました。王の死後、バテ・シェバを通じてシュネム人アビシャグを求めました。ソロモンはこれを再び王位を望むものと見なし(列王記第一2章22節)、王座を固めるためにアドニヤを処刑しました。
アドニヤの物語は聖書のどこにありますか。
アドニヤはダビデの子の一人として第二サムエル3章4節に名があります。物語は列王記第一の最初の二章にあり、1章で王位を奪おうとし、2章13-25節でアビシャグを願って死に至ります。
アドニヤはダビデの長男でしたか。
いいえ。ヘブロンで生まれた子の名簿では、アムノンが長男、キレアブが次男、アブサロムが三男、アドニヤが四男です(サムエル記下3章2〜4節)。歴代志はキレアブをダニエルと呼んで同じ名簿を載せます(歴代志上3章1〜2節)。アドニヤが自ら王と称した時、アムノンとアブサロムはすでに死んでおり(サムエル記下13章28〜29節、18章14〜15節)、キレアブについては誕生以後の記録がありません。アドニヤ自身も跡継ぎのつもりで、王国は自分のものだったとバテシバに語り(列王紀上2章15節)、ソロモンは彼を兄と呼びます(2章22節)。しかしソロモンはのちにエルサレムでバテシバから生まれ(歴代志上3章5節)、ダビデは誓いによってソロモンを王に指名しました(列王紀上1章30節)。
アドニヤに王位を継ぐ権利はありましたか。
アドニヤはそう信じていました。彼はバテシバに、王国は自分のものであり、全イスラエルが自分を見ていたと語ります(列王紀上2章15節)。しかし聖書は、彼がダビデの知らないうちに王と称したこと(1章11節)、王が主にかけてソロモンが跡を継ぐと誓っていたこと(1章13、30節)を記します。ダビデは後にも、主が兄弟たちの中から自分を王に選び、その子らの中からソロモンを王座に着かせるために選んだと語りました(歴代志上28章4〜5節)。アドニヤ自身も、王国は転じて兄弟のものになった、主が彼に与えたからだと認めます(列王紀上2章15節)。物語は生まれ順より、主の選びを強調しています。
アドニヤを支持したのは誰で、ダビデに忠実だったのは誰ですか。
アドニヤは将軍ヨアブと祭司アビヤタルと話し合い、二人は彼の側につきました(列王紀上1章7節)。また王の子である兄弟たち(ソロモンを除く)と、王に仕えるユダの人々を招きます(1章9〜10節)。ダビデの側に残ったのは、祭司ザドク、エホヤダの子ベナヤ、預言者ナタン、シメイ、レイ、ダビデの勇士たちです(1章8節)。ソロモンをギホンに導いたのは、ザドク、ナタン、ベナヤと、ケレテびととペレテびとでした(1章38節)。アドニヤの客たちの考えは書かれておらず、ソロモンへの油注ぎを知って恐れ、それぞれ散っていったことだけが記されます(1章49節)。
なぜアビシャグを求めることはそれほど重大だったのですか。
シュネムの女アビシャグは年老いたダビデに仕えるために選ばれましたが、王は彼女を知りませんでした(列王紀上1章3〜4節)。アドニヤはバテシバを通して彼女を妻にと願います。聖書自身はこの願いの重みを説明しませんが、ソロモンはすぐにその意味を見抜きました。アビシャグを求めることは、アドニヤとアビヤタル、ヨアブのために王国を求めることと同じだというのです(列王紀上2章22節)。他の箇所では、王の妻や側女に政治的な意味があったことが分かります。アブサロムはアヒトペルの進言で、全イスラエルの見ている前で父の側女たちのところに入り、自分がダビデに憎まれる者になったことを示しました(サムエル記下16章21〜22節)。聖書が語らない意図を付け加えず、これらの箇所とともに読むべきです。
祭壇の角をつかむとはどういう意味ですか。
祭壇の角をつかむとは、主の祭壇に避け所を求めることです。アドニヤはソロモンの即位のあと、命の危険を恐れてそうしました(列王紀上1章50〜51節)。モーセの律法は、待ち伏せなしに人を殺した者のために避け所を定めていますが、悪意をもって隣人を殺す者は、祭壇からでも引き離して死なせると定めます(出エジプト記21章13〜14節)。アドニヤはソロモンが剣で自分を殺さないと誓うよう求め、ソロモンは、彼の命は今後の行いにかかっていると答えました(列王紀上1章51〜52節)。ヨアブものちに同じことをしましたが、同じ恵みは受けませんでした(2章28〜34節)。祭壇は避け所になりますが、誠実さの代わりにはなりません。