聖書 — 口語訳 (1955)
ルカによる福音書 22
概要
ルカによる福音書22章は、十字架の前のイエスの最後の数時間を語ります。ユダは祭司長たちと取引し、イエスを引き渡そうとします。イエスは弟子たちと過越の食事をし、聖餐を制定されます。パンと杯は、与えられる体と、血による新しい契約を示します。真の偉大さは仕えることだと教え、ペテロのために祈り、その否認を予告されます。ゲツセマネでは、苦しみのうちに祈り、父のみこころに身を委ねられます。イエスは捕らえられ、ペテロは三度イエスを否認して激しく泣き、イエスは最高議会の前に引き出されます。
この章の6つの区分
1さて、過越といわれている除酵祭が近づいた。
2祭司長たちや律法学者たちは、どうかしてイエスを殺そうと計っていた。民衆を恐れていたからである。
3そのとき、十二弟子のひとりで、イスカリオテと呼ばれていたユダに、サタンがはいった。
4すなわち、彼は祭司長たちや宮守がしらたちのところへ行って、どうしてイエスを彼らに渡そうかと、その方法について協議した。
5彼らは喜んで、ユダに金を与える取決めをした。
6ユダはそれを承諾した。そして、群衆のいないときにイエスを引き渡そうと、機会をねらっていた。
7さて、過越の小羊をほふるべき除酵祭の日がきたので、
8イエスはペテロとヨハネとを使いに出して言われた、「行って、過越の食事ができるように準備をしなさい」。
9彼らは言った、「どこに準備をしたらよいのですか」。
10イエスは言われた、「市内にはいったら、水がめを持っている男に出会うであろう。その人がはいる家までついて行って、
11その家の主人に言いなさい、『弟子たちと一緒に過越の食事をする座敷はどこか、と先生が言っておられます』。
12すると、その主人は席の整えられた二階の広間を見せてくれるから、そこに用意をしなさい」。
13弟子たちは出て行ってみると、イエスが言われたとおりであったので、過越の食事の用意をした。
14時間になったので、イエスは食卓につかれ、使徒たちも共に席についた。
15イエスは彼らに言われた、「わたしは苦しみを受ける前に、あなたがたとこの過越の食事をしようと、切に望んでいた。
16あなたがたに言って置くが、神の国で過越が成就する時までは、わたしは二度と、この過越の食事をすることはない」。
17そして杯を取り、感謝して言われた、「これを取って、互に分けて飲め。
18あなたがたに言っておくが、今からのち神の国が来るまでは、わたしはぶどうの実から造ったものを、いっさい飲まない」。
19またパンを取り、感謝してこれをさき、弟子たちに与えて言われた、「これは、あなたがたのために与えるわたしのからだである。わたしを記念するため、このように行いなさい」。
20食事ののち、杯も同じ様にして言われた、「この杯は、あなたがたのために流すわたしの血で立てられる新しい契約である。
21しかし、そこに、わたしを裏切る者が、わたしと一緒に食卓に手を置いている。
22人の子は定められたとおりに、去って行く。しかし人の子を裏切るその人は、わざわいである」。
23弟子たちは、自分たちのうちだれが、そんな事をしようとしているのだろうと、互に論じはじめた。
24それから、自分たちの中でだれがいちばん偉いだろうかと言って、争論が彼らの間に、起った。
25そこでイエスが言われた、「異邦の王たちはその民の上に君臨し、また、権力をふるっている者たちは恩人と呼ばれる。
26しかし、あなたがたは、そうであってはならない。かえって、あなたがたの中でいちばん偉い人はいちばん若い者のように、指導する人は仕える者のようになるべきである。
27食卓につく人と給仕する者と、どちらが偉いのか。食卓につく人の方ではないか。しかし、わたしはあなたがたの中で、給仕をする者のようにしている。
28あなたがたは、わたしの試錬のあいだ、わたしと一緒に最後まで忍んでくれた人たちである。
29それで、わたしの父が国の支配をわたしにゆだねてくださったように、わたしもそれをあなたがたにゆだね、
30わたしの国で食卓について飲み食いをさせ、また位に座してイスラエルの十二の部族をさばかせるであろう。
31シモン、シモン、見よ、サタンはあなたがたを麦のようにふるいにかけることを願って許された。
32しかし、わたしはあなたの信仰がなくならないように、あなたのために祈った。それで、あなたが立ち直ったときには、兄弟たちを力づけてやりなさい」。
