聖書 — 口語訳 (1955)

サムエル記上 10

概要

サムエル記上10章は、ろばを捜しに出かけたサウルが、サムエルによって密かに王として油を注がれる場面を語ります。預言者は三つのしるしを告げ、それは実現します。主の霊がサウルの上に下り、彼は変って新しい人となります。サムエルはその後、民をミヅパに集め、王を求めて神を退けたことを責め、くじによってサウルが選ばれます。迎え入れる人もいれば、侮る人もいますが、サウルは何も言い返しません。この章は、神の主導と、民の選びの限界の両方を示しています。

この章の6つの区分

  1. 1-8節サウルへの油注ぎと、サムエルが告げたしるし
  2. 9-13節しるしが実現する:「サウルもまた預言者たちのうちにいるのか」
  3. 14-16節サウルは王位のことをおじに黙っている
  4. 17-19節サムエルは、神を退ける民を責める
  5. 20-25節ミヅパでのサウルの選びと、王の定め
  6. 26-27節心の正しい人々は彼に従い、よこしまな者たちは彼を侮る

1その時サムエルは油のびんを取って、サウルの頭に注ぎ、彼に口づけして言った、「主はあなたに油を注いで、その民イスラエルの君とされたではありませんか。あなたは主の民を治め、周囲の敵の手から彼らを救わなければならない。主があなたに油を注いで、その嗣業の君とされたことの、しるしは次のとおりです。

2あなたがきょう、わたしを離れて、去って行くとき、ベニヤミンの領地のゼルザにあるラケルの墓のかたわらで、ふたりの人に会うでしょう。そして彼らはあなたに言います、『あなたが捜しに行かれたろばは見つかりました。いま父上は、ろばよりもあなたがたの事を心配して、「わが子のことは、どうしよう」と言っておられます』。

3あなたが、そこからなお進んで、タボルのかしの木の所へ行くと、そこでベテルに上って神を拝もうとする三人の者に会うでしょう。ひとりは三頭の子やぎを連れ、ひとりは三つのパンを携え、ひとりは、ぶどう酒のはいった皮袋一つを携えている。

4彼らはあなたにあいさつし、二つのパンをくれるでしょう。あなたはそれを、その手から受けなければならない。

5その後、あなたは神のギベアへ行く。そこはペリシテびとの守備兵のいる所である。あなたはその所へ行って、町にはいる時、立琴、手鼓、笛、琴を執る人々を先に行かせて、預言しながら高き所から降りてくる一群の預言者に会うでしょう。

6その時、主の霊があなたの上にもはげしく下って、あなたは彼らと一緒に預言し、変って新しい人となるでしょう。

7これらのしるしが、あなたの身に起ったならば、あなたは手当りしだいになんでもしなさい。神があなたと一緒におられるからです。

8あなたはわたしに先立ってギルガルに下らなければならない。わたしはあなたのもとに下っていって、燔祭を供え、酬恩祭をささげるでしょう。わたしがあなたのもとに行って、あなたのしなければならない事をあなたに示すまで、七日のあいだ待たなければならない」。

9サウルが背をかえしてサムエルを離れたとき、神は彼に新しい心を与えられた。これらのしるしは皆その日に起った。

10彼らはギベアにきた時、預言者の一群に出会った。そして神の霊が、はげしくサウルの上に下り、彼は彼らのうちにいて預言した。

11もとからサウルを知っていた人々はみな、サウルが預言者たちと共に預言するのを見て互に言った、「キシの子に何事が起ったのか。サウルもまた預言者たちのうちにいるのか」。

12その所のひとりの者が答えた、「彼らの父はだれなのか」。それで「サウルもまた預言者たちのうちにいるのか」というのが、ことわざとなった。

13サウルは預言することを終えて、高き所へ行った。

14サウルのおじが、サウルとそのしもべとに言った、「あなたがたは、どこへ行ったのか」。サウルは言った、「ろばを捜しにいったのですが、どこにもいないので、サムエルのもとに行きました」。

15サウルのおじは言った、「サムエルが、どんなことを言ったか、どうぞ話してください」。

16サウルはおじに言った、「ろばが見つかったと、はっきり、わたしたちに言いました」。しかしサムエルが言った王国のことについて、おじには何も告げなかった。

17さて、サムエルは民をミヅパで主の前に集め、

18イスラエルの人々に言った、「イスラエルの神、主はこう仰せられる、『わたしはイスラエルをエジプトから導き出し、あなたがたをエジプトびとの手、およびすべてあなたがたをしえたげる王国の手から救い出した』。

