聖書 — 口語訳 (1955)
マタイによる福音書 14
概要
マタイによる福音書14章は、ヘロデの命令で首を切られたバプテスマのヨハネの死から始まります。イエスはひとり寂しい所へ退かれますが、群衆があとを追ってきます。イエスは深くあわれんで病人をいやし、パン五つと魚二ひきで男だけでも五千人あまりを養われました。夕方、弟子たちを舟で向こう岸へ送り出し、ひとり山で祈り、そのあと水の上を歩いて彼らのところへ行かれます。ペテロは歩み出しますが、疑っておぼれかけ、イエスは彼をつかまえます。弟子たちはイエスを神の子と告白します。
この章の4つの区分
1そのころ、領主ヘロデはイエスのうわさを聞いて、
2家来に言った、「あれはバプテスマのヨハネだ。死人の中からよみがえったのだ。それで、あのような力が彼のうちに働いているのだ」。
3というのは、ヘロデは先に、自分の兄弟ピリポの妻ヘロデヤのことで、ヨハネを捕えて縛り、獄に入れていた。
4すなわち、ヨハネはヘロデに、「その女をめとるのは、よろしくない」と言ったからである。
5そこでヘロデはヨハネを殺そうと思ったが、群衆を恐れた。彼らがヨハネを預言者と認めていたからである。
6さてヘロデの誕生日の祝に、ヘロデヤの娘がその席上で舞をまい、ヘロデを喜ばせたので、
7彼女の願うものは、なんでも与えようと、彼は誓って約束までした。
8すると彼女は母にそそのかされて、「バプテスマのヨハネの首を盆に載せて、ここに持ってきていただきとうございます」と言った。
9王は困ったが、いったん誓ったのと、また列座の人たちの手前、それを与えるように命じ、
10人をつかわして、獄中でヨハネの首を切らせた。
11その首は盆に載せて運ばれ、少女にわたされ、少女はそれを母のところに持って行った。
12それから、ヨハネの弟子たちがきて、死体を引き取って葬った。そして、イエスのところに行って報告した。
13イエスはこのことを聞くと、舟に乗ってそこを去り、自分ひとりで寂しい所へ行かれた。しかし、群衆はそれと聞いて、町々から徒歩であとを追ってきた。
14イエスは舟から上がって、大ぜいの群衆をごらんになり、彼らを深くあわれんで、そのうちの病人たちをおいやしになった。
15夕方になったので、弟子たちがイエスのもとにきて言った、「ここは寂しい所でもあり、もう時もおそくなりました。群衆を解散させ、めいめいで食物を買いに、村々へ行かせてください」。
16するとイエスは言われた、「彼らが出かけて行くには及ばない。あなたがたの手で食物をやりなさい」。
17弟子たちは言った、「わたしたちはここに、パン五つと魚二ひきしか持っていません」。
18イエスは言われた、「それをここに持ってきなさい」。
19そして群衆に命じて、草の上にすわらせ、五つのパンと二ひきの魚とを手に取り、天を仰いでそれを祝福し、パンをさいて弟子たちに渡された。弟子たちはそれを群衆に与えた。
20みんなの者は食べて満腹した。パンくずの残りを集めると、十二のかごにいっぱいになった。
21食べた者は、女と子供とを除いて、おおよそ五千人であった。
22それからすぐ、イエスは群衆を解散させておられる間に、しいて弟子たちを舟に乗り込ませ、向こう岸へ先におやりになった。
23そして群衆を解散させてから、祈るためひそかに山へ登られた。夕方になっても、ただひとりそこにおられた。
24ところが舟は、もうすでに陸から数丁も離れており、逆風が吹いていたために、波に悩まされていた。
25イエスは夜明けの四時ごろ、海の上を歩いて彼らの方へ行かれた。
26弟子たちは、イエスが海の上を歩いておられるのを見て、幽霊だと言っておじ惑い、恐怖のあまり叫び声をあげた。
27しかし、イエスはすぐに彼らに声をかけて、「しっかりするのだ、わたしである。恐れることはない」と言われた。
28するとペテロが答えて言った、「主よ、あなたでしたか。では、わたしに命じて、水の上を渡ってみもとに行かせてください」。
