聖書 — 口語訳 (1955)

マタイによる福音書 8

概要

マタイによる福音書8章は、山上の説教に続くイエスの一連のわざを集めています。イエスは重い皮膚病の人にさわってきよめ、信仰に感心されたローマの百卒長の僕を離れたところからいやし、ペテロのしゅうとめを起こし、嵐を静め、二人の悪霊につかれた人を解放されます。これらの出来事の合間に、イエスは従いたいと願う人々に答えられます。この章は、福音書全体を貫く問いを投げかけます。風も海も従うこの方は、いったいどなたなのか。

この章の6つの区分

  1. 1-4節イエスが重い皮膚病の人をきよめる
  2. 5-13節カペナウムの百卒長の信仰
  3. 14-17節ペテロのしゅうとめと、夕方にいやされた病人たち
  4. 18-22節イエスに従う代価
  5. 23-27節イエスが嵐を静める
  6. 28-34節ガダラの悪霊につかれた人たちと豚

1イエスが山をお降りになると、おびただしい群衆がついてきた。

2すると、そのとき、ひとりの重い皮膚病にかかった人がイエスのところにきて、ひれ伏して言った、「主よ、みこころでしたら、きよめていただけるのですが」。

3イエスは手を伸ばして、彼にさわり、「そうしてあげよう、きよくなれ」と言われた。すると、重い皮膚病は直ちにきよめられた。

4イエスは彼に言われた、「だれにも話さないように、注意しなさい。ただ行って、自分のからだを祭司に見せ、それから、モーセが命じた供え物をささげて、人々に証明しなさい」。

5さて、イエスがカペナウムに帰ってこられたとき、ある百卒長がみもとにきて訴えて言った、

6「主よ、わたしの僕が中風でひどく苦しんで、家に寝ています」。

7イエスは彼に、「わたしが行ってなおしてあげよう」と言われた。

8そこで百卒長は答えて言った、「主よ、わたしの屋根の下にあなたをお入れする資格は、わたしにはございません。ただ、お言葉を下さい。そうすれば僕はなおります。

9わたしも権威の下にある者ですが、わたしの下にも兵卒がいまして、ひとりの者に『行け』と言えば行き、ほかの者に『こい』と言えばきますし、また、僕に『これをせよ』と言えば、してくれるのです」。

10イエスはこれを聞いて非常に感心され、ついてきた人々に言われた、「よく聞きなさい。イスラエル人の中にも、これほどの信仰を見たことがない。

11なお、あなたがたに言うが、多くの人が東から西からきて、天国で、アブラハム、イサク、ヤコブと共に宴会の席につくが、

12この国の子らは外のやみに追い出され、そこで泣き叫んだり、歯がみをしたりするであろう」。

13それからイエスは百卒長に「行け、あなたの信じたとおりになるように」と言われた。すると、ちょうどその時に、僕はいやされた。

14それから、イエスはペテロの家にはいって行かれ、そのしゅうとめが熱病で、床についているのをごらんになった。

15そこで、その手にさわられると、熱が引いた。そして女は起きあがってイエスをもてなした。

16夕暮になると、人々は悪霊につかれた者を大ぜい、みもとに連れてきたので、イエスはみ言葉をもって霊どもを追い出し、病人をことごとくおいやしになった。

17これは、預言者イザヤによって「彼は、わたしたちのわずらいを身に受け、わたしたちの病を負うた」と言われた言葉が成就するためである。

18イエスは、群衆が自分のまわりに群がっているのを見て、向こう岸に行くようにと弟子たちにお命じになった。

19するとひとりの律法学者が近づいてきて言った、「先生、あなたがおいでになる所なら、どこへでも従ってまいります」。

20イエスはその人に言われた、「きつねには穴があり、空の鳥には巣がある。しかし、人の子にはまくらする所がない」。

21また弟子のひとりが言った、「主よ、まず、父を葬りに行かせて下さい」。

22イエスは彼に言われた、「わたしに従ってきなさい。そして、その死人を葬ることは、死人に任せておくがよい」。

23それから、イエスが舟に乗り込まれると、弟子たちも従った。

24すると突然、海上に激しい暴風が起って、舟は波にのまれそうになった。ところが、イエスは眠っておられた。

25そこで弟子たちはみそばに寄ってきてイエスを起し、「主よ、お助けください、わたしたちは死にそうです」と言った。

26するとイエスは彼らに言われた、「なぜこわがるのか、信仰の薄い者たちよ」。それから起きあがって、風と海とをおしかりになると、大なぎになった。

27彼らは驚いて言った、「このかたはどういう人なのだろう。風も海も従わせるとは」。

28それから、向こう岸、ガダラ人の地に着かれると、悪霊につかれたふたりの者が、墓場から出てきてイエスに出会った。彼らは手に負えない乱暴者で、だれもその辺の道を通ることができないほどであった。

