聖書 — 口語訳 (1955)

使徒行伝 16

概要

使徒行伝16章は、パウロの第二回宣教旅行を伝えます。御霊はいくつかの扉を閉ざし、やがて幻がマケドニヤへと招きます。ピリピでは、ルデヤが心と家を開きます。パウロが占いの霊につかれた女奴隷を解放したため、パウロとシラスは打たれて投獄されます。真夜中に二人は祈り、賛美し、地震が起こり、看守は救われるためにどうすべきかを尋ねます。彼は信じ、家族とともにバプテスマを受け、その後パウロはローマ市民権を明らかにします。

この章の6つの区分

  1. 1-5節テモテがパウロに加わり、諸教会が強められる
  2. 6-10節御霊の導き:閉ざされた扉、そしてマケドニヤの招き
  3. 11-15節ピリピ:ルデヤが心と家を開く
  4. 16-24節解放された女奴隷、打たれて投獄されるパウロとシラス
  5. 25-34節真夜中、賛美、地震、そして救われた看守
  6. 35-40節釈放と、パウロのローマ市民権

1それから、彼はデルベに行き、次にルステラに行った。そこにテモテという名の弟子がいた。信者のユダヤ婦人を母とし、ギリシヤ人を父としており、

2ルステラとイコニオムの兄弟たちの間で、評判のよい人物であった。

3パウロはこのテモテを連れて行きたかったので、その地方にいるユダヤ人の手前、まず彼に割礼を受けさせた。彼の父がギリシヤ人であることは、みんな知っていたからである。

4それから彼らは通る町々で、エルサレムの使徒たちや長老たちの取り決めた事項を守るようにと、人々にそれを渡した。

5こうして、諸教会はその信仰を強められ、日ごとに数を増していった。

6それから彼らは、アジヤで御言を語ることを聖霊に禁じられたので、フルギヤ・ガラテヤ地方をとおって行った。

7そして、ムシヤのあたりにきてから、ビテニヤに進んで行こうとしたところ、イエスの御霊がこれを許さなかった。

8それで、ムシヤを通過して、トロアスに下って行った。

9ここで夜、パウロは一つの幻を見た。ひとりのマケドニヤ人が立って、「マケドニヤに渡ってきて、わたしたちを助けて下さい」と、彼に懇願するのであった。

10パウロがこの幻を見た時、これは彼らに福音を伝えるために、神がわたしたちをお招きになったのだと確信して、わたしたちは、ただちにマケドニヤに渡って行くことにした。

11そこで、わたしたちはトロアスから船出して、サモトラケに直航し、翌日ネアポリスに着いた。

12そこからピリピへ行った。これはマケドニヤのこの地方第一の町で、植民都市であった。わたしたちは、この町に数日間滞在した。

13ある安息日に、わたしたちは町の門を出て、祈り場があると思って、川のほとりに行った。そして、そこにすわり、集まってきた婦人たちに話をした。

14ところが、テアテラ市の紫布の商人で、神を敬うルデヤという婦人が聞いていた。主は彼女の心を開いて、パウロの語ることに耳を傾けさせた。

15そして、この婦人もその家族も、共にバプテスマを受けたが、その時、彼女は「もし、わたしを主を信じる者とお思いでしたら、どうぞ、わたしの家にきて泊まって下さい」と懇望し、しいてわたしたちをつれて行った。

16ある時、わたしたちが、祈り場に行く途中、占いの霊につかれた女奴隷に出会った。彼女は占いをして、その主人たちに多くの利益を得させていた者である。

17この女が、パウロやわたしたちのあとを追ってきては、「この人たちは、いと高き神の僕たちで、あなたがたに救の道を伝えるかただ」と、叫び出すのであった。

18そして、そんなことを幾日間もつづけていた。パウロは困りはてて、その霊にむかい「イエス・キリストの名によって命じる。その女から出て行け」と言った。すると、その瞬間に霊が女から出て行った。

