聖書 — 口語訳 (1955)
サムエル記上 1
概要
サムエル記上1章は、エルカナの妻ハンナの物語で始まります。ハンナには子がなく、ライバルのペニンナに年ごとに辱められます。シロで彼女は主の前に心を注ぎ出し、誓いを立て、祭司エリの祝福を受けます。神は彼女を覚えられ、ハンナはサムエルを産みます。子が乳離れすると、ハンナは約束を果たし、その子を主の家に連れて行きます。この物語は、最後の士師であり、イスラエルの最初の王たちに油を注ぐ預言者の登場への備えとなっています。
この章の4つの区分
1エフライムの山地のラマタイム・ゾピムに、エルカナという名の人があった。エフライムびとで、エロハムの子であった。エロハムはエリウの子、エリウはトフの子、トフはツフの子である。
2エルカナには、ふたりの妻があって、ひとりの名はハンナといい、ひとりの名はペニンナといった。ペニンナには子どもがあったが、ハンナには子どもがなかった。
3この人は年ごとに、その町からシロに上っていって、万軍の主を拝し、主に犠牲をささげるのを常とした。シロには、エリのふたりの子、ホフニとピネハスとがいて、主に仕える祭司であった。
4エルカナは、犠牲をささげる日、妻ペニンナとそのむすこ娘にはみな、その分け前を与えた。
5エルカナはハンナを愛していたが、彼女には、ただ一つの分け前を与えるだけであった。主がその胎を閉ざされたからである。
6また彼女を憎んでいる他の妻は、ひどく彼女を悩まして、主がその胎を閉ざされたことを恨ませようとした。
7こうして年は暮れ、年は明けたが、ハンナが主の宮に上るごとに、ペニンナは彼女を悩ましたので、ハンナは泣いて食べることもしなかった。
8夫エルカナは彼女に言った、「ハンナよ、なぜ泣くのか。なぜ食べないのか。どうして心に悲しむのか。わたしはあなたにとって十人の子どもよりもまさっているではないか」。
9シロで彼らが飲み食いしたのち、ハンナは立ちあがった。その時、祭司エリは主の神殿の柱のかたわらの座にすわっていた。
10ハンナは心に深く悲しみ、主に祈って、はげしく泣いた。
11そして誓いを立てて言った、「万軍の主よ、まことに、はしための悩みをかえりみ、わたしを覚え、はしためを忘れずに、はしために男の子を賜わりますなら、わたしはその子を一生のあいだ主にささげ、かみそりをその頭にあてません」。
12彼女が主の前で長く祈っていたので、エリは彼女の口に目をとめた。
13ハンナは心のうちで物を言っていたので、くちびるが動くだけで、声は聞えなかった。それゆえエリは、酔っているのだと思って、
14彼女に言った、「いつまで酔っているのか。酔いをさましなさい」。
15しかしハンナは答えた、「いいえ、わが主よ。わたしは不幸な女です。ぶどう酒も濃い酒も飲んだのではありません。ただ主の前に心を注ぎ出していたのです。
16はしためを、悪い女と思わないでください。積る憂いと悩みのゆえに、わたしは今まで物を言っていたのです」。
17そこでエリは答えた、「安心して行きなさい。どうかイスラエルの神があなたの求める願いを聞きとどけられるように」。
18彼女は言った、「どうぞ、はしためにも、あなたの前に恵みを得させてください」。こうして、その女は去って食事し、その顔は、もはや悲しげではなくなった。
19彼らは朝早く起きて、主の前に礼拝し、そして、ラマにある家に帰って行った。エルカナは妻ハンナを知り、主が彼女を顧みられたので、
20彼女はみごもり、その時が巡ってきて、男の子を産み、「わたしがこの子を主に求めたからだ」といって、その名をサムエルと名づけた。
21エルカナその人とその家族とはみな上っていって、年ごとの犠牲と、誓いの供え物とをささげた。
22しかしハンナは上って行かず、夫に言った、「わたしはこの子が乳離れしてから、主の前に連れていって、いつまでも、そこにおらせましょう」。
