聖書 — 口語訳 (1955)
列王紀下 6
概要
列王紀下6章には、預言者エリシャの働きを伝えるいくつかの場面が集められています。借りた斧の頭を浮かび上がらせ、スリヤの王の計略をイスラエルの王に知らせ、ドタンでは、自分たちを囲む神の軍勢が従者に見えるよう祈ります。スリヤの兵士たちは目をくらまされてサマリヤに連れて行かれ、殺されるかわりに食事を与えられ、これで襲撃は止みます。章の終わりでは、サマリヤの恐ろしい包囲が描かれ、飢饉の中で王は神を責め、預言者に怒りを向けます。
この章の5つの区分
1さて預言者のともがらはエリシャに言った、「わたしたちがあなたと共に住んでいる所は狭くなりましたので、
2わたしたちをヨルダンに行かせ、そこからめいめい一本ずつ材木を取ってきて、わたしたちの住む場所を造らせてください」。エリシャは言った、「行きなさい」。
3時にそのひとりが、「どうぞあなたも、しもべらと一緒に行ってください」と言ったので、エリシャは「行きましょう」と答えた。
4そしてエリシャは彼らと一緒に行った。彼らはヨルダンへ行って木を切り倒したが、
5ひとりが材木を切り倒しているとき、おのの頭が水の中に落ちたので、彼は叫んで言った。「ああ、わが主よ。これは借りたものです」。
6神の人は言った、「それはどこに落ちたのか」。彼がその場所を知らせると、エリシャは一本の枝を切り落し、そこに投げ入れて、そのおのの頭を浮ばせ、
7「それを取りあげよ」と言ったので、その人は手を伸べてそれを取った。
8かつてスリヤの王がイスラエルと戦っていたとき、家来たちと評議して「しかじかの所にわたしの陣を張ろう」と言うと、
9神の人はイスラエルの王に「あなたは用心して、この所をとおってはなりません。スリヤびとがそこに下ってきますから」と言い送った。
10それでイスラエルの王は神の人が自分に告げてくれた所に人をつかわし、警戒したので、その所でみずからを防ぎえたことは一、二回にとどまらなかった。
11スリヤの王はこの事のために心を悩まし、家来たちを召して言った、「われわれのうち、だれがイスラエルの王と通じているのか、わたしに告げる者はないか」。
12ひとりの家来が言った、「王、わが主よ、だれも通じている者はいません。ただイスラエルの預言者エリシャが、あなたが寝室で語られる言葉でもイスラエルの王に告げるのです」。
13王は言った、「彼がどこにいるか行って捜しなさい。わたしは人をやって彼を捕えよう」。時に「彼はドタンにいる」と王に告げる者があったので、
14王はそこに馬と戦車および大軍をつかわした。彼らは夜のうちに来て、その町を囲んだ。
15神の人の召使が朝早く起きて出て見ると、軍勢が馬と戦車をもって町を囲んでいたので、その若者はエリシャに言った、「ああ、わが主よ、わたしたちはどうしましょうか」。
16エリシャは言った、「恐れることはない。われわれと共にいる者は彼らと共にいる者よりも多いのだから」。
17そしてエリシャが祈って「主よ、どうぞ、彼の目を開いて見させてください」と言うと、主はその若者の目を開かれたので、彼が見ると、火の馬と火の戦車が山に満ちてエリシャのまわりにあった。
18スリヤびとがエリシャの所に下ってきた時、エリシャは主に祈って言った、「どうぞ、この人々の目をくらましてください」。するとエリシャの言葉のとおりに彼らの目をくらまされた。
19そこでエリシャは彼らに「これはその道ではない。これはその町でもない。わたしについてきなさい。わたしはあなたがたを、あなたがたの尋ねる人の所へ連れて行きましょう」と言って、彼らをサマリヤへ連れて行った。
20彼らがサマリヤにはいったとき、エリシャは言った、「主よ、この人々の目を開いて見させてください」。主は彼らの目を開かれたので、彼らが見ると、見よ、彼らはサマリヤのうちに来ていた。
21イスラエルの王は彼らを見て、エリシャに言った、「わが父よ、彼らを撃ち殺しましょうか。彼らを撃ち殺しましょうか」。
22エリシャは答えた、「撃ち殺してはならない。あなたはつるぎと弓をもって、捕虜にした者どもを撃ち殺すでしょうか。パンと水を彼らの前に供えて食い飲みさせ、その主君のもとへ行かせなさい」。
23そこで王は彼らのために盛んなふるまいを設けた。彼らが食い飲みを終ると彼らを去らせたので、その主君の所へ帰った。スリヤの略奪隊は再びイスラエルの地にこなかった。
24この後スリヤの王ベネハダデはその全軍を集め、上ってきてサマリヤを攻め囲んだので、
25サマリヤに激しいききんが起った。すなわち彼らがこれを攻め囲んだので、ついに、ろばの頭一つが銀八十シケルで売られ、はとのふん一カブの四分の一が銀五シケルで売られるようになった。
