聖書 — 口語訳 (1955)
マルコによる福音書 15
概要
宗教指導者たちはイエスをピラトに引き渡し、ピラトは群衆に押されてバラバをゆるします。兵卒たちはイエスを偽りの王としてあざけり、イエスは「ユダヤ人の王」と記された罪状書きの下に十字架につけられます。全地が暗くなり、イエスは「わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか」と叫んで息を引き取られます。神殿の幕が裂け、ローマの百卒長は神の子であったと認め、アリマタヤのヨセフが遺体を墓に納めます。
この章の6つの区分
1夜が明けるとすぐ、祭司長たちは長老、律法学者たち、および全議会と協議をこらした末、イエスを縛って引き出し、ピラトに渡した。
2ピラトはイエスに尋ねた、「あなたがユダヤ人の王であるか」。イエスは、「そのとおりである」とお答えになった。
3そこで祭司長たちは、イエスのことをいろいろと訴えた。
4ピラトはもう一度イエスに尋ねた、「何も答えないのか。見よ、あなたに対してあんなにまで次々に訴えているではないか」。
5しかし、イエスはピラトが不思議に思うほどに、もう何もお答えにならなかった。
6さて、祭のたびごとに、ピラトは人々が願い出る囚人ひとりを、ゆるしてやることにしていた。
7ここに、暴動を起し人殺しをしてつながれていた暴徒の中に、バラバという者がいた。
8群衆が押しかけてきて、いつものとおりにしてほしいと要求しはじめたので、
9ピラトは彼らにむかって、「おまえたちはユダヤ人の王をゆるしてもらいたいのか」と言った。
10それは、祭司長たちがイエスを引きわたしたのは、ねたみのためであることが、ピラトにわかっていたからである。
11しかし祭司長たちは、バラバの方をゆるしてもらうように、群衆を煽動した。
12そこでピラトはまた彼らに言った、「それでは、おまえたちがユダヤ人の王と呼んでいるあの人は、どうしたらよいか」。
13彼らは、また叫んだ、「十字架につけよ」。
14ピラトは言った、「あの人は、いったい、どんな悪事をしたのか」。すると、彼らは一そう激しく叫んで、「十字架につけよ」と言った。
15それで、ピラトは群衆を満足させようと思って、バラバをゆるしてやり、イエスをむち打ったのち、十字架につけるために引きわたした。
16兵士たちはイエスを、邸宅、すなわち総督官邸の内に連れて行き、全部隊を呼び集めた。
17そしてイエスに紫の衣を着せ、いばらの冠を編んでかぶらせ、
18「ユダヤ人の王、ばんざい」と言って敬礼をしはじめた。
19また、葦の棒でその頭をたたき、つばきをかけ、ひざまずいて拝んだりした。
20こうして、イエスを嘲弄したあげく、紫の衣をはぎとり、元の上着を着せた。それから、彼らはイエスを十字架につけるために引き出した。
21そこへ、アレキサンデルとルポスとの父シモンというクレネ人が、郊外からきて通りかかったので、人々はイエスの十字架を無理に負わせた。
22そしてイエスをゴルゴタ、その意味は、されこうべ、という所に連れて行った。
23そしてイエスに、没薬をまぜたぶどう酒をさし出したが、お受けにならなかった。
24それから、イエスを十字架につけた。そしてくじを引いて、だれが何を取るかを定めたうえ、イエスの着物を分けた。
25イエスを十字架につけたのは、朝の九時ごろであった。
26イエスの罪状書きには「ユダヤ人の王」と、しるしてあった。
27また、イエスと共にふたりの強盗を、ひとりを右に、ひとりを左に、十字架につけた。
28〔こうして「彼は罪人たちのひとりに数えられた」と書いてある言葉が成就したのである。〕
29そこを通りかかった者たちは、頭を振りながら、イエスをののしって言った、「ああ、神殿を打ちこわして三日のうちに建てる者よ、
30十字架からおりてきて自分を救え」。
31祭司長たちも同じように、律法学者たちと一緒になって、かわるがわる嘲弄して言った、「他人を救ったが、自分自身を救うことができない。
32イスラエルの王キリスト、いま十字架からおりてみるがよい。それを見たら信じよう」。また、一緒に十字架につけられた者たちも、イエスをののしった。
33昼の十二時になると、全地は暗くなって、三時に及んだ。
34そして三時に、イエスは大声で、「エロイ、エロイ、ラマ、サバクタニ」と叫ばれた。それは「わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか」という意味である。
35すると、そばに立っていたある人々が、これを聞いて言った、「そら、エリヤを呼んでいる」。
36ひとりの人が走って行き、海綿に酢いぶどう酒を含ませて葦の棒につけ、イエスに飲ませようとして言った、「待て、エリヤが彼をおろしに来るかどうか、見ていよう」。