19しかしあなたがたは、きょう、あなたがたをその悩みと苦しみの中から救われるあなたがたの神を捨て、その上、『いいえ、われわれの上に王を立てよ』と言う。それゆえ今、あなたがたは、部族にしたがい、また氏族にしたがって、主の前に出なさい」。

20こうしてサムエルがイスラエルのすべての部族を呼び寄せた時、ベニヤミンの部族が、くじに当った。

21またベニヤミンの部族をその氏族にしたがって呼び寄せた時、マテリの氏族が、くじに当り、マテリの氏族を人ごとに呼び寄せた時、キシの子サウルが、くじに当った。しかし人々が彼を捜した時、見つからなかった。

22そこでまた主に「その人はここにきているのですか」と問うと、主は言われた、「彼は荷物の間に隠れている」。

23人々は走って行って、彼をそこから連れてきた。彼は民の中に立ったが、肩から上は、民のどの人よりも高かった。

24サムエルはすべての民に言った、「主が選ばれた人をごらんなさい。民のうちに彼のような人はないではありませんか」。民はみな「王万歳」と叫んだ。

25その時サムエルは王国のならわしを民に語り、それを書にしるして、主の前におさめた。こうしてサムエルはすべての民をそれぞれ家に帰らせた。

26サウルもまたギベアにある彼の家に帰った。そして神にその心を動かされた勇士たちも彼と共に行った。

27しかし、よこしまな人々は「この男がどうしてわれわれを救うことができよう」と言って、彼を軽んじ、贈り物をしなかった。しかしサウルは黙っていた。

鍵となる聖句

1節
その時サムエルは油のびんを取って、サウルの頭に注ぎ、彼に口づけして言った、「主はあなたに油を注いで、その民イスラエルの君とされたではありませんか。あなたは主の民を治め、周囲の敵の手から彼らを救わなければならない。主があなたに油を注いで、その嗣業の君とされたことの、しるしは次のとおりです。

サムエルはサウルの頭に油を注ぎ、主がサウルを、ご自分の嗣業の君として油を注がれたと告げます。油注ぎは、サウルが何かをする前に、預言者を通して神から与えられました。

6節
その時、主の霊があなたの上にもはげしく下って、あなたは彼らと一緒に預言し、変って新しい人となるでしょう。

サムエルは、主の霊がサウルの上に下り、彼が変って新しい人となると告げます。この変化は、本人の努力ではなく、御霊のみわざとして語られています。

7節
これらのしるしが、あなたの身に起ったならば、あなたは手当りしだいになんでもしなさい。神があなたと一緒におられるからです。

しるしが起こったあとは、サウルは手当たり次第に事を行えばよいと言われます。神が彼とともにおられるからです。神の臨在が、確信をもって行動する理由となります。

19節
しかしあなたがたは、きょう、あなたがたをその悩みと苦しみの中から救われるあなたがたの神を捨て、その上、『いいえ、われわれの上に王を立てよ』と言う。それゆえ今、あなたがたは、部族にしたがい、また氏族にしたがって、主の前に出なさい」。

サムエルは民に、王を求めることで、あらゆる災いから救ってくださった神を退けたのだと語ります。王を選ぶことの曖昧さを、本文は隠していません。

27節
しかし、よこしまな人々は「この男がどうしてわれわれを救うことができよう」と言って、彼を軽んじ、贈り物をしなかった。しかしサウルは黙っていた。

何人かの者はサウルを侮り、贈り物も持ってきませんでした。サウルは反応せず、異議を唱えられても弁解しないことを選びます。

この章に登場する人物

説教が語っていること

サムエル記上10章についてよくある質問

サムエル記上10章6節の「変って新しい人となる」とはどういう意味ですか

サムエルは、主の霊がサウルの上に下り、預言者の一団とともに預言すると告げます。本文はこれを、サウルを王の使命に備えさせる、神から与えられた変化として描いています。この変化がいつまでも続くとは言っておらず、その後の書は、サウルが神から離れていくことを示しています。

なぜサムエルは、王を求めることで民が神を退けたと言うのですか

サムエルは19節で、神がイスラエルをエジプトと、すべての圧迫する者から救い出されたことを思い出させます。他の国々のような王を求めることは、主ではなく人に信頼を置くことのように見えます。それでも神はその願いを受け入れ、王となる者をご自身で選ばれます。

「サウルもまた預言者たちのうちにいるのか」とはどういう意味ですか

サウルが預言者たちと一緒に預言し始めたとき、彼を知る人々は、サウルにそのような面があるとは思っていなかったので驚きます。この問いは、11節と12節に見られるように、ことわざになりました。だれも思いもよらなかった人に、神が起こす変化への驚きを表しています。

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