聖書 — 口語訳 (1955)

ルカによる福音書 8

概要

ルカ8章は、イエスの教えと働きを続けて描きます。まずイエスに従い、仕える女性たちが登場し、次に種まきのたとえが語られます。種は神のみことばで、土地は私たちの心です。続く四つの場面は、イエスの権威を示します。湖の嵐が静まり、ゲラサの人が悪霊から解放され、十二年間病んだ女がいやされ、ヤイロの娘が起き上がります。この章は、みことばをよく聞くこと、そして恐れの中でイエスに信頼することへと私たちを招いています。

この章の5つの区分

  1. 1-3節イエスは神の国を宣べ伝え、女性たちが従って仕える
  2. 4-18節種まきのたとえと、聞き方の大切さ
  3. 19-25節イエスの本当の家族、そして嵐が静まる
  4. 26-39節ゲラサで解放された人、神のなさったことを語るために遣わされる
  5. 40-56節いやされた女と、起き上がらされたヤイロの娘

1そののちイエスは、神の国の福音を説きまた伝えながら、町々村々を巡回し続けられたが、十二弟子もお供をした。

2また悪霊を追い出され病気をいやされた数名の婦人たち、すなわち、七つの悪霊を追い出してもらったマグダラと呼ばれるマリヤ、

3ヘロデの家令クーザの妻ヨハンナ、スザンナ、そのほか多くの婦人たちも一緒にいて、自分たちの持ち物をもって一行に奉仕した。

4さて、大ぜいの群衆が集まり、その上、町々からの人たちがイエスのところに、ぞくぞくと押し寄せてきたので、一つの譬で話をされた、

5「種まきが種をまきに出て行った。まいているうちに、ある種は道ばたに落ち、踏みつけられ、そして空の鳥に食べられてしまった。

6ほかの種は岩の上に落ち、はえはしたが水気がないので枯れてしまった。

7ほかの種は、いばらの間に落ちたので、いばらも一緒に茂ってきて、それをふさいでしまった。

8ところが、ほかの種は良い地に落ちたので、はえ育って百倍もの実を結んだ」。こう語られたのち、声をあげて「聞く耳のある者は聞くがよい」と言われた。

9弟子たちは、この譬はどういう意味でしょうか、とイエスに質問した。

10そこで言われた、「あなたがたには、神の国の奥義を知ることが許されているが、ほかの人たちには、見ても見えず、聞いても悟られないために、譬で話すのである。

11この譬はこういう意味である。種は神の言である。

12道ばたに落ちたのは、聞いたのち、信じることも救われることもないように、悪魔によってその心から御言が奪い取られる人たちのことである。

13岩の上に落ちたのは、御言を聞いた時には喜んで受けいれるが、根が無いので、しばらくは信じていても、試錬の時が来ると、信仰を捨てる人たちのことである。

14いばらの中に落ちたのは、聞いてから日を過ごすうちに、生活の心づかいや富や快楽にふさがれて、実の熟するまでにならない人たちのことである。

15良い地に落ちたのは、御言を聞いたのち、これを正しい良い心でしっかりと守り、耐え忍んで実を結ぶに至る人たちのことである。

16だれもあかりをともして、それを何かの器でおおいかぶせたり、寝台の下に置いたりはしない。燭台の上に置いて、はいって来る人たちに光が見えるようにするのである。

17隠されているもので、あらわにならないものはなく、秘密にされているもので、ついには知られ、明るみに出されないものはない。

18だから、どう聞くかに注意するがよい。持っている人は更に与えられ、持っていない人は、持っていると思っているものまでも、取り上げられるであろう」。

19さて、イエスの母と兄弟たちとがイエスのところにきたが、群衆のためそば近くに行くことができなかった。

20それで、だれかが「あなたの母上と兄弟がたが、お目にかかろうと思って、外に立っておられます」と取次いだ。

21するとイエスは人々にむかって言われた、「神の御言を聞いて行う者こそ、わたしの母、わたしの兄弟なのである」。

22ある日のこと、イエスは弟子たちと舟に乗り込み、「湖の向こう岸へ渡ろう」と言われたので、一同が船出した。

23渡って行く間に、イエスは眠ってしまわれた。すると突風が湖に吹きおろしてきたので、彼らは水をかぶって危険になった。

24そこで、みそばに寄ってきてイエスを起し、「先生、先生、わたしたちは死にそうです」と言った。イエスは起き上がって、風と荒浪とをおしかりになると、止んでなぎになった。

25イエスは彼らに言われた、「あなたがたの信仰は、どこにあるのか」。彼らは恐れ驚いて互に言い合った、「いったい、このかたはだれだろう。お命じになると、風も水も従うとは」。

