聖書 — 口語訳 (1955)
使徒行伝 5
概要
使徒行伝5章は、若く、きよく、圧力の下にある教会を描きます。アナニヤとサッピラは、売った地所の代金について偽り、その偽りのために命を失い、共同体全体に畏れが広がります。そのあと使徒たちは民衆の中で多くのしるしを行い、議会の嫉妬を招きます。捕えられた使徒たちは御使に救い出され、再び議会に引き出されます。彼らは、人間に従うよりも神に従うべきだと答えます。ガマリエルは慎重であるよう勧め、使徒たちはむち打たれたのちも喜んで出て行き、教え続けます。
この章の5つの区分
1ところが、アナニヤという人とその妻サッピラとは共に資産を売ったが、
2共謀して、その代金をごまかし、一部だけを持ってきて、使徒たちの足もとに置いた。
3そこで、ペテロが言った、「アナニヤよ、どうしてあなたは、自分の心をサタンに奪われて、聖霊を欺き、地所の代金をごまかしたのか。
4売らずに残しておけば、あなたのものであり、売ってしまっても、あなたの自由になったはずではないか。どうして、こんなことをする気になったのか。あなたは人を欺いたのではなくて、神を欺いたのだ」。
5アナニヤはこの言葉を聞いているうちに、倒れて息が絶えた。このことを伝え聞いた人々は、みな非常なおそれを感じた。
6それから、若者たちが立って、その死体を包み、運び出して葬った。
7三時間ばかりたってから、たまたま彼の妻が、この出来事を知らずに、はいってきた。
8そこで、ペテロが彼女にむかって言った、「あの地所は、これこれの値段で売ったのか。そのとおりか」。彼女は「そうです、その値段です」と答えた。
9ペテロは言った、「あなたがたふたりが、心を合わせて主の御霊を試みるとは、何事であるか。見よ、あなたの夫を葬った人たちの足が、そこの門口にきている。あなたも運び出されるであろう」。
10すると女は、たちまち彼の足もとに倒れて、息が絶えた。そこに若者たちがはいってきて、女が死んでしまっているのを見、それを運び出してその夫のそばに葬った。
11教会全体ならびにこれを伝え聞いた人たちは、みな非常なおそれを感じた。
12そのころ、多くのしるしと奇跡とが、次々に使徒たちの手により人々の中で行われた。そして、一同は心を一つにして、ソロモンの廊に集まっていた。
13ほかの者たちは、だれひとり、その交わりに入ろうとはしなかったが、民衆は彼らを尊敬していた。
14しかし、主を信じて仲間に加わる者が、男女とも、ますます多くなってきた。
15ついには、病人を大通りに運び出し、寝台や寝床の上に置いて、ペテロが通るとき、彼の影なりと、そのうちのだれかにかかるようにしたほどであった。
16またエルサレム附近の町々からも、大ぜいの人が、病人や汚れた霊に苦しめられている人たちを引き連れて、集まってきたが、その全部の者が、ひとり残らずいやされた。
17そこで、大祭司とその仲間の者、すなわち、サドカイ派の人たちが、みな嫉妬の念に満たされて立ちあがり、
18使徒たちに手をかけて捕え、公共の留置場に入れた。
19ところが夜、主の使が獄の戸を開き、彼らを連れ出して言った、
20「さあ行きなさい。そして、宮の庭に立ち、この命の言葉を漏れなく、人々に語りなさい」。
21彼らはこれを聞き、夜明けごろ宮にはいって教えはじめた。一方では、大祭司とその仲間の者とが、集まってきて、議会とイスラエル人の長老一同とを召集し、使徒たちを引き出してこさせるために、人を獄につかわした。
22そこで、下役どもが行って見ると、使徒たちが獄にいないので、引き返して報告した、
23「獄には、しっかりと錠がかけてあり、戸口には、番人が立っていました。ところが、あけて見たら、中にはだれもいませんでした」。
24宮守がしらと祭司長たちとは、この報告を聞いて、これは、いったい、どんな事になるのだろうと、あわて惑っていた。
25そこへ、ある人がきて知らせた、「行ってごらんなさい。あなたがたが獄に入れたあの人たちが、宮の庭に立って、民衆を教えています」。
26そこで宮守がしらが、下役どもと一緒に出かけて行って、使徒たちを連れてきた。しかし、人々に石で打ち殺されるのを恐れて、手荒なことはせず、
27彼らを連れてきて、議会の中に立たせた。すると、大祭司が問うて
28言った、「あの名を使って教えてはならないと、きびしく命じておいたではないか。それだのに、なんという事だ。エルサレム中にあなたがたの教を、はんらんさせている。あなたがたは確かに、あの人の血の責任をわたしたちに負わせようと、たくらんでいるのだ」。
29これに対して、ペテロをはじめ使徒たちは言った、「人間に従うよりは、神に従うべきである。
30わたしたちの先祖の神は、あなたがたが木にかけて殺したイエスをよみがえらせ、
31そして、イスラエルを悔い改めさせてこれに罪のゆるしを与えるために、このイエスを導き手とし救主として、ご自身の右に上げられたのである。
32わたしたちはこれらの事の証人である。神がご自身に従う者に賜わった聖霊もまた、その証人である」。
33これを聞いた者たちは、激しい怒りのあまり、使徒たちを殺そうと思った。
