聖書 — 口語訳 (1955)

使徒行伝 15

概要

使徒行伝15章は、教会が初めて経験した大きな教理上の危機を語ります。ユダヤから来た人々が、異邦人は割礼を受けなければ救われないと主張します。パウロとバルナバはエルサレムに上り、使徒たちと長老たちが集まります。ペテロは、神が異邦人にも区別なく御霊を与えられたこと、すべての人が恵みによって救われることを思い起こさせます。ヤコブは、不必要な重荷を負わせないことを提案し、アンテオケへ手紙が送られます。章は、マルコをめぐるパウロとバルナバの意見の対立で終わります。

この章の5つの区分

  1. 1-5節論争:異邦人に割礼を施すべきか
  2. 6-11節エルサレムの集まりとペテロの証し:恵みによって救われる
  3. 12-21節バルナバ、パウロ、ヤコブ:異邦人を尊重する決定
  4. 22-35節アンテオケの兄弟たちへの手紙と、喜びをもっての受け入れ
  5. 36-41節パウロとバルナバの意見の対立と、二つのチームの出発

1さて、ある人たちがユダヤから下ってきて、兄弟たちに「あなたがたも、モーセの慣例にしたがって割礼を受けなければ、救われない」と、説いていた。

2そこで、パウロやバルナバと彼らとの間に、少なからぬ紛糾と争論とが生じたので、パウロ、バルナバそのほか数人の者がエルサレムに上り、使徒たちや長老たちと、この問題について協議することになった。

3彼らは教会の人々に見送られ、ピニケ、サマリヤをとおって、道すがら、異邦人たちの改宗の模様をくわしく説明し、すべての兄弟たちを大いに喜ばせた。

4エルサレムに着くと、彼らは教会と使徒たち、長老たちに迎えられて、神が彼らと共にいてなされたことを、ことごとく報告した。

5ところが、パリサイ派から信仰にはいってきた人たちが立って、「異邦人にも割礼を施し、またモーセの律法を守らせるべきである」と主張した。

6そこで、使徒たちや長老たちが、この問題について審議するために集まった。

7激しい争論があった後、ペテロが立って言った、「兄弟たちよ、ご承知のとおり、異邦人がわたしの口から福音の言葉を聞いて信じるようにと、神は初めのころに、諸君の中からわたしをお選びになったのである。

8そして、人の心をご存じである神は、聖霊をわれわれに賜わったと同様に彼らにも賜わって、彼らに対してあかしをなし、

9また、その信仰によって彼らの心をきよめ、われわれと彼らとの間に、なんの分けへだてもなさらなかった。

10しかるに、諸君はなぜ、今われわれの先祖もわれわれ自身も、負いきれなかったくびきをあの弟子たちの首にかけて、神を試みるのか。

11確かに、主イエスのめぐみによって、われわれは救われるのだと信じるが、彼らとても同様である」。

12すると、全会衆は黙ってしまった。それから、バルナバとパウロとが、彼らをとおして異邦人の間に神が行われた数々のしるしと奇跡のことを、説明するのを聞いた。

13ふたりが語り終えた後、ヤコブはそれに応じて述べた、「兄弟たちよ、わたしの意見を聞いていただきたい。

14神が初めに異邦人たちを顧みて、その中から御名を負う民を選び出された次第は、シメオンがすでに説明した。

15預言者たちの言葉も、それと一致している。すなわち、こう書いてある、

16『その後、わたしは帰ってきて、倒れたダビデの幕屋を建てかえ、くずれた箇所を修理し、それを立て直そう。

17残っている人々も、わたしの名を唱えているすべての異邦人も、主を尋ね求めるようになるためである。

18世の初めからこれらの事を知らせておられる主が、こう仰せになった』。

19そこで、わたしの意見では、異邦人の中から神に帰依している人たちに、わずらいをかけてはいけない。

20ただ、偶像に供えて汚れた物と、不品行と、絞め殺したものと、血とを、避けるようにと、彼らに書き送ることにしたい。

21古い時代から、どの町にもモーセの律法を宣べ伝える者がいて、安息日ごとにそれを諸会堂で朗読するならわしであるから」。

22そこで、使徒たちや長老たちは、全教会と協議した末、お互の中から人々を選んで、パウロやバルナバと共に、アンテオケに派遣することに決めた。選ばれたのは、バルサバというユダとシラスとであったが、いずれも兄弟たちの間で重んじられていた人たちであった。