26それから、彼らはガリラヤの対岸、ゲラサ人の地に渡った。

27陸にあがられると、その町の人で、悪霊につかれて長いあいだ着物も着ず、家に居つかないで墓場にばかりいた人に、出会われた。

28この人がイエスを見て叫び出し、みまえにひれ伏して大声で言った、「いと高き神の子イエスよ、あなたはわたしとなんの係わりがあるのです。お願いです、わたしを苦しめないでください」。

29それは、イエスが汚れた霊に、その人から出て行け、とお命じになったからである。というのは、悪霊が何度も彼をひき捕えたので、彼は鎖と足かせとでつながれて看視されていたが、それを断ち切っては悪霊によって荒野へ追いやられていたのである。

30イエスは彼に「なんという名前か」とお尋ねになると、「レギオンと言います」と答えた。彼の中にたくさんの悪霊がはいり込んでいたからである。

31悪霊どもは、底知れぬ所に落ちて行くことを自分たちにお命じにならぬようにと、イエスに願いつづけた。

32ところが、そこの山ベにおびただしい豚の群れが飼ってあったので、その豚の中へはいることを許していただきたいと、悪霊どもが願い出た。イエスはそれをお許しになった。

33そこで悪霊どもは、その人から出て豚の中へはいり込んだ。するとその群れは、がけから湖へなだれを打って駆け下り、おぼれ死んでしまった。

34飼う者たちは、この出来事を見て逃げ出して、町や村里にふれまわった。

35人々はこの出来事を見に出てきた。そして、イエスのところにきて、悪霊を追い出してもらった人が着物を着て、正気になってイエスの足もとにすわっているのを見て、恐れた。

36それを見た人たちは、この悪霊につかれていた者が救われた次第を、彼らに語り聞かせた。

37それから、ゲラサの地方の民衆はこぞって、自分たちの所から立ち去ってくださるようにとイエスに頼んだ。彼らが非常な恐怖に襲われていたからである。そこで、イエスは舟に乗って帰りかけられた。

38悪霊を追い出してもらった人は、お供をしたいと、しきりに願ったが、イエスはこう言って彼をお帰しになった。

39「家へ帰って、神があなたにどんなに大きなことをしてくださったか、語り聞かせなさい」。そこで彼は立ち去って、自分にイエスがして下さったことを、ことごとく町中に言いひろめた。

40イエスが帰ってこられると、群衆は喜び迎えた。みんながイエスを待ちうけていたのである。

41するとそこに、ヤイロという名の人がきた。この人は会堂司であった。イエスの足もとにひれ伏して、自分の家においでくださるようにと、しきりに願った。

42彼に十二歳ばかりになるひとり娘があったが、死にかけていた。ところが、イエスが出て行かれる途中、群衆が押し迫ってきた。

43ここに、十二年間も長血をわずらっていて、医者のために自分の身代をみな使い果してしまったが、だれにもなおしてもらえなかった女がいた。

44この女がうしろから近寄ってみ衣のふさにさわったところ、その長血がたちまち止まってしまった。

45イエスは言われた、「わたしにさわったのは、だれか」。人々はみな自分ではないと言ったので、ペテロが「先生、群衆があなたを取り囲んで、ひしめき合っているのです」と答えた。