29すると突然、彼らは叫んで言った、「神の子よ、あなたはわたしどもとなんの係わりがあるのです。まだその時ではないのに、ここにきて、わたしどもを苦しめるのですか」。

30さて、そこからはるか離れた所に、おびただしい豚の群れが飼ってあった。

31悪霊どもはイエスに願って言った、「もしわたしどもを追い出されるのなら、あの豚の群れの中につかわして下さい」。

32そこで、イエスが「行け」と言われると、彼らは出て行って、豚の中へはいり込んだ。すると、その群れ全体が、がけから海へなだれを打って駆け下り、水の中で死んでしまった。

33飼う者たちは逃げて町に行き、悪霊につかれた者たちのことなど、いっさいを知らせた。

34すると、町中の者がイエスに会いに出てきた。そして、イエスに会うと、この地方から去ってくださるようにと頼んだ。

鍵となる聖句

3節
イエスは手を伸ばして、彼にさわり、「そうしてあげよう、きよくなれ」と言われた。すると、重い皮膚病は直ちにきよめられた。

イエスは、律法が危険と見なしていた、重い皮膚病の人にさわり、みことばによってきよめられます。その力はイエスを汚すのではなく、きよめます。

8節
そこで百卒長は答えて言った、「主よ、わたしの屋根の下にあなたをお入れする資格は、わたしにはございません。ただ、お言葉を下さい。そうすれば僕はなおります。

百卒長は、イエスを自分の屋根の下にお入れする資格がないと考えますが、お言葉だけで十分だと信じています。彼は、自分の軍隊での権威になぞらえて、イエスの権威を理解しています。

10節
イエスはこれを聞いて非常に感心され、ついてきた人々に言われた、「よく聞きなさい。イスラエル人の中にも、これほどの信仰を見たことがない。

イエスはこの異邦人の信仰に感心されます。本文は、イエスの心を動かすのは、出自よりも信仰であることを強調しています。

17節
これは、預言者イザヤによって「彼は、わたしたちのわずらいを身に受け、わたしたちの病を負うた」と言われた言葉が成就するためである。

マタイはイザヤを引きます。「彼は、わたしたちのわずらいを身に受け、わたしたちの病を負うた」。この節の及ぶ範囲についてクリスチャンの間で議論がありますが、誰もがここに苦難のしもべのみわざを見ます。

26節
するとイエスは彼らに言われた、「なぜこわがるのか、信仰の薄い者たちよ」。それから起きあがって、風と海とをおしかりになると、大なぎになった。

イエスは弟子たちの信仰の薄さを戒め、それから海を静められます。嵐の中では、危険がないことよりも、イエスがともにおられることが大切です。

この章に登場する人物

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説教が語っていること

マタイによる福音書8章についてよくある質問

マタイ8章の百卒長の信仰とは何ですか。

百卒長は、イエスが来てくださる必要はなく、将校には命令一つで十分なように、ひと言で足りると信じています。彼は病に対するイエスの権威を認めています。イエスは驚かれ、イスラエルの中にもこれほどの信仰を見たことがないと宣言し、すでに諸国民が御国の食卓に着く展望を開いておられます。

マタイ8章の奇跡には何がありますか。

マタイ8章は、重い皮膚病の人のきよめ、百卒長の僕のいやし、ペテロのしゅうとめのいやし、夕方の多くの病人のいやしと悪霊につかれた人たちの解放、嵐を静めること、そしてガダラでの二人の悪霊につかれた人の解放を伝えています。どの出来事も、イエスの権威の一面を示しています。

「わたしに従ってきなさい。そして、その死人を葬ることは、死人に任せておくがよい」とはどういう意味ですか。

まず父を葬りたいと願う弟子に、イエスは、キリストに従うことがすべてに先立つと答えられます。この言葉はあえて衝撃的に語られています。悲しみを軽んじているのではなく、イエスの召しが緊急であることを宣言しています。この表現の正確な意味については、注解者の間で意見が分かれています。

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