聖書 — 口語訳 (1955)
サムエル記上 15
概要
サムエル記上15章は、サウル王の失墜を伝えています。神はサムエルを通して、アマレクを撃ち、すべてを滅ぼし尽くすよう命じられます。サウルは王アガグと最も良い家畜を残し、そのうえで従ったと言い張り、いけにえをささげるためだったと言い訳します。サムエルは、従うことはいけにえにまさると答えます。サウルは罪を認めますが、この章が描く悔い改めは、民への恐れと自分の体面への気づかいに彩られており、神はサウルを王として退けられます。
この章の5つの区分
1さて、サムエルはサウルに言った、「主は、わたしをつかわし、あなたに油をそそいで、その民イスラエルの王とされました。それゆえ、今、主の言葉を聞きなさい。
2万軍の主は、こう仰せられる、『わたしは、アマレクがイスラエルにした事、すなわちイスラエルがエジプトから上ってきた時、その途中で敵対したことについて彼らを罰するであろう。
3今、行ってアマレクを撃ち、そのすべての持ち物を滅ぼしつくせ。彼らをゆるすな。男も女も、幼な子も乳飲み子も、牛も羊も、らくだも、ろばも皆、殺せ』」。
4サウルは民を呼び集め、テライムで人数を調べたところ、歩兵は二十万、ユダの人は一万であった。
5そしてサウルはアマレクの町へ行って、谷に兵を伏せた。
6サウルはケニびとに言った、「さあ、あなたがたはアマレクびとを離れて、下っていってください。彼らと一緒にあなたがたを滅ぼすようなことがあってはならない。あなたがたは、イスラエルの人々がエジプトから上ってきた時、親切にしてくれたのですから」。そこでケニびとはアマレクびとを離れて行った。
7サウルはアマレクびとを撃って、ハビラからエジプトの東にあるシュルにまで及んだ。
8そしてアマレクびとの王アガグをいけどり、つるぎをもってその民をことごとく滅ぼした。
9しかしサウルと民はアガグをゆるし、また羊と牛の最も良いもの、肥えたものならびに小羊と、すべての良いものを残し、それらを滅ぼし尽すことを好まず、ただ値うちのない、つまらない物を滅ぼし尽した。
10その時、主の言葉がサムエルに臨んだ、
11「わたしはサウルを王としたことを悔いる。彼がそむいて、わたしに従わず、わたしの言葉を行わなかったからである」。サムエルは怒って、夜通し、主に呼ばわった。
12そして朝サウルに会うため、早く起きたが、サムエルに告げる人があった、「サウルはカルメルにきて、自分のために戦勝記念碑を建て、身をかえして進み、ギルガルへ下って行きました」。
13サムエルがサウルのもとへ来ると、サウルは彼に言った、「どうぞ、主があなたを祝福されますように。わたしは主の言葉を実行しました」。
14サムエルは言った、「それならば、わたしの耳にはいる、この羊の声と、わたしの聞く牛の声は、いったい、なんですか」。
15サウルは言った、「人々がアマレクびとの所から引いてきたのです。民は、あなたの神、主にささげるために、羊と牛の最も良いものを残したのです。そのほかは、われわれが滅ぼし尽しました」。
16サムエルはサウルに言った、「おやめなさい。昨夜、主がわたしに言われたことを、あなたに告げましょう」。サウルは彼に言った、「言ってください」。
17サムエルは言った、「たとい、自分では小さいと思っても、あなたはイスラエルの諸部族の長ではありませんか。主はあなたに油を注いでイスラエルの王とされた。
18そして主はあなたに使命を授け、つかわして言われた、『行って、罪びとなるアマレクびとを滅ぼし尽せ。彼らを皆殺しにするまで戦え』。
19それであるのに、どうしてあなたは主の声に聞き従わないで、ぶんどり物にとびかかり、主の目の前に悪をおこなったのですか」。
20サウルはサムエルに言った、「わたしは主の声に聞き従い、主がつかわされた使命を帯びて行き、アマレクの王アガグを連れてきて、アマレクびとを滅ぼし尽しました。
21しかし民は滅ぼし尽すべきもののうち最も良いものを、ギルガルで、あなたの神、主にささげるため、ぶんどり物のうちから羊と牛を取りました」。
22サムエルは言った、「主はそのみ言葉に聞き従う事を喜ばれるように、燔祭や犠牲を喜ばれるであろうか。見よ、従うことは犠牲にまさり、聞くことは雄羊の脂肪にまさる。
23そむくことは占いの罪に等しく、強情は偶像礼拝の罪に等しいからである。あなたが主のことばを捨てたので、主もまたあなたを捨てて、王の位から退けられた」。
24サウルはサムエルに言った、「わたしは主の命令とあなたの言葉にそむいて罪を犯しました。民を恐れて、その声に聞き従ったからです。
25どうぞ、今わたしの罪をゆるし、わたしと一緒に帰って、主を拝ませてください」。