46しかしイエスは言われた、「だれかがわたしにさわった。力がわたしから出て行ったのを感じたのだ」。

47女は隠しきれないのを知って、震えながら進み出て、みまえにひれ伏し、イエスにさわった訳と、さわるとたちまちなおったこととを、みんなの前で話した。

48そこでイエスが女に言われた、「娘よ、あなたの信仰があなたを救ったのです。安心して行きなさい」。

49イエスがまだ話しておられるうちに、会堂司の家から人がきて、「お嬢さんはなくなられました。この上、先生を煩わすには及びません」と言った。

50しかしイエスはこれを聞いて会堂司にむかって言われた、「恐れることはない。ただ信じなさい。娘は助かるのだ」。

51それから家にはいられるとき、ペテロ、ヨハネ、ヤコブおよびその子の父母のほかは、だれも一緒にはいって来ることをお許しにならなかった。

52人々はみな、娘のために泣き悲しんでいた。イエスは言われた、「泣くな、娘は死んだのではない。眠っているだけである」。

53人々は娘が死んだことを知っていたので、イエスをあざ笑った。

54イエスは娘の手を取って、呼びかけて言われた、「娘よ、起きなさい」。

55するとその霊がもどってきて、娘は即座に立ち上がった。イエスは何か食べ物を与えるように、さしずをされた。

56両親は驚いてしまった。イエスはこの出来事をだれにも話さないようにと、彼らに命じられた。

鍵となる聖句

11節
この譬はこういう意味である。種は神の言である。

イエスご自身がたとえの鍵を教えてくださいます。種は神のみことばです。あとのたとえはすべて、そのみことばがどのように受け入れられるかを語っています。

15節
良い地に落ちたのは、御言を聞いたのち、これを正しい良い心でしっかりと守り、耐え忍んで実を結ぶに至る人たちのことである。

良い地とは完璧な人のことではなく、正しい良い心でみことばをしっかり守り、耐え忍んで実を結ぶ人のことです。耐え忍ぶとは、長い時間をかけてということです。

25節
イエスは彼らに言われた、「あなたがたの信仰は、どこにあるのか」。彼らは恐れ驚いて互に言い合った、「いったい、このかたはだれだろう。お命じになると、風も水も従うとは」。

おびえる弟子たちへのイエスの問い、「あなたがたの信仰は、どこにあるのか」は、もう一つの問いを開きます。風も水も従うこのかたは、いったいだれなのか。この章は、そのみわざによって答えています。

39節
「家へ帰って、神があなたにどんなに大きなことをしてくださったか、語り聞かせなさい」。そこで彼は立ち去って、自分にイエスがして下さったことを、ことごとく町中に言いひろめた。

イエスは、解放された人が従うことを許さず、家に帰らせます。彼の使命は、自分の暮らす場所から始まります。神が自分にしてくださったことを、ありのままに語ることです。

50節
しかしイエスはこれを聞いて会堂司にむかって言われた、「恐れることはない。ただ信じなさい。娘は助かるのだ」。

娘の死を告げられたヤイロに、イエスは恐れず、ただ信じなさいと言われます。すべてが終わったように見えるその時に、イエスは信頼へと招かれます。

この章に登場する人物

このテーマで祈る

説教が語っていること

種まきのたとえに学ぶ:あなたの心はどの地面ですかジャン=マルク・ボトゥロンは、このたとえを聞く人自身に当てはめます。道ばたでは、敵が来てみことばを奪い去り、信じることができなくなります。一人ひとりに問われているのは、自分がどんな土地を差し出しているかです。要約を読む →神様から離れたくなる誘惑:最後まで踏みとどまるために13節では、岩の上に落ちた人は、みことばを喜んで受けいれますが、根がありません。ジャン=マルク・ボトゥロンはここから、試練が来ても立ち続けられるよう、みことばに根を下ろすことを勧めています。要約を読む →ゲラサの男を解放するイエス:悪に対する権威ルカ8章26節から39節の学びです。イエスは異邦人の地であっても悪に対して権威を持っておられ、解放された人の使命は、家に帰って神のなさったことを語ることです。要約を読む →リバイバルのあとに、霊的な預かりものを守るイヴァン・カスタヌーは、リバイバルの時を経たあとで種まきのたとえを思い起こさせます。神が置いてくださったものを守り、耐え忍んで実を結ぶのは、正しい良い心です。要約を読む →癒やされてイエスに従い、世を照らす女性たちの合宿でのこの説教は、七つの悪霊を追い出してもらったマグダラのマリヤ(2節)から始まります。回復された人は、イエスに従う弟子になるのだと語ります。要約を読む →

ルカによる福音書8章についてよくある質問

ルカ8章の種まきのたとえは何を意味していますか。

イエスご自身が11節から15節でたとえを説明しておられます。種は神のみことばで、四つの土地は、みことばの受け取り方の四つの型です。みことばが奪われる道ばた、根のない岩の上、いばらにふさがれる土地、そして実を結ぶ良い地です。中心は聞き方であり、だから18節に「どう聞くかに注意するがよい」という警告があります。

ルカ8章22節から25節の嵐を静める出来事では、何が起きましたか。

イエスは舟の中で眠ってしまわれ、突風が湖に吹きおろし、おびえた弟子たちがイエスを起こします。イエスが風と荒波をおしかりになると、すぐになぎになります。「あなたがたの信仰は、どこにあるのか」という問いは、彼らの恐れを否定するものではなく、このかたがだれであるかを知らせるものです。風も水も従う、そのおかただということです。

ゲラサの人の話で「レギオン」とはどういう意味ですか。

イエスが名前をお尋ねになると、その人は「レギオンと言います」と答えます。たくさんの悪霊が彼の中にはいり込んでいたからです(30節)。レギオンはローマ軍の大部隊を指す言葉で、彼を縛っていた力の大きさを表しています。それでもイエスの一言で、彼は着物を着て、正気になって座っていました。

ルカによる福音書 8を引用している記事

← すべての章

口語訳(1955年)— パブリックドメイン。