26イスラエルの王が城壁の上をとおっていた時、ひとりの女が彼に呼ばわって、「わが主、王よ、助けてください」と言ったので、
27彼は言った、「もし主があなたを助けられないならば、何をもってわたしがあなたを助けることができよう。打ち場の物をもってか、酒ぶねの物をもってか」。
28そして王は女に尋ねた、「何事なのですか」。彼女は答えた、「この女はわたしにむかって『あなたの子をください。わたしたちは、きょうそれを食べ、あす、わたしの子を食べましょう』と言いました。
29それでわたしたちは、まずわたしの子を煮て食べましたが、次の日わたしが彼女にむかって『あなたの子をください。わたしたちはそれを食べましょう』と言いますと、彼女はその子を隠しました」。
30王はその女の言葉を聞いて、衣を裂き、――王は城壁の上をとおっていたが、民が見ると、その身に荒布を着けていた――
31そして王は言った「きょう、シャパテの子エリシャの首がその肩の上にすわっているならば、神がどんなにでもわたしを罰してくださるように」。
32さてエリシャはその家に座していたが、長老たちもきて彼と共に座した。王は自分の所から人をつかわしたが、エリシャはその使者がまだ着かないうちに長老たちに言った、「あなたがたは、この人を殺す者がわたしの首を取るために、人をつかわすのを見ますか。その使者がきたならば、戸を閉じて、内に入れてはなりません。彼のうしろに、その主君の足音がするではありませんか」。
33彼がなお彼らと語っているうちに、王は彼のもとに下ってきて言った、「この災は主から出たのです。わたしはどうしてこの上、主を待たなければならないでしょうか」。
鍵となる聖句
わたしたちをヨルダンに行かせ、そこからめいめい一本ずつ材木を取ってきて、わたしたちの住む場所を造らせてください」。エリシャは言った、「行きなさい」。
預言者の仲間たちは、住む所が狭いと嘆くだけではありません。具体的な計画を立て、エリシャに同行を願います。師とともに前へ進む共同体の姿が描かれています。
神の人は言った、「それはどこに落ちたのか」。彼がその場所を知らせると、エリシャは一本の枝を切り落し、そこに投げ入れて、そのおのの頭を浮ばせ、
水の中に失われた斧の頭が浮かび上がります。この出来事は、神が小さな実際的な問題にも心を留めてくださること、しかも失ったのは自分のものではない道具だったことを示しています。
エリシャは言った、「恐れることはない。われわれと共にいる者は彼らと共にいる者よりも多いのだから」。 そしてエリシャが祈って「主よ、どうぞ、彼の目を開いて見させてください」と言うと、主はその若者の目を開かれたので、彼が見ると、火の馬と火の戦車が山に満ちてエリシャのまわりにあった。
目に見える大軍を前にして、エリシャは「われわれと共にいる者は彼らと共にいる者よりも多いのだから」と告げます。彼の祈りは、守りが増えるようにというものではなく、すでにあるものが従者に見えるようにというものです。
エリシャは答えた、「撃ち殺してはならない。あなたはつるぎと弓をもって、捕虜にした者どもを撃ち殺すでしょうか。パンと水を彼らの前に供えて食い飲みさせ、その主君のもとへ行かせなさい」。
エリシャは殺戮を退け、敵の兵士にパンと水を出すよう命じます。この寛大さは、武力による勝利よりもはるかによく、襲撃を終わらせました。
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列王紀下6章についてよくある質問
列王紀下6章16節の「われわれと共にいる者」とはどういう意味ですか。
エリシャは、町を取り囲むスリヤの軍勢を恐れる従者に答えます。霊的な現実は目に見えるものを超えており、神の軍勢は敵の軍勢より大きいと告げるのです。これは試練がないという保証ではありませんが、状況を目に映るものだけで判断しないようにという招きです。
列王紀下6章の、鉄が浮かんだ奇跡とはどのような話ですか。
ヨルダン川での工事の最中に、借りた斧の頭が水に落ちます。それは自分のものではなかったので、働き手は心配します。エリシャが示された場所に枝を投げ入れると、鉄が浮かび上がります。この話は、神が日々の小さな心配事にも働いてくださることを示しています。
エリシャはなぜスリヤの兵士たちに食事を与えさせたのですか。
捕虜を撃ち殺させるかわりに、エリシャは彼らに食べ物と飲み物を出し、主君のもとへ帰らせるよう求めました。本文には、スリヤの軍勢が二度とイスラエルの地に来なかったと記されています。敵に対する親切が、力よりも効果的であったことが示されています。
列王紀下 6を引用している記事
口語訳(1955年)— パブリックドメイン。