26サムエルはサウルに言った、「あなたと一緒に帰りません。あなたが主の言葉を捨てたので、主もあなたを捨てて、イスラエルの王位から退けられたからです」。
27こうしてサムエルが去ろうとして身をかえした時、サウルがサムエルの上着のすそを捕えたので、それは裂けた。
28サムエルは彼に言った、「主はきょう、あなたからイスラエルの王国を裂き、もっと良いあなたの隣人に与えられた。
29またイスラエルの栄光は偽ることもなく、悔いることもない。彼は人ではないから悔いることはない」。
30サウルは言った、「わたしは罪を犯しましたが、どうぞ、民の長老たち、およびイスラエルの前で、わたしを尊び、わたしと一緒に帰って、あなたの神、主を拝ませてください」。
31そこでサムエルはサウルのあとについて帰った。そしてサウルは主を拝んだ。
32時にサムエルは言った、「わたしの所にアマレクびとの王アガグを引いてきなさい」。アガグはうれしそうにサムエルの所にきた。アガグは「死の苦しみはきっと過ぎ去ったのだ」と思った。
33サムエルは言った、「あなたのつるぎは多くの女に子供を失わせた。そのようにあなたの母も女のうちで最も無惨に子供を失う者となるであろう」。サムエルはギルガルで主の前に、アガグを寸断した。
34そしてサムエルはラマに行き、サウルは故郷のギベアに上って、その家に帰った。
35サムエルは死ぬ日まで、二度とサウルを見なかった。しかしサムエルはサウルのために悲しんだ。また主はサウルをイスラエルの王としたことを悔いられた。
鍵となる聖句
しかしサウルと民はアガグをゆるし、また羊と牛の最も良いもの、肥えたものならびに小羊と、すべての良いものを残し、それらを滅ぼし尽すことを好まず、ただ値うちのない、つまらない物を滅ぼし尽した。
サウルと民は、価値のあるものを残し、つまらないものだけを滅ぼします。サウルの従順は選り好みです。自分に都合のよいことには従うのです。
サムエルは言った、「主はそのみ言葉に聞き従う事を喜ばれるように、燔祭や犠牲を喜ばれるであろうか。見よ、従うことは犠牲にまさり、聞くことは雄羊の脂肪にまさる。 そむくことは占いの罪に等しく、強情は偶像礼拝の罪に等しいからである。あなたが主のことばを捨てたので、主もまたあなたを捨てて、王の位から退けられた」。
サムエルは、神は従うことを犠牲にまさって喜ばれ、そむくことは占いの罪に等しいと宣言します。宗教的な行いは、神のみ言葉に従うことの代わりにはなりません。
サウルはサムエルに言った、「わたしは主の命令とあなたの言葉にそむいて罪を犯しました。民を恐れて、その声に聞き従ったからです。
サウルは罪を犯したと言いますが、民を恐れたからだと説明します。彼の告白には言い訳が混じっており、そのあと、長老たちの前で自分を尊んでほしいと願います(30節)。悔い改めよりも、自分の体面を気にかけているのです。
またイスラエルの栄光は偽ることもなく、悔いることもない。彼は人ではないから悔いることはない」。
神は人のように偽ることも、悔いることもありません。神がサウルを選んだことを悔いておられる11節との区別がここにあります。神の決断は気まぐれではなく、サウルに対するさばきは揺るぎません。
この章に登場する人物
このテーマで祈る
説教が語っていること
サムエル記上15章についてよくある質問
「従うことは犠牲にまさり」(サムエル記上15:22)とはどういう意味ですか。
サムエルは、家畜を残したのは神にささげるためだと弁解するサウルに答えています。神は宗教的な行いよりも、そのみ言葉に聞き従うことを喜ばれると説明します。この節は供え物を非難しているのではなく、供え物が、聞くことと心からの服従の代わりにはならないことを思い起こさせています。
サムエル記上15章で、なぜ神はサウルを王として退けられたのですか。
サウルは、アガグ王と戦利品の最も良いものを残して、神の明確な命令にそむきました。そのうえで従ったと言い張り、責任を民に転嫁し、自分の評判を守ろうとしました。サムエルは、サウルが主のことばを捨てたので、サウルもまた退けられたと結論します。この章は、中途半端な従順の重大さを強調しています。
アマレクを滅ぼすという命令は、どう理解すればよいですか。
この箇所は難しく、クリスチャンはさまざまに読んでいます。本文は、エジプトを出たときのアマレクのイスラエルに対する敵意に触れています(2節)。多くの人は、これをイスラエルの歴史に結びついた特別なさばきと見て、今日のいかなる暴力も正当化しないと考えます。旧約と新約のへだたりを指摘する人もいます。この章が最も強調しているのは、サウルの従順です。
サムエル記上 15を引用している記事
口語訳(1955年)— パブリックドメイン。