聖書 — 口語訳 (1955)
ダニエル書 6
概要
ダニエル書6章は、獅子の穴の物語です。ダリヨス王のもとで、ダニエルはその誠実さによって王国の高官の中で重んじられるようになり、同僚たちのねたみを買います。仕事のことでは訴えられなかった彼らは、三十日間、王以外の者に祈ってはならないという禁令で王をわなにかけます。ダニエルは以前と変わらず自分の神に祈り続け、獅子の穴に投げ込まれ、朝になって救い出されます。王は、ダニエルの神は生ける神であり、その国は決して滅びないと宣言します。
この章の5つの区分
1ダリヨスは全国を治めるために、その国に百二十人の総督を立てることをよしとし、
2また彼らの上に三人の総監を立てた。ダニエルはそのひとりであった。これは総督たちをして、この三人の前に、その職務に関する報告をさせて、王に損失の及ぶことのないようにするためであった。
3ダニエルは彼のうちにあるすぐれた霊のゆえに、他のすべての総監および総督たちにまさっていたので、王は彼を立てて全国を治めさせようとした。
4そこで総監および総督らは、国事についてダニエルを訴えるべき口実を得ようとしたが、訴えるべきなんの口実も、なんのとがをも見いだすことができなかった。それは彼が忠信な人であって、その身になんのあやまちも、とがも見いだされなかったからである。
5そこでその人々は言った、「われわれはダニエルの神の律法に関して、彼を訴える口実を得るのでなければ、ついに彼を訴えることはできまい」と。
6こうして総監と総督らは、王のもとに集まってきて、王に言った、「ダリヨス王よ、どうかとこしえに生きながらえられますように。
7国の総監、長官および総督、参議および知事らは、相はかって、王が一つのおきてを立て、一つの禁令を定められるよう求めることになりました。王よ、それはこうです。すなわち今から三十日の間は、ただあなたにのみ願い事をさせ、もしあなたをおいて、神または人にこれをなす者があれば、すべてその者を、ししの穴に投げ入れるというのです。
8それで王よ、その禁令を定め、その文書に署名して、メデアとペルシャの変ることのない法律のごとく、これを変えることのできないようにしてください」。
9そこでダリヨス王は、その禁令の文書に署名した。
10ダニエルは、その文書の署名されたことを知って家に帰り、二階のへやの、エルサレムに向かって窓の開かれた所で、以前からおこなっていたように、一日に三度ずつ、ひざをかがめて神の前に祈り、かつ感謝した。
11そこでその人々は集まってきて、ダニエルがその神の前に祈り、かつ求めていることを見たので、
12彼らは王の前にきて、王の禁令について奏上して言った、「王よ、あなたは禁令に署名して、今から三十日の間は、ただあなたにのみ願い事をさせ、もしあなたをおいて、神または人に、これをなす者があれば、すべてその者を、ししの穴に投げ入れると、定められたではありませんか」。王は答えて言った、「その事は確かであって、メデアとペルシャの法律のごとく、変えることのできないものだ」。
13彼らは王の前に答えて言った、「王よ、ユダから引いてきた捕囚のひとりである、かのダニエルは、あなたをも、あなたの署名された禁令をも顧みず、一日に三度ずつ、祈をささげています」。
14王はこの言葉を聞いて大いに憂え、ダニエルを救おうと心を用い、日の入るまで、彼を救い出すことに努めた。
15時にその人々は、また王のもとに集まってきて、王に言った、「王よ、メデアとペルシャの法律によれば、王の立てた禁令、または、おきては変えることのできないものであることを、ご承知ください」。
16そこで王は命令を下したので、ダニエルは引き出されて、ししの穴に投げ入れられた。王はダニエルに言った、「どうか、あなたの常に仕える神が、あなたを救われるように」。
17そして一つの石を持ってきて、穴の口をふさいだので、王は自分の印と、大臣らの印をもって、これに封印した。これはダニエルの処置を変えることのないようにするためであった。
18こうして王はその宮殿に帰ったが、その夜は食をとらず、また、そばめたちを召し寄せず、全く眠ることもしなかった。
19こうして王は朝まだき起きて、ししの穴へ急いで行ったが、
20ダニエルのいる穴に近づいたとき、悲しげな声をあげて呼ばわり、ダニエルに言った、「生ける神のしもべダニエルよ、あなたが常に仕えている神はあなたを救って、ししの害を免れさせることができたか」。
21ダニエルは王に言った、「王よ、どうか、とこしえに生きながらえられますように。
22わたしの神はその使をおくって、ししの口を閉ざされたので、ししはわたしを害しませんでした。これはわたしに罪のないことが、神の前に認められたからです。王よ、わたしはあなたの前にも、何も悪い事をしなかったのです」。