23この人たちに託された書面はこうである。「あなたがたの兄弟である使徒および長老たちから、アンテオケ、シリヤ、キリキヤにいる異邦人の兄弟がたに、あいさつを送る。

24こちらから行ったある者たちが、わたしたちからの指示もないのに、いろいろなことを言って、あなたがたを騒がせ、あなたがたの心を乱したと伝え聞いた。

25そこで、わたしたちは人々を選んで、愛するバルナバおよびパウロと共に、あなたがたのもとに派遣することに、衆議一決した。

26このふたりは、われらの主イエス・キリストの名のために、その命を投げ出した人々であるが、

27彼らと共に、ユダとシラスとを派遣する次第である。この人たちは、あなたがたに、同じ趣旨のことを、口頭でも伝えるであろう。

28すなわち、聖霊とわたしたちとは、次の必要事項のほかは、どんな負担をも、あなたがたに負わせないことに決めた。

29それは、偶像に供えたものと、血と、絞め殺したものと、不品行とを、避けるということである。これらのものから遠ざかっておれば、それでよろしい。以上」。

30さて、一行は人々に見送られて、アンテオケに下って行き、会衆を集めて、その書面を手渡した。

31人々はそれを読んで、その勧めの言葉をよろこんだ。

32ユダとシラスとは共に預言者であったので、多くの言葉をもって兄弟たちを励まし、また力づけた。

33ふたりは、しばらくの時を、そこで過ごした後、兄弟たちから、旅の平安を祈られて、見送りを受け、自分らを派遣した人々のところに帰って行った。

34〔しかし、シラスだけは、引きつづきとどまることにした。〕

35パウロとバルナバとはアンテオケに滞在をつづけて、ほかの多くの人たちと共に、主の言葉を教えかつ宣べ伝えた。

36幾日かの後、パウロはバルナバに言った、「さあ、前に主の言葉を伝えたすべての町々にいる兄弟たちを、また訪問して、みんながどうしているかを見てこようではないか」。

37そこで、バルナバはマルコというヨハネも一緒に連れて行くつもりでいた。

38しかし、パウロは、前にパンフリヤで一行から離れて、働きを共にしなかったような者は、連れて行かないがよいと考えた。

39こうして激論が起り、その結果ふたりは互に別れ別れになり、バルナバはマルコを連れてクプロに渡って行き、

40パウロはシラスを選び、兄弟たちから主の恵みにゆだねられて、出発した。

41そしてパウロは、シリヤ、キリキヤの地方をとおって、諸教会を力づけた。

鍵となる聖句

8-9節
そして、人の心をご存じである神は、聖霊をわれわれに賜わったと同様に彼らにも賜わって、彼らに対してあかしをなし、 また、その信仰によって彼らの心をきよめ、われわれと彼らとの間に、なんの分けへだてもなさらなかった。

ペテロは、神は人の心をご存じであり、ユダヤ人にも異邦人にも聖霊を与えられたことを思い起こさせます。神は何の差別もなさらず、信仰によって彼らの心を清められました。

11節
確かに、主イエスのめぐみによって、われわれは救われるのだと信じるが、彼らとても同様である」。

この章の神学の頂点です。「主イエスのめぐみによって、われわれは救われるのだと信じる」。ユダヤ人も異邦人も、同じ方法で、主イエスの恵みによって救われます。信仰に何かの守るべき事柄が加えられることはありません。

19-20節
そこで、わたしの意見では、異邦人の中から神に帰依している人たちに、わずらいをかけてはいけない。 ただ、偶像に供えて汚れた物と、不品行と、絞め殺したものと、血とを、避けるようにと、彼らに書き送ることにしたい。

