聖書 — 口語訳 (1955)
マタイによる福音書 5
概要
マタイの福音書5章は、山上の説教の始まりです。イエスはまず八福を教え、天の御国に属する人々の姿を描きます。そして弟子たちに、あなたがたは地の塩、世の光だと語ります。続いて、律法を廃止するためではなく成就するために来たと説明し、怒り、姦淫、誓い、復讐といった律法の求めをさらに深めます。最後に、父に似た者となるために敵を愛するようにと招いて、章を閉じます。
この章の5つの区分
1イエスはこの群衆を見て、山に登り、座につかれると、弟子たちがみもとに近寄ってきた。
2そこで、イエスは口を開き、彼らに教えて言われた。
3「こころの貧しい人たちは、さいわいである、天国は彼らのものである。
4悲しんでいる人たちは、さいわいである、彼らは慰められるであろう。
5柔和な人たちは、さいわいである、彼らは地を受けつぐであろう。
6義に飢えかわいている人たちは、さいわいである、彼らは飽き足りるようになるであろう。
7あわれみ深い人たちは、さいわいである、彼らはあわれみを受けるであろう。
8心の清い人たちは、さいわいである、彼らは神を見るであろう。
9平和をつくり出す人たちは、さいわいである、彼らは神の子と呼ばれるであろう。
10義のために迫害されてきた人たちは、さいわいである、天国は彼らのものである。
11わたしのために人々があなたがたをののしり、また迫害し、あなたがたに対し偽って様々の悪口を言う時には、あなたがたは、さいわいである。
12喜び、よろこべ、天においてあなたがたの受ける報いは大きい。あなたがたより前の預言者たちも、同じように迫害されたのである。
13あなたがたは、地の塩である。もし塩のききめがなくなったら、何によってその味が取りもどされようか。もはや、なんの役にも立たず、ただ外に捨てられて、人々にふみつけられるだけである。
14あなたがたは、世の光である。山の上にある町は隠れることができない。
15また、あかりをつけて、それを枡の下におく者はいない。むしろ燭台の上において、家の中のすべてのものを照させるのである。
16そのように、あなたがたの光を人々の前に輝かし、そして、人々があなたがたのよいおこないを見て、天にいますあなたがたの父をあがめるようにしなさい。
17わたしが律法や預言者を廃するためにきた、と思ってはならない。廃するためではなく、成就するためにきたのである。
18よく言っておく。天地が滅び行くまでは、律法の一点、一画もすたることはなく、ことごとく全うされるのである。
19それだから、これらの最も小さいいましめの一つでも破り、またそうするように人に教えたりする者は、天国で最も小さい者と呼ばれるであろう。しかし、これをおこないまたそう教える者は、天国で大いなる者と呼ばれるであろう。
20わたしは言っておく。あなたがたの義が律法学者やパリサイ人の義にまさっていなければ、決して天国に、はいることはできない。
21昔の人々に『殺すな。殺す者は裁判を受けねばならない』と言われていたことは、あなたがたの聞いているところである。
22しかし、わたしはあなたがたに言う。兄弟に対して怒る者は、だれでも裁判を受けねばならない。兄弟にむかって愚か者と言う者は、議会に引きわたされるであろう。また、ばか者と言う者は、地獄の火に投げ込まれるであろう。
23だから、祭壇に供え物をささげようとする場合、兄弟が自分に対して何かうらみをいだいていることを、そこで思い出したなら、
24その供え物を祭壇の前に残しておき、まず行ってその兄弟と和解し、それから帰ってきて、供え物をささげることにしなさい。
25あなたを訴える者と一緒に道を行く時には、その途中で早く仲直りをしなさい。そうしないと、その訴える者はあなたを裁判官にわたし、裁判官は下役にわたし、そして、あなたは獄に入れられるであろう。
26よくあなたに言っておく。最後の一コドラントを支払ってしまうまでは、決してそこから出てくることはできない。
27『姦淫するな』と言われていたことは、あなたがたの聞いているところである。
28しかし、わたしはあなたがたに言う。だれでも、情欲をいだいて女を見る者は、心の中ですでに姦淫をしたのである。
29もしあなたの右の目が罪を犯させるなら、それを抜き出して捨てなさい。五体の一部を失っても、全身が地獄に投げ入れられない方が、あなたにとって益である。
30もしあなたの右の手が罪を犯させるなら、それを切って捨てなさい。五体の一部を失っても、全身が地獄に落ち込まない方が、あなたにとって益である。
31また『妻を出す者は離縁状を渡せ』と言われている。
32しかし、わたしはあなたがたに言う。だれでも、不品行以外の理由で自分の妻を出す者は、姦淫を行わせるのである。また出された女をめとる者も、姦淫を行うのである。