23そこで王は大いに喜び、ダニエルを穴の中から出せと命じたので、ダニエルは穴の中から出されたが、その身になんの害をも受けていなかった。これは彼が自分の神を頼みとしていたからである。
24王はまた命令を下して、ダニエルをあしざまに訴えた人々を引いてこさせ、彼らをその妻子と共に、ししの穴に投げ入れさせた。彼らが穴の底に達しないうちに、ししは彼らにとびかかって、その骨までもかみ砕いた。
25そこでダリヨス王は全世界に住む諸民、諸族、諸国語の者に詔を書きおくって言った、「どうか、あなたがたに平安が増すように。
26わたしは命令を出す。わが国のすべての州の人は、皆ダニエルの神を、おののき恐れなければならない。彼は生ける神であって、とこしえに変ることなく、その国は滅びず、その主権は終りまで続く。
27彼は救を施し、助けをなし、天においても、地においても、しるしと奇跡とをおこない、ダニエルを救って、ししの力をのがれさせたかたである」。
28こうして、このダニエルはダリヨスの世と、ペルシャ人クロスの世において栄えた。
鍵となる聖句
そこで総監および総督らは、国事についてダニエルを訴えるべき口実を得ようとしたが、訴えるべきなんの口実も、なんのとがをも見いだすことができなかった。それは彼が忠信な人であって、その身になんのあやまちも、とがも見いだされなかったからである。
敵たちは、ダニエルの仕事に非難すべき点を見つけられません。彼が誠実だからです。その誠実さがあまりにはっきりしていたので、彼らは彼の信仰を攻撃するほかありませんでした。
ダニエルは、その文書の署名されたことを知って家に帰り、二階のへやの、エルサレムに向かって窓の開かれた所で、以前からおこなっていたように、一日に三度ずつ、ひざをかがめて神の前に祈り、かつ感謝した。
禁令を前にしても、ダニエルは習慣を変えず、以前と同じように一日三度祈ります。日ごろの祈りが、試練の前から彼を備えていました。
そこで王は命令を下したので、ダニエルは引き出されて、ししの穴に投げ入れられた。王はダニエルに言った、「どうか、あなたの常に仕える神が、あなたを救われるように」。
王自身が、ダニエルが絶えず自分の神に仕えていることを認めています。王は不本意なままダニエルを引き渡します。そこにこの証しの力が表れています。
そこで王は大いに喜び、ダニエルを穴の中から出せと命じたので、ダニエルは穴の中から出されたが、その身になんの害をも受けていなかった。これは彼が自分の神を頼みとしていたからである。
ダニエルは傷一つなく穴から出ました。自分の神に信頼していたからです。本文は、救いをその信頼と結びつけています。
わたしは命令を出す。わが国のすべての州の人は、皆ダニエルの神を、おののき恐れなければならない。彼は生ける神であって、とこしえに変ることなく、その国は滅びず、その主権は終りまで続く。 彼は救を施し、助けをなし、天においても、地においても、しるしと奇跡とをおこない、ダニエルを救って、ししの力をのがれさせたかたである」。
ダリヨスの宣言は、神は生きておられ、その国は続き、救い出してくださると告げています。異教の王から出た言葉であることが、その重みをいっそう増しています。
この章に登場する人物
このテーマで祈る
説教が語っていること
ダニエル書6章についてよくある質問
ダニエル書6章には何が書かれていますか
ダニエル書6章は、ダリヨス王のもとで高官であったダニエルが、王以外への祈りを禁じる禁令にもかかわらず自分の神に祈り続けたために、獅子の穴に投げ込まれる物語です。神は夜の間、彼を無事に守られました。王はその後、ダニエルの神は生ける神であると宣言し、告発者たちを罰しました。
ダニエルはなぜ禁令にもかかわらず祈り続けたのですか
ダニエルは禁令が出る前から、窓を開けてエルサレムに向かい、一日三度祈っていました。祈ることをやめれば、神との関係を公にあきらめることになったでしょう。彼は王に反抗するわけでも、対決を求めるわけでもありません。いつもしてきたことに忠実であり続け、その代価を払うことを受け入れたのです。
獅子の穴のメッセージは何ですか
この箇所は、神への忠実さには大きな代価がともなうことがあっても、神は御もとに信頼する人を守ってくださることを示しています(23節)。信じる人がいつも試練を免れるとは約束していません。神は生きておられ、その国は滅びることがなく、救い出してくださるということを思い起こさせます。クリスチャンはここに、祈りに堅く立ち続けるための励ましも見ています。
ダニエル書 6を引用している記事
口語訳(1955年)— パブリックドメイン。