聖書 — 口語訳 (1955)
使徒行伝 10
概要
使徒行伝10章は、福音が異邦人に開かれる様子を伝えます。カイザリヤで、敬虔なローマの将校コルネリオは、御使いからペテロを招くよう命じられます。ヨッパでは、ペテロが汚れた動物でいっぱいの大きな布を見て、食べなさいという声を聞きます。御霊に導かれてコルネリオの家に行ったペテロは、神が人を分け隔てなさらないことを悟ります。イエスを宣べ伝えている間に、聖霊が集まった全員に下り、彼らはバプテスマを受けます。
この章の5つの区分
1さて、カイザリヤにコルネリオという名の人がいた。イタリヤ隊と呼ばれた部隊の百卒長で、
2信心深く、家族一同と共に神を敬い、民に数々の施しをなし、絶えず神に祈をしていた。
3ある日の午後三時ごろ、神の使が彼のところにきて、「コルネリオよ」と呼ぶのを、幻ではっきり見た。
4彼は御使を見つめていたが、恐ろしくなって、「主よ、なんでございますか」と言った。すると御使が言った、「あなたの祈や施しは神のみ前にとどいて、おぼえられている。
5ついては今、ヨッパに人をやって、ペテロと呼ばれるシモンという人を招きなさい。
6この人は、海べに家をもつ皮なめしシモンという者の客となっている」。
7このお告げをした御使が立ち去ったのち、コルネリオは、僕ふたりと、部下の中で信心深い兵卒ひとりとを呼び、
8いっさいの事を説明して聞かせ、ヨッパへ送り出した。
9翌日、この三人が旅をつづけて町の近くにきたころ、ペテロは祈をするため屋上にのぼった。時は昼の十二時ごろであった。
10彼は空腹をおぼえて、何か食べたいと思った。そして、人々が食事の用意をしている間に、夢心地になった。
11すると、天が開け、大きな布のような入れ物が、四すみをつるされて、地上に降りて来るのを見た。
12その中には、地上の四つ足や這うもの、また空の鳥など、各種の生きものがはいっていた。
13そして声が彼に聞えてきた、「ペテロよ。立って、それらをほふって食べなさい」。
14ペテロは言った、「主よ、それはできません。わたしは今までに、清くないもの、汚れたものは、何一つ食べたことがありません」。
15すると、声が二度目にかかってきた、「神がきよめたものを、清くないなどと言ってはならない」。
16こんなことが三度もあってから、その入れ物はすぐ天に引き上げられた。
17ペテロが、いま見た幻はなんの事だろうかと、ひとり思案にくれていると、ちょうどその時、コルネリオから送られた人たちが、シモンの家を尋ね当てて、その門口に立っていた。
18そして声をかけて、「ペテロと呼ばれるシモンというかたが、こちらにお泊まりではございませんか」と尋ねた。
19ペテロはなおも幻について、思いめぐらしていると、御霊が言った、「ごらんなさい、三人の人たちが、あなたを尋ねてきている。
20さあ、立って下に降り、ためらわないで、彼らと一緒に出かけるがよい。わたしが彼らをよこしたのである」。
21そこでペテロは、その人たちのところに降りて行って言った、「わたしがお尋ねのペテロです。どんなご用でおいでになったのですか」。
22彼らは答えた、「正しい人で、神を敬い、ユダヤの全国民に好感を持たれている百卒長コルネリオが、あなたを家に招いてお話を伺うようにとのお告げを、聖なる御使から受けましたので、参りました」。
23そこで、ペテロは、彼らを迎えて泊まらせた。翌日、ペテロは立って、彼らと連れだって出発した。ヨッパの兄弟たち数人も一緒に行った。
24その次の日に、一行はカイザリヤに着いた。コルネリオは親族や親しい友人たちを呼び集めて、待っていた。
25ペテロがいよいよ到着すると、コルネリオは出迎えて、彼の足もとにひれ伏して拝した。
26するとペテロは、彼を引き起して言った、「お立ちなさい。わたしも同じ人間です」。
27それから共に話しながら、へやにはいって行くと、そこには、すでに大ぜいの人が集まっていた。
28ペテロは彼らに言った、「あなたがたが知っているとおり、ユダヤ人が他国の人と交際したり、出入りしたりすることは、禁じられています。ところが、神は、どんな人間をも清くないとか、汚れているとか言ってはならないと、わたしにお示しになりました。
29お招きにあずかった時、少しもためらわずに参ったのは、そのためなのです。そこで伺いますが、どういうわけで、わたしを招いてくださったのですか」。
30これに対してコルネリオが答えた、「四日前、ちょうどこの時刻に、わたしが自宅で午後三時の祈をしていますと、突然、輝いた衣を着た人が、前に立って申しました、
31『コルネリオよ、あなたの祈は聞きいれられ、あなたの施しは神のみ前におぼえられている。
32そこでヨッパに人を送ってペテロと呼ばれるシモンを招きなさい。その人は皮なめしシモンの海沿いの家に泊まっている』。
33それで、早速あなたをお呼びしたのです。ようこそおいで下さいました。今わたしたちは、主があなたにお告げになったことを残らず伺おうとして、みな神のみ前にまかり出ているのです」。
34そこでペテロは口を開いて言った、「神は人をかたよりみないかたで、
35神を敬い義を行う者はどの国民でも受けいれて下さることが、ほんとうによくわかってきました。