19彼女の主人たちは、自分らの利益を得る望みが絶えたのを見て、パウロとシラスとを捕え、役人に引き渡すため広場に引きずって行った。

20それから、ふたりを長官たちの前に引き出して訴えた、「この人たちはユダヤ人でありまして、わたしたちの町をかき乱し、

21わたしたちローマ人が、採用も実行もしてはならない風習を宣伝しているのです」。

22群衆もいっせいに立って、ふたりを責めたてたので、長官たちはふたりの上着をはぎ取り、むちで打つことを命じた。

23それで、ふたりに何度もむちを加えさせたのち、獄に入れ、獄吏にしっかり番をするようにと命じた。

24獄吏はこの厳命を受けたので、ふたりを奥の獄屋に入れ、その足に足かせをしっかりとかけておいた。

25真夜中ごろ、パウロとシラスとは、神に祈り、さんびを歌いつづけたが、囚人たちは耳をすまして聞きいっていた。

26ところが突然、大地震が起って、獄の土台が揺れ動き、戸は全部たちまち開いて、みんなの者の鎖が解けてしまった。

27獄吏は目をさまし、獄の戸が開いてしまっているのを見て、囚人たちが逃げ出したものと思い、つるぎを抜いて自殺しかけた。

28そこでパウロは大声をあげて言った、「自害してはいけない。われわれは皆ひとり残らず、ここにいる」。

29すると、獄吏は、あかりを手に入れた上、獄に駆け込んできて、おののきながらパウロとシラスの前にひれ伏した。

30それから、ふたりを外に連れ出して言った、「先生がた、わたしは救われるために、何をすべきでしょうか」。

31ふたりが言った、「主イエスを信じなさい。そうしたら、あなたもあなたの家族も救われます」。

32それから、彼とその家族一同とに、神の言を語って聞かせた。

33彼は真夜中にもかかわらず、ふたりを引き取って、その打ち傷を洗ってやった。そして、その場で自分も家族も、ひとり残らずバプテスマを受け、

34さらに、ふたりを自分の家に案内して食事のもてなしをし、神を信じる者となったことを、全家族と共に心から喜んだ。

35夜が明けると、長官たちは警吏らをつかわして、「あの人たちを釈放せよ」と言わせた。

36そこで、獄吏はこの言葉をパウロに伝えて言った、「長官たちが、あなたがたを釈放させるようにと、使をよこしました。さあ、出てきて、無事にお帰りなさい」。

37ところが、パウロは警吏らに言った、「彼らは、ローマ人であるわれわれを、裁判にかけもせずに、公衆の前でむち打ったあげく、獄に入れてしまった。しかるに今になって、ひそかに、われわれを出そうとするのか。それは、いけない。彼ら自身がここにきて、われわれを連れ出すべきである」。

38警吏らはこの言葉を長官たちに報告した。すると長官たちは、ふたりがローマ人だと聞いて恐れ、

39自分でやってきてわびた上、ふたりを獄から連れ出し、町から立ち去るようにと頼んだ。

40ふたりは獄を出て、ルデヤの家に行った。そして、兄弟たちに会って勧めをなし、それから出かけた。

鍵となる聖句

9-10節
ここで夜、パウロは一つの幻を見た。ひとりのマケドニヤ人が立って、「マケドニヤに渡ってきて、わたしたちを助けて下さい」と、彼に懇願するのであった。 パウロがこの幻を見た時、これは彼らに福音を伝えるために、神がわたしたちをお招きになったのだと確信して、わたしたちは、ただちにマケドニヤに渡って行くことにした。

閉ざされた扉のあと、神は幻によって方向を開かれます。10節の「わたしたち」は、著者ルカが一行に加わったことを示唆しています。この箇所は、受けた召し、その確認、そしてすぐに続く行動を示しています。

14節
ところが、テアテラ市の紫布の商人で、神を敬うルデヤという婦人が聞いていた。主は彼女の心を開いて、パウロの語ることに耳を傾けさせた。

ルデヤは耳を傾けます。そして本文は、主が彼女の心を開かれたと明記します。信仰は聞いたことばから生まれ、心を傾けさせてくださるのは神です。

25節
真夜中ごろ、パウロとシラスとは、神に祈り、さんびを歌いつづけたが、囚人たちは耳をすまして聞きいっていた。

打たれ、鎖につながれ、牢の奥で、パウロとシラスは祈り、賛美します。ほかの囚人たちがそれを聞きます。何かが変わる前から、賛美が証しとなっています。

30-31節
それから、ふたりを外に連れ出して言った、「先生がた、わたしは救われるために、何をすべきでしょうか」。 ふたりが言った、「主イエスを信じなさい。そうしたら、あなたもあなたの家族も救われます」。

看守の問いと使徒たちの答えは、福音を一言にまとめています。主イエスを信じること。救いは信じる者に差し出され、その約束は、家族もまた聞いて信じるなら、家族にも及びます。

この章に登場する人物

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説教が語っていること

使徒行伝16章についてよくある質問

「主イエスを信じなさい。そうしたら、あなたもあなたの家族も救われます」とはどういう意味ですか

パウロとシラスは、救われるために何をすべきかを尋ねる看守に答えます。条件は、イエスを信じることです。約束は彼と家族に及びます。本文は、看守の家のすべての人々にみことばが語られ、彼らがバプテスマを受けたと続けているからです。ですから、一人ひとりが自分で信じるよう招かれており、父の信仰が家族の信仰の代わりになるわけではありません。

なぜパウロとシラスは使徒行伝16章で獄中で歌っているのですか

二人は打たれ、鎖につながれていましたが、真夜中に祈り、歌います。賛美は状況に左右されません。囚人たちがそれを聞き、続く地震が看守を信仰へと導きます。この物語は、賛美がいつも扉を開くとは約束していません。神が暗い時にも働かれることを示しています。

なぜ御霊はパウロがアジヤやビテニヤに行くのを禁じたのですか

本文は理由を述べず、御霊がこれらの扉を閉ざされたとだけ語ります。それはトロアスでのマケドニヤの招きに備えるものでした。多くの人は、神の導きが、はっきりした方向を示される前に、まず拒む形をとる例だと見ています。

使徒行伝16章のルデヤとはだれですか

ルデヤはテアテラ市の紫布の商人で、すでに神を敬っていた人です。ピリピで、川のほとりでパウロの話を聞き、主が彼女の心を開かれ、彼女は家族とともにバプテスマを受け、宣教者たちを自分の家に迎えます。この物語では、ヨーロッパで最初の回心者としてよく紹介されます。

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口語訳(1955年)— パブリックドメイン。