33シモンが言った、「主よ、わたしは獄にでも、また死に至るまでも、あなたとご一緒に行く覚悟です」。
34するとイエスが言われた、「ペテロよ、あなたに言っておく。きょう、鶏が鳴くまでに、あなたは三度わたしを知らないと言うだろう」。
35そして彼らに言われた、「わたしが財布も袋もくつも持たせずにあなたがたをつかわしたとき、何かこまったことがあったか」。彼らは、「いいえ、何もありませんでした」と答えた。
36そこで言われた、「しかし今は、財布のあるものは、それを持って行け。袋も同様に持って行け。また、つるぎのない者は、自分の上着を売って、それを買うがよい。
37あなたがたに言うが、『彼は罪人のひとりに数えられた』としるしてあることは、わたしの身に成しとげられねばならない。そうだ、わたしに係わることは成就している」。
38弟子たちが言った、「主よ、ごらんなさい、ここにつるぎが二振りございます」。イエスは言われた、「それでよい」。
39イエスは出て、いつものようにオリブ山に行かれると、弟子たちも従って行った。
40いつもの場所に着いてから、彼らに言われた、「誘惑に陥らないように祈りなさい」。
41そしてご自分は、石を投げてとどくほど離れたところへ退き、ひざまずいて、祈って言われた、
42「父よ、みこころならば、どうぞ、この杯をわたしから取りのけてください。しかし、わたしの思いではなく、みこころが成るようにしてください」。
43そのとき、御使が天からあらわれてイエスを力づけた。
44イエスは苦しみもだえて、ますます切に祈られた。そして、その汗が血のしたたりのように地に落ちた。
45祈を終えて立ちあがり、弟子たちのところへ行かれると、彼らが悲しみのはて寝入っているのをごらんになって
46言われた、「なぜ眠っているのか。誘惑に陥らないように、起きて祈っていなさい」。
47イエスがまだそう言っておられるうちに、そこに群衆が現れ、十二弟子のひとりでユダという者が先頭に立って、イエスに接吻しようとして近づいてきた。
48そこでイエスは言われた、「ユダ、あなたは接吻をもって人の子を裏切るのか」。
49イエスのそばにいた人たちは、事のなりゆきを見て、「主よ、つるぎで切りつけてやりましょうか」と言って、
50そのうちのひとりが、祭司長の僕に切りつけ、その右の耳を切り落した。
51イエスはこれに対して言われた、「それだけでやめなさい」。そして、その僕の耳に手を触れて、おいやしになった。
52それから、自分にむかって来る祭司長、宮守がしら、長老たちに対して言われた、「あなたがたは、強盗にむかうように剣や棒を持って出てきたのか。
53毎日あなたがたと一緒に宮にいた時には、わたしに手をかけなかった。だが、今はあなたがたの時、また、やみの支配の時である」。
54それから人々はイエスを捕え、ひっぱって大祭司の邸宅へつれて行った。ペテロは遠くからついて行った。
55人々は中庭のまん中に火をたいて、一緒にすわっていたので、ペテロもその中にすわった。
56すると、ある女中が、彼が火のそばにすわっているのを見、彼を見つめて、「この人もイエスと一緒にいました」と言った。
57ペテロはそれを打ち消して、「わたしはその人を知らない」と言った。
58しばらくして、ほかの人がペテロを見て言った、「あなたもあの仲間のひとりだ」。するとペテロは言った、「いや、それはちがう」。
59約一時間たってから、またほかの者が言い張った、「たしかにこの人もイエスと一緒だった。この人もガリラヤ人なのだから」。
60ペテロは言った、「あなたの言っていることは、わたしにわからない」。すると、彼がまだ言い終らぬうちに、たちまち、鶏が鳴いた。
61主は振りむいてペテロを見つめられた。そのときペテロは、「きょう、鶏が鳴く前に、三度わたしを知らないと言うであろう」と言われた主のお言葉を思い出した。
62そして外へ出て、激しく泣いた。
63イエスを監視していた人たちは、イエスを嘲弄し、打ちたたき、
64目かくしをして、「言いあててみよ。打ったのは、だれか」ときいたりした。
65そのほか、いろいろな事を言って、イエスを愚弄した。
66夜が明けたとき、人民の長老、祭司長たち、律法学者たちが集まり、イエスを議会に引き出して言った、
67「あなたがキリストなら、そう言ってもらいたい」。イエスは言われた、「わたしが言っても、あなたがたは信じないだろう。