36あなたがたは、神がすべての者の主なるイエス・キリストによって平和の福音を宣べ伝えて、イスラエルの子らにお送り下さった御言をご存じでしょう。
37それは、ヨハネがバプテスマを説いた後、ガリラヤから始まってユダヤ全土にひろまった福音を述べたものです。
38神はナザレのイエスに聖霊と力とを注がれました。このイエスは、神が共におられるので、よい働きをしながら、また悪魔に押えつけられている人々をことごとくいやしながら、巡回されました。
39わたしたちは、イエスがこうしてユダヤ人の地やエルサレムでなさったすべてのことの証人であります。人々はこのイエスを木にかけて殺したのです。
40しかし神はイエスを三日目によみがえらせ、
41全部の人々にではなかったが、わたしたち証人としてあらかじめ選ばれた者たちに現れるようにして下さいました。わたしたちは、イエスが死人の中から復活された後、共に飲食しました。
42それから、イエスご自身が生者と死者との審判者として神に定められたかたであることを、人々に宣べ伝え、またあかしするようにと、神はわたしたちにお命じになったのです。
43預言者たちもみな、イエスを信じる者はことごとく、その名によって罪のゆるしが受けられると、あかしをしています」。
44ペテロがこれらの言葉をまだ語り終えないうちに、それを聞いていたみんなの人たちに、聖霊がくだった。
45割礼を受けている信者で、ペテロについてきた人たちは、異邦人たちにも聖霊の賜物が注がれたのを見て、驚いた。
46それは、彼らが異言を語って神をさんびしているのを聞いたからである。そこで、ペテロが言い出した、
47「この人たちがわたしたちと同じように聖霊を受けたからには、彼らに水でバプテスマを授けるのを、だれがこばみ得ようか」。
48こう言って、ペテロはその人々に命じて、イエス・キリストの名によってバプテスマを受けさせた。それから、彼らはペテロに願って、なお数日のあいだ滞在してもらった。
鍵となる聖句
すると、声が二度目にかかってきた、「神がきよめたものを、清くないなどと言ってはならない」。
ここで神は、何がきよく何が汚れているかについてのペテロの見方を正されます。本文は、この幻を人々との出会いに結びつけています。ペテロはそれを28節で悟ります。
ペテロは彼らに言った、「あなたがたが知っているとおり、ユダヤ人が他国の人と交際したり、出入りしたりすることは、禁じられています。ところが、神は、どんな人間をも清くないとか、汚れているとか言ってはならないと、わたしにお示しになりました。
ペテロは学んだことをまとめます。どんな人も、汚れた者、清くない者と呼んではならない。この学びには、幻と、召しと、移動が必要でした。
そこでペテロは口を開いて言った、「神は人をかたよりみないかたで、 神を敬い義を行う者はどの国民でも受けいれて下さることが、ほんとうによくわかってきました。
神は人を分け隔てなさらず、どの国の人でも、神を恐れ、正義を行う者は、神に受け入れられます。この言葉は、すべての人に救いへの道を開きますが、それ自体が目的ではありません。ペテロはこのあとイエスを宣べ伝えるからです。
預言者たちもみな、イエスを信じる者はことごとく、その名によって罪のゆるしが受けられると、あかしをしています」。
メッセージは良い知らせで結ばれます。イエスを信じる者はだれでも、その名によって罪のゆるしを受けます。救いは、イエスへの信仰によるのです。
ペテロがこれらの言葉をまだ語り終えないうちに、それを聞いていたみんなの人たちに、聖霊がくだった。
ペテロがまだ語っているうちに、聖霊が与えられます。この異邦人たちが受け入れられたことを、神ご自身が確かめられました。事前の儀式を待つことはありませんでした。
この章に登場する人物
このテーマで祈る
説教が語っていること
使徒行伝10章についてよくある質問
使徒行伝10章の大きな布の幻は何を意味しますか
ペテロは、汚れていると見なされる動物でいっぱいの布を見て、食べなさいという声を聞きます。彼は拒みますが、神は、神がきよめたものを、清くないなどと言ってはならないと答えられます。ペテロはその後まもなく、この幻が人々に関するものだと悟ります。異邦人の家に入り、福音を伝えてよいのです。
使徒行伝10章のコルネリオとはだれですか
コルネリオは、カイザリヤにいたローマ軍の百卒長でした。本文は彼を、敬虔で、神を恐れ、施しに富み、祈りに忠実で、家族全員がそうであったと伝えています。彼はユダヤ人ではなく、その物語は、神が真剣に求める者に答えてくださることを示しています。
神は人を分け隔てなさらないとはどういう意味ですか
ペテロは、神が出身や国民や地位によって特別扱いをなさらないことを知ります。神を恐れ、正義を行う者はだれでも神に受け入れられます。これは、すべての道が同じだという意味ではありません。ペテロはこのあと、罪のゆるしがイエスへの信仰によると宣べ伝えています。
なぜ使徒行伝10章は教会にとって重要な章なのですか
福音が、まず律法を通ることなく、異邦人にはっきりと開かれた場面だからです。聖霊は、証人たちの前で諸国民に与えられ、これは、ユダヤ教の出身ではない人々を受け入れることをめぐる、初代教会の議論への備えとなります。
使徒行伝 10を引用している記事
口語訳(1955年)— パブリックドメイン。