23夫エルカナは彼女に言った、「あなたが良いと思うようにして、この子の乳離れするまで待ちなさい。ただどうか主がその言われたことを実現してくださるように」。こうしてその女はとどまって、その子に乳をのませ、乳離れするのを待っていたが、
24乳離れした時、三歳の雄牛一頭、麦粉一エパ、ぶどう酒のはいった皮袋一つを取り、その子を連れて、シロにある主の宮に行った。その子はなお幼かった。
25そして彼らはその牛を殺し、子供をエリのもとへ連れて行った。
26ハンナは言った、「わが君よ、あなたは生きておられます。わたしは、かつてここに立って、あなたの前で、主に祈った女です。
27この子を与えてくださいと、わたしは祈りましたが、主はわたしの求めた願いを聞きとどけられました。
28それゆえ、わたしもこの子を主にささげます。この子は一生のあいだ主にささげたものです」。そして彼らはそこで主を礼拝した。
鍵となる聖句
そして誓いを立てて言った、「万軍の主よ、まことに、はしための悩みをかえりみ、わたしを覚え、はしためを忘れずに、はしために男の子を賜わりますなら、わたしはその子を一生のあいだ主にささげ、かみそりをその頭にあてません」。
ハンナは自分の苦しみを神の前に差し出し、誓いを立てます。男の子が与えられるなら、その子を主にささげるというものです。この祈りは、嘆願であると同時に決意でもあります。
しかしハンナは答えた、「いいえ、わが主よ。わたしは不幸な女です。ぶどう酒も濃い酒も飲んだのではありません。ただ主の前に心を注ぎ出していたのです。
酔っていると思ったエリに、ハンナは「主の前に心を注ぎ出していたのです」と答えます。涙とともに、美しい言葉を並べなくても祈れることを、彼女は示しています。
彼女はみごもり、その時が巡ってきて、男の子を産み、「わたしがこの子を主に求めたからだ」といって、その名をサムエルと名づけた。
サムエルという名は、聞かれた祈りを表しています。ハンナは「わたしがこの子を主に求めたからだ」と言いました。聖書は神が彼女を覚えられたことを強調しますが、それをあらゆる状況に当てはまる自動的な法則にはしていません。
この子を与えてくださいと、わたしは祈りましたが、主はわたしの求めた願いを聞きとどけられました。 それゆえ、わたしもこの子を主にささげます。この子は一生のあいだ主にささげたものです」。そして彼らはそこで主を礼拝した。
ハンナは、サムエルが自分の祈りへの答えであることを認め、その子を神にお返しします。この物語では、受けることと与えることが一つになっています。
この章に登場する人物
説教が語っていること
サムエル記上1章についてよくある質問
サムエル記上1章のハンナの物語とは何ですか。
ハンナはエルカナの妻です。子がなく、もう一人の妻ペニンナには子がいます。ペニンナは毎年ハンナを挑発します。シロで、ハンナは泣きながら祈り、与えられる子を主にささげると誓います。神は彼女を覚えられ、ハンナはサムエルを産み、のちに主の家に連れて行きます。
なぜエリはハンナが酔っていると思ったのですか。
ハンナは心の中で祈っており、唇は動いていても声は聞こえませんでした。それを見ていたエリは酔っていると思い、ハンナをたしなめます。ハンナは、自分は苦しんでいる女で、主の前に心を注ぎ出していたのだと答えます。エリはそこで彼女を祝福し、神がその祈りを聞き入れてくださるようにと願います。
サムエルという名はどんな意味ですか。
聖書自身が説明しています。ハンナは、主に求めたからという理由で、その子をサムエルと名づけました。この名は、聞かれた祈りと神の真実を覚えています。サムエルは預言者となり、イスラエルの最後の士師として、最初の王たちに油を注ぎます。
サムエル記上 1を引用している記事
口語訳(1955年)— パブリックドメイン。