聖書 — 口語訳 (1955)
創世記 16
概要
創世記16章は、息子の約束が遅れたときに起こることを語ります。子を産めないサライは、エジプト人の女奴隷ハガルによって子を得るようアブラムに勧めます。ハガルの妊娠は、さげすみ、ねたみ、そして厳しい仕打ちを生み、ハガルは逃げ出します。荒野で、主の使いが泉のほとりでハガルを見つけ、二つの問いかけをし、戻るよう命じ、息子イシマエルの誕生を告げます。ハガルは神に名をつけます。わたしを見てくださる方、です。この章は、人間的な解決策の結末と、力のない一人の女性への神のまなざしを、ともに示しています。
この章の5つの区分
1アブラムの妻サライは子を産まなかった。彼女にひとりのつかえめがあった。エジプトの女で名をハガルといった。
2サライはアブラムに言った、「主はわたしに子をお授けになりません。どうぞ、わたしのつかえめの所におはいりください。彼女によってわたしは子をもつことになるでしょう」。アブラムはサライの言葉を聞きいれた。
3アブラムの妻サライはそのつかえめエジプトの女ハガルをとって、夫アブラムに妻として与えた。これはアブラムがカナンの地に十年住んだ後であった。
4彼はハガルの所にはいり、ハガルは子をはらんだ。彼女は自分のはらんだのを見て、女主人を見下げるようになった。
5そこでサライはアブラムに言った、「わたしが受けた害はあなたの責任です。わたしのつかえめをあなたのふところに与えたのに、彼女は自分のはらんだのを見て、わたしを見下げます。どうか、主があなたとわたしの間をおさばきになるように」。
6アブラムはサライに言った、「あなたのつかえめはあなたの手のうちにある。あなたの好きなように彼女にしなさい」。そしてサライが彼女を苦しめたので、彼女はサライの顔を避けて逃げた。
7主の使は荒野にある泉のほとり、すなわちシュルの道にある泉のほとりで、彼女に会い、
8そして言った、「サライのつかえめハガルよ、あなたはどこからきたのですか、またどこへ行くのですか」。彼女は言った、「わたしは女主人サライの顔を避けて逃げているのです」。
9主の使は彼女に言った、「あなたは女主人のもとに帰って、その手に身を任せなさい」。
10主の使はまた彼女に言った、「わたしは大いにあなたの子孫を増して、数えきれないほどに多くしましょう」。
11主の使はまた彼女に言った、「あなたは、みごもっています。あなたは男の子を産むでしょう。名をイシマエルと名づけなさい。主があなたの苦しみを聞かれたのです。
12彼は野ろばのような人となり、その手はすべての人に逆らい、すべての人の手は彼に逆らい、彼はすべての兄弟に敵して住むでしょう」。
13そこで、ハガルは自分に語られた主の名を呼んで、「あなたはエル・ロイです」と言った。彼女が「ここでも、わたしを見ていられるかたのうしろを拝めたのか」と言ったことによる。
14それでその井戸は「ベエル・ラハイ・ロイ」と呼ばれた。これはカデシとベレデの間にある。
15ハガルはアブラムに男の子を産んだ。アブラムはハガルが産んだ子の名をイシマエルと名づけた。
16ハガルがイシマエルをアブラムに産んだ時、アブラムは八十六歳であった。
鍵となる聖句
サライはアブラムに言った、「主はわたしに子をお授けになりません。どうぞ、わたしのつかえめの所におはいりください。彼女によってわたしは子をもつことになるでしょう」。アブラムはサライの言葉を聞きいれた。
サライは自分が子を産めないことを主のせいにし、そのうえで、当時は認められていた人間的な解決策を提案します。アブラムは妻の声に耳を傾け、神から受けた約束に立ち返ることをしませんでした。
そして言った、「サライのつかえめハガルよ、あなたはどこからきたのですか、またどこへ行くのですか」。彼女は言った、「わたしは女主人サライの顔を避けて逃げているのです」。
使いは二つの問いを投げかけます。どこから来たのか、どこへ行くのか。神はハガルを名前で呼び、彼女自身の状況を語らせます。これらの問いは、説教の中でよく知られるようになりました。
主の使はまた彼女に言った、「あなたは、みごもっています。あなたは男の子を産むでしょう。名をイシマエルと名づけなさい。主があなたの苦しみを聞かれたのです。 彼は野ろばのような人となり、その手はすべての人に逆らい、すべての人の手は彼に逆らい、彼はすべての兄弟に敵して住むでしょう」。
神は息子の誕生を告げ、名を授けます。イシマエル、神は聞かれる、という意味です。この名は、神がハガルの苦しみを聞かれたことを思い起こさせます。
そこで、ハガルは自分に語られた主の名を呼んで、「あなたはエル・ロイです」と言った。彼女が「ここでも、わたしを見ていられるかたのうしろを拝めたのか」と言ったことによる。
ハガルは、聖書の中で神に名をつけた唯一の人です。わたしを見てくださる方、と。神は、社会が目を向けない人々を見ておられます。
この章に登場する人物
説教が語っていること
創世記16章についてよくある質問
サライはなぜハガルをアブラムに与えたのですか
サライは子を産めず、アブラムに与えられた息子の約束は十年も遅れていました。当時は、子のない妻が自分の女奴隷を夫に与え、その女奴隷によって跡取りを得ることが認められていました。本文は、この解決策を神の計画としては示していません。それは焦りから生まれ、対立と苦しみをもたらしました。
イシマエルという名前はどういう意味ですか
イシマエルは、神は聞かれる、という意味です。この名は、主がハガルの苦しみを聞かれたので、使いによってハガルに与えられました。彼はアブラムとハガルの子ですが、契約の約束は、のちにサラから生まれるイサクに託されます。それでも聖書は、神がイシマエルをも祝福されたことを記しています。
創世記16章のメッセージは何ですか
この章は、神の約束を自分の力で成し遂げようとすると、対立を招くことを示しています。また、神が、逃げ出した外国人の奴隷ハガルのような、忘れられた人々を見ておられることも示しています。神はハガルを見つけ、名前で呼び、約束と進むべき方向を与えました。神は、人間の過ちのただ中でも、変わらず心を向けていてくださいます。
創世記 16を引用している記事
口語訳(1955年)— パブリックドメイン。