34ところが、国民全体に尊敬されていた律法学者ガマリエルというパリサイ人が、議会で立って、使徒たちをしばらくのあいだ外に出すように要求してから、
35一同にむかって言った、「イスラエルの諸君、あの人たちをどう扱うか、よく気をつけるがよい。
36先ごろ、チゥダが起って、自分を何か偉い者のように言いふらしたため、彼に従った男の数が、四百人ほどもあったが、結局、彼は殺されてしまい、従った者もみな四散して、全く跡方もなくなっている。
37そののち、人口調査の時に、ガリラヤ人ユダが民衆を率いて反乱を起したが、この人も滅び、従った者もみな散らされてしまった。
38そこで、この際、諸君に申し上げる。あの人たちから手を引いて、そのなすままにしておきなさい。その企てや、しわざが、人間から出たものなら、自滅するだろう。
39しかし、もし神から出たものなら、あの人たちを滅ぼすことはできまい。まかり違えば、諸君は神を敵にまわすことになるかも知れない」。そこで彼らはその勧告にしたがい、
40使徒たちを呼び入れて、むち打ったのち、今後イエスの名によって語ることは相成らぬと言いわたして、ゆるしてやった。
41使徒たちは、御名のために恥を加えられるに足る者とされたことを喜びながら、議会から出てきた。
42そして、毎日、宮や家で、イエスがキリストであることを、引きつづき教えたり宣べ伝えたりした。
鍵となる聖句
そこで、ペテロが言った、「アナニヤよ、どうしてあなたは、自分の心をサタンに奪われて、聖霊を欺き、地所の代金をごまかしたのか。 売らずに残しておけば、あなたのものであり、売ってしまっても、あなたの自由になったはずではないか。どうして、こんなことをする気になったのか。あなたは人を欺いたのではなくて、神を欺いたのだ」。
ペテロは、アナニヤが代金の一部を手元に残したことを責めているのではありません。地所は彼のものでした。責めているのは偽りです。実際よりも寛大に見せかけ、神ご自身を欺こうとしたことです。
これに対して、ペテロをはじめ使徒たちは言った、「人間に従うよりは、神に従うべきである。
イエスについて語ることを禁じられたとき、ペテロと使徒たちは一つの原則を示します。人間の命令が神の命令と食い違うなら、神に従うのです。キリスト教の伝統では、この例外が権威に対する一般的な敬意を取り消すものではないことも、よく指摘されます。
そこで、この際、諸君に申し上げる。あの人たちから手を引いて、そのなすままにしておきなさい。その企てや、しわざが、人間から出たものなら、自滅するだろう。 しかし、もし神から出たものなら、あの人たちを滅ぼすことはできまい。まかり違えば、諸君は神を敵にまわすことになるかも知れない」。そこで彼らはその勧告にしたがい、
人々に尊敬されていたパリサイ人ガマリエルは、様子を見るよう勧めます。人間から出たものは崩れ、神から出たものは止めることができない、というのです。これは慎重さを求める助言であり、キリスト教信仰の承認ではありません。
使徒たちは、御名のために恥を加えられるに足る者とされたことを喜びながら、議会から出てきた。
使徒たちはむち打たれて出て行きますが、御名のために恥を加えられるに足る者とされたことを喜んでいます。その喜びは痛みを否定するものではありません。自分たちが経験していることに与えた意味から来ています。
この章に登場する人物
説教が語っていること
使徒行伝5章についてよくある質問
使徒行伝5章でアナニヤとサッピラはなぜ死んだのですか
本文が理由を示しています。二人は偽ったからです。地所を売り、代金の一部を残しながら、すべてをささげたと装いました。それは聖霊を欺くことでした。すべてをささげる義務は誰にもありませんでした。この箇所は、教会の中の偽善に対する警告として読まれています。裁きの厳しさは多くの読者にとって難しく、注解者たちもさまざまに説明しています。
「人間に従うよりは、神に従うべきである」とはどういう意味ですか
これは、イエスの名によって語ることを禁じた議会に対する、ペテロと使徒たちの答えです。人間への従順には限界があることを示しています。ある権威が神に背くことを求めるなら、信じる者は神に従います。新約聖書は別の箇所で権威を尊ぶことも勧めており、この言葉は一般的な規則ではなく、例外です。
使徒行伝5章の中心的なメッセージは何ですか
教会は、神に対して偽りを許さない共同体であり、反対によって止められることもありません。使徒たちは人間に従うよりも神に従い、むち打ちを喜んで受け、毎日教え続けます。この章はまた、ガマリエルが言うように、敵意の中でも神がご自身のわざを導かれることを示しています。神から出たものは滅ぼされません。
使徒行伝5章のガマリエルとは誰ですか
ガマリエルは、律法学者でパリサイ人であり、国民全体に尊敬されていました。議会で人々を落ち着かせ、使徒たちをそのままにしておくよう求めます。その運動が人間から出たものなら自滅し、神から出たものなら、誰も止めることはできないと述べます。使徒行伝の別の箇所では、パウロの師として名が挙げられています。
使徒行伝 5を引用している記事
口語訳(1955年)— パブリックドメイン。