37イエスは声高く叫んで、ついに息をひきとられた。
38そのとき、神殿の幕が上から下まで真二つに裂けた。
39イエスにむかって立っていた百卒長は、このようにして息をひきとられたのを見て言った、「まことに、この人は神の子であった」。
40また、遠くの方から見ている女たちもいた。その中には、マグダラのマリヤ、小ヤコブとヨセとの母マリヤ、またサロメがいた。
41彼らはイエスがガリラヤにおられたとき、そのあとに従って仕えた女たちであった。なおそのほか、イエスと共にエルサレムに上ってきた多くの女たちもいた。
42さて、すでに夕がたになったが、その日は準備の日、すなわち安息日の前日であったので、
43アリマタヤのヨセフが大胆にもピラトの所へ行き、イエスのからだの引取りかたを願った。彼は地位の高い議員であって、彼自身、神の国を待ち望んでいる人であった。
44ピラトは、イエスがもはや死んでしまったのかと不審に思い、百卒長を呼んで、もう死んだのかと尋ねた。
45そして、百卒長から確かめた上、死体をヨセフに渡した。
46そこで、ヨセフは亜麻布を買い求め、イエスをとりおろして、その亜麻布に包み、岩を掘って造った墓に納め、墓の入口に石をころがしておいた。
47マグダラのマリヤとヨセの母マリヤとは、イエスが納められた場所を見とどけた。
鍵となる聖句
しかし、イエスはピラトが不思議に思うほどに、もう何もお答えにならなかった。
イエスは訴えにもう何もお答えにならず、ピラトは驚きます。多くの説教者は、そこに敗北ではなく、イザヤ書53章で告げられた小羊の沈黙の成就を見ます。
それで、ピラトは群衆を満足させようと思って、バラバをゆるしてやり、イエスをむち打ったのち、十字架につけるために引きわたした。
ピラトは群衆を満足させようとしてバラバをゆるし、イエスを引き渡します。本文は身代わりの場面を描いています。罪ある者は放たれ、罪のない者は罪に定められます。
そして三時に、イエスは大声で、「エロイ、エロイ、ラマ、サバクタニ」と叫ばれた。それは「わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか」という意味である。
イエスは詩篇22篇の冒頭をアラム語で引用されます。感じておられる見捨てられた思いを表しており、この引用は、神への信頼で終わる詩篇を指し示しています。
そのとき、神殿の幕が上から下まで真二つに裂けた。 イエスにむかって立っていた百卒長は、このようにして息をひきとられたのを見て言った、「まことに、この人は神の子であった」。
神殿の幕が上から下まで裂け、外国人であるローマの百卒長が、この人は神の子であったと言います。多くの人が、そこに神への道がすべての人に開かれたしるしを見ます。
この章に登場する人物
説教が語っていること
マルコによる福音書15章についてよくある質問
なぜ群衆はイエスではなくバラバを選んだのですか
マルコは、ピラトが、祭司長たちがねたみからイエスを引き渡したことを知っていたこと、また祭司長たちが群衆をそそのかしてバラバを要求させたことを記しています。バラバは暴動に加わった殺人者でした。本文は、この選択がイエスに対する証拠の不足よりも、扇動と集団の圧力から生まれたことを強調しています。
マルコ15章34節の「わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか」はどういう意味ですか
イエスは詩篇22篇をアラム語で引用されます。多くのクリスチャンは、そこに、人々の罪を負われたイエスの現実の苦しみの表れと、この瞬間が聖書に告げられていたしるしを見ます。見捨てられたことの正確な意味については注解者の間で議論がありますが、単なる絶望ではないという点では一致しています。
なぜ神殿の幕は裂けたのですか
マルコは、幕が裂けたのをイエスの死の瞬間に、上から下へと置いています。幕は至聖所をほかの神殿から隔てていました。多くのクリスチャンは、そこに、十字架によって神への道がすべての人に開かれたしるしを見ます。神殿へのさばきのしるしと読む人もいます。マルコ自身は説明していません。
なぜ百卒長は、イエスを神の子であったと言ったのですか
百卒長はローマの兵士で、十字架を間近に見た証人です。マルコは、イエスがこのように息を引き取られたのを見て、まことにこの人は神の子であったと言ったと記します。この福音書で、イエスの死後、これほどはっきりとイエスを告白した最初の人間であり、しかもイスラエルの民ではない外国人です。
マルコによる福音書 15を引用している記事
口語訳(1955年)— パブリックドメイン。