68また、わたしがたずねても、答えないだろう。
69しかし、人の子は今からのち、全能の神の右に座するであろう」。
70彼らは言った、「では、あなたは神の子なのか」。イエスは言われた、「あなたがたの言うとおりである」。
71すると彼らは言った、「これ以上、なんの証拠がいるか。われわれは直接彼の口から聞いたのだから」。
鍵となる聖句
またパンを取り、感謝してこれをさき、弟子たちに与えて言われた、「これは、あなたがたのために与えるわたしのからだである。わたしを記念するため、このように行いなさい」。 食事ののち、杯も同じ様にして言われた、「この杯は、あなたがたのために流すわたしの血で立てられる新しい契約である。
イエスは、パンと杯に新しい意味を与えられます。与えられる体と、血による新しい契約です。この箇所が聖餐の起源であり、キリスト教の諸伝統はそれをさまざまに理解しながら、いずれも実践しています。
しかし、あなたがたは、そうであってはならない。かえって、あなたがたの中でいちばん偉い人はいちばん若い者のように、指導する人は仕える者のようになるべきである。 食卓につく人と給仕する者と、どちらが偉いのか。食卓につく人の方ではないか。しかし、わたしはあなたがたの中で、給仕をする者のようにしている。
弟子たちが偉さについて争ったとき、イエスは基準を覆されます。いちばん偉いのは仕える者であり、イエスご自身も、仕える者として彼らの間におられます。
しかし、わたしはあなたの信仰がなくならないように、あなたのために祈った。それで、あなたが立ち直ったときには、兄弟たちを力づけてやりなさい」。
イエスは、ペテロが倒れる前から、その信仰がなくならないよう祈っておられました。また、立ち直ったときには、兄弟たちを力づけることができると告げられます。
「父よ、みこころならば、どうぞ、この杯をわたしから取りのけてください。しかし、わたしの思いではなく、みこころが成るようにしてください」。
ゲツセマネの祈りには、杯を遠ざけたいという願いを口にしながら、父のみこころに身を委ねるイエスの姿があります。率直な明け渡しの模範です。
主は振りむいてペテロを見つめられた。そのときペテロは、「きょう、鶏が鳴く前に、三度わたしを知らないと言うであろう」と言われた主のお言葉を思い出した。 そして外へ出て、激しく泣いた。
否認したあとのペテロに向けられたイエスの眼差しは、拒絶ではありません。ペテロに、受けた言葉を思い起こさせるものです。ペテロは外に出て、激しく泣きました。
この章に登場する人物
説教が語っていること
ルカによる福音書22章についてよくある質問
ルカ22章19節の、わたしを記念するためにこれを行いなさいとはどういう意味ですか
イエスは弟子たちに、パンと杯の食事を繰り返して、ご自分を記念するよう求められました。記念するとは、過去の出来事を思い出すだけでなく、イエスが成し遂げられたことに改めて拠り頼むことです。聖餐におけるキリストの臨在の理解は伝統によって異なりますが、いずれも新しい契約の食事と見ています。
ルカ22章のゲツセマネでは何が起こりますか
イエスはオリブ山に退いて祈られます。父に杯を取りのけてくださるよう願い、続けて、自分の願いではなく父のみこころがなるようにと言われます。御使いが現れて力づけ、イエスは苦しみもだえて、さらに切に祈られました。その間、弟子たちは悲しみのあまり眠ってしまいます。
なぜペテロはイエスを否認したのですか
ペテロは、イエスとともに牢にも死にも行く覚悟があると言っていました。しかし、恐れと周りの人々の圧力の中で、三度イエスを知らないと言います。イエスはそれを予告しておられましたが、同時に、ペテロの信仰がなくならないよう祈り、立ち直ったときに兄弟たちを力づけるようにと言われていました。
サタンが弟子たちを求めたとイエスが言われたのはどういう意味ですか
31節で、イエスはシモンに、サタンが弟子たちを麦のようにふるいにかけることを願ったと告げます。つまり、揺さぶる試練にあわせることです。しかしイエスは、ペテロのために祈ることで応えられます。この箇所は、試練が現実であること、そしてイエスがご自分のものとされた人々のためにとりなしておられることを示しています。
ルカによる福音書 22を引用している記事
口語訳(1955年)— パブリックドメイン。