ヤコブは、回心した異邦人に困難を課さないよう提案しつつ、偶像礼拝と不品行に結びつく数点の習わしを避けるよう求めます。これらの求めの意味するところについては、読み方が分かれます。

28節
すなわち、聖霊とわたしたちとは、次の必要事項のほかは、どんな負担をも、あなたがたに負わせないことに決めた。

手紙は、「聖霊とわたしたちとは」決めたと述べます。教会は御霊の導きのもと、ともに見分け、必要なことだけを求めています。

39節
こうして激論が起り、その結果ふたりは互に別れ別れになり、バルナバはマルコを連れてクプロに渡って行き、

パウロとバルナバは、マルコをめぐる激しい意見の対立のために別れます。本文は、神に仕える二人のこの対立を隠さず、二つのチームが宣教に出て行きます。

この章に登場する人物

説教が語っていること

摩擦の中で成長する ― 対立が教会を鍛えるときアンテオケでの対立は、生きている共同体にはぶつかり合いがあることを示しています。パウロとバルナバは逃げず、問題をエルサレムに持っていき、そこで指導者たちが集まって事を吟味します。要約を読む →みこころがなりますように:明け渡すことを学ぶ主の祈りの中で、兄弟の交わりは見分ける力を磨きます。使徒行伝15章では、ペテロが使徒たちの前で語り、神がある人に示されたことが、他の人に示されたことを補い合います。要約を読む →古代教会会議の歴史:神学と政治の間でグザビエ・ルヴィエは、使徒行伝15章から公会議の歴史をたどります。エルサレムの集まりは、まだ正式な意味での公会議ではありませんが、のちに先例として読み直されることになったと述べます。要約を読む →その自由、兄弟を傷つけていませんかエルサレム会議は、偶像に献げた肉についてのコリント人への第一の手紙8章の背景として思い起こされます。そこでは、クリスチャンの自由、良心、そして愛が語られています。要約を読む →聖書に親しむ:日々与えられる三つの恵み36節から40節は、パウロのもとを離れたが、のちに回復されたヨハネ、別名マルコについて引かれます。神が人を立ち上がらせてくださる一つの例です。要約を読む →

使徒行伝15章についてよくある質問

エルサレム会議とは何ですか(使徒行伝15章)。

ひとつの問いに決着をつけるために、使徒たちと長老たちがエルサレムに集まった会議です。イエスを信じる異邦人は、割礼を受け、モーセの律法に従わなければならないのか。ペテロ、パウロ、バルナバ、ヤコブの証しのあと、集まりは、彼らにこのくびきを負わせないと結論し、手紙を送ります。

使徒行伝15章11節の「主イエスのめぐみによって、われわれは救われる」とはどういう意味ですか。

ペテロは、ユダヤ人も異邦人も、律法を守ることではなく、恵みによって、同じ方法で救われると述べています。割礼は信仰に付け加えられるものではありません。救いは、信仰によって受ける神の賜物であることを、最も明確に示す箇所の一つです。

なぜ手紙は、血と絞め殺したものを避けるよう求めているのですか。

本文は、異邦人に、偶像に供えたものの汚れ、不品行、絞め殺したもの、血を避けるよう求めています。読み方はさまざまです。ユダヤ人が多くいる混成の教会でその感覚を尊重するため、あるいは異教の礼拝に結びつく習わしを退けるため、という理解があります。今日の適用については、すべての教会が一致しているわけではありません。

なぜパウロとバルナバは、使徒行伝15章の終わりで別れるのですか。

バルナバはヨハネ、別名マルコを連れて行きたいと考えましたが、パウロは、マルコがパンフリヤで自分たちを離れたことを理由に反対します。意見の対立は激しく、二人は別れます。バルナバはマルコとともにキプロスへ、パウロはシラスを選びます。この物語は、指導者同士の対立があっても、神がみわざを進められることを示しています。

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