29イエスは、「おいでなさい」と言われたので、ペテロは舟からおり、水の上を歩いてイエスのところへ行った。
30しかし、風を見て恐ろしくなり、そしておぼれかけたので、彼は叫んで、「主よ、お助けください」と言った。
31イエスはすぐに手を伸ばし、彼をつかまえて言われた、「信仰の薄い者よ、なぜ疑ったのか」。
32ふたりが舟に乗り込むと、風はやんでしまった。
33舟の中にいた者たちはイエスを拝して、「ほんとうに、あなたは神の子です」と言った。
34それから、彼らは海を渡ってゲネサレの地に着いた。
35するとその土地の人々はイエスと知って、その附近全体に人をつかわし、イエスのところに病人をみな連れてこさせた。
36そして彼らにイエスの上着のふさにでも、さわらせてやっていただきたいとお願いした。そしてさわった者は皆いやされた。
鍵となる聖句
イエスは舟から上がって、大ぜいの群衆をごらんになり、彼らを深くあわれんで、そのうちの病人たちをおいやしになった。
避けたかった群衆を前にしても、イエスは「深くあわれんで」病人をいやされました。必要への応答は、段取りよりも先に心から始まります。
するとイエスは言われた、「彼らが出かけて行くには及ばない。あなたがたの手で食物をやりなさい」。 弟子たちは言った、「わたしたちはここに、パン五つと魚二ひきしか持っていません」。 イエスは言われた、「それをここに持ってきなさい」。
「あなたがたの手で食物をやりなさい」、そして「それをここに持ってきなさい」。イエスは、弟子たちの手にあるもの、たとえ取るに足りなく見えても、そこから始められます。
それからすぐ、イエスは群衆を解散させておられる間に、しいて弟子たちを舟に乗り込ませ、向こう岸へ先におやりになった。 そして群衆を解散させてから、祈るためひそかに山へ登られた。夕方になっても、ただひとりそこにおられた。
奇跡のあと、イエスは弟子たちをしいて舟に乗せ、ご自分はひとり退いて祈られます。勝利は野営する場所ではなく、ひそかな祈りが向こう岸への出発に先立ちます。
イエスは、「おいでなさい」と言われたので、ペテロは舟からおり、水の上を歩いてイエスのところへ行った。 しかし、風を見て恐ろしくなり、そしておぼれかけたので、彼は叫んで、「主よ、お助けください」と言った。 イエスはすぐに手を伸ばし、彼をつかまえて言われた、「信仰の薄い者よ、なぜ疑ったのか」。
ペテロは、イエスを見ているあいだは水の上を歩き、風を見ると沈みかけます。「主よ、お助けください」という叫びに、すぐ差し伸べられる手がありました。
聖書クイズに挑戦
この章に登場する人物
このテーマで祈る
説教が語っていること
マタイによる福音書14章についてよくある質問
バプテスマのヨハネの死のあと、イエスはなぜ退かれたのですか。
ヨハネの弟子たちがその死をイエスに報告し、イエスは舟に乗ってひとり寂しい所へ行かれます。聖書は正確な理由を述べていません。悲しみと静まりの時と読まれることが多く、そこへ群衆がついてきて、イエスはその人々をあわれまれました。
マタイ14章のパンの増加は何を示していますか。
イエスは、パン五つと魚二ひきから、女と子供を除いて約五千人の群衆を満腹させられました。感謝をささげ、パンをさき、弟子たちに配らせます。イエスは、人が持ってきたものをお用いになることが示され、残りは十二のかごにいっぱいになりました。これは四つの福音書すべてに記された唯一の奇跡です。
ペテロはなぜ水の上を歩いていておぼれかけたのですか。
ペテロはイエスの呼びかけに応えて水の上を歩きます。風の激しさを見ると恐ろしくなり、おぼれかけます。イエスはすぐに彼をつかまえ、信仰の薄さをたしなめられました。よく語られる教えは、状況ではなくイエスに目を注ぎ続けること、そして呼ぶなら手を伸ばしてくださると知ることです。
マタイによる福音書 14を引用している記事
口語訳(1955年)— パブリックドメイン。