33また昔の人々に『いつわり誓うな、誓ったことは、すべて主に対して果せ』と言われていたことは、あなたがたの聞いているところである。
34しかし、わたしはあなたがたに言う。いっさい誓ってはならない。天をさして誓うな。そこは神の御座であるから。
35また地をさして誓うな。そこは神の足台であるから。またエルサレムをさして誓うな。それは『大王の都』であるから。
36また、自分の頭をさして誓うな。あなたは髪の毛一すじさえ、白くも黒くもすることができない。
37あなたがたの言葉は、ただ、しかり、しかり、否、否、であるべきだ。それ以上に出ることは、悪から来るのである。
38『目には目を、歯には歯を』と言われていたことは、あなたがたの聞いているところである。
39しかし、わたしはあなたがたに言う。悪人に手向かうな。もし、だれかがあなたの右の頬を打つなら、ほかの頬をも向けてやりなさい。
40あなたを訴えて、下着を取ろうとする者には、上着をも与えなさい。
41もし、だれかが、あなたをしいて一マイル行かせようとするなら、その人と共に二マイル行きなさい。
42求める者には与え、借りようとする者を断るな。
43『隣り人を愛し、敵を憎め』と言われていたことは、あなたがたの聞いているところである。
44しかし、わたしはあなたがたに言う。敵を愛し、迫害する者のために祈れ。
45こうして、天にいますあなたがたの父の子となるためである。天の父は、悪い者の上にも良い者の上にも、太陽をのぼらせ、正しい者にも正しくない者にも、雨を降らして下さるからである。
46あなたがたが自分を愛する者を愛したからとて、なんの報いがあろうか。そのようなことは取税人でもするではないか。
47兄弟だけにあいさつをしたからとて、なんのすぐれた事をしているだろうか。そのようなことは異邦人でもしているではないか。
48それだから、あなたがたの天の父が完全であられるように、あなたがたも完全な者となりなさい。
鍵となる聖句
「こころの貧しい人たちは、さいわいである、天国は彼らのものである。
最初の幸いは、神の前での自分の貧しさを認める人に宣言されます。天の御国は、自分で十分だと思う人ではなく、差し出すものを何も持たない人のものです。
あなたがたは、地の塩である。もし塩のききめがなくなったら、何によってその味が取りもどされようか。もはや、なんの役にも立たず、ただ外に捨てられて、人々にふみつけられるだけである。 あなたがたは、世の光である。山の上にある町は隠れることができない。
イエスは弟子たちに、あなたがたは地の塩、世の光だと言います。受け取った身分であり、隠れることなく、人々との関わりの中で生きるものです。
わたしは言っておく。あなたがたの義が律法学者やパリサイ人の義にまさっていなければ、決して天国に、はいることはできない。
イエスは、律法学者やパリサイ人にまさる義を求めます。規則を増やすことではなく、変えられた心を求めており、章の残りの部分がそれを示しています。
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説教が語っていること
マタイによる福音書5章についてよくある質問
マタイ5章の八福とは何ですか
イエスが山上の説教の冒頭で語られた八つの宣言で、3節から10節までです。11節と12節がそれに続きます。それぞれ、心の貧しい人、悲しむ人、柔和な人、義に飢えかわく人、あわれみ深い人、心のきよい人、平和をつくる人、迫害される人を、幸いな者と呼びます。どの宣言にも約束が結びついています。
あなたがたは地の塩であるとは、どういう意味ですか
イエスは弟子たちに、あなたがたは地の塩だと語ります。塩は味をつけ、腐敗を防ぎます。信じる人は、周りから離れることなく、自分のいる場所に良い影響を与えるよう召されています。イエスは、塩気を失った塩は役に立たないとも言います。受け取った身分は、生きられなければなりません。
イエスはマタイ5:17で律法を廃止するのですか
いいえ。イエスは、律法や預言者を廃止するためではなく、成就するために来たと語ります。そのうえで、怒りや情欲がすでに心に関わることを示して、律法の深い意味を明らかにします。この成就が戒めにどう当てはまるかについてキリスト者の理解は分かれますが、いずれもイエスを律法の中心に見ています。
敵を愛しなさいとは、どういう意味ですか
43節から48節で、イエスは報復の論理をひっくり返し、自分を憎む人を愛し、迫害する人のために祈るよう語ります。受けた悪をなかったことにしなさいと言っているのではありません。悪い者にも良い者にも太陽を昇らせてくださる父に倣うようにと、招いておられます。
マタイによる福音書 5を引用している記事
口語訳(1955年)— パブリックドメイン。