聖書 — 口語訳 (1955)

サムエル記上 2

概要

サムエル記上2章は、ハンナの祈りで始まります。ハンナは、聖なる神、弱い者の岩、力ある者を低くし貧しい者を引き上げる神をほめたたえます。次に、二つの少年時代が対比されます。サムエルは主に仕えて育ち、よこしまな祭司であるエリの子らは、供え物を見下します。エリは子らを生ぬるくとがめるだけで、神の人がエリの家へのさばきを告げます。神は、ご自身の心に従って行う忠実な祭司を約束されます。

この章の4つの区分

  1. 1-10節ハンナの祈り:弱い者を引き上げる神
  2. 11-17節仕えるサムエル、供え物を見下すエリの子ら
  3. 18-26節成長するサムエル、子らを生ぬるくとがめるエリ
  4. 27-36節エリの家へのさばきと忠実な祭司

1ハンナは祈って言った、「わたしの心は主によって喜び、わたしの力は主によって強められた、わたしの口は敵をあざ笑う、あなたの救によってわたしは楽しむからである。

2主のように聖なるものはない、あなたのほかには、だれもない、われわれの神のような岩はない。

3あなたがたは重ねて高慢に語ってはならない、たかぶりの言葉を口にすることをやめよ。主はすべてを知る神であって、もろもろのおこないは主によって量られる。

4勇士の弓は折れ、弱き者は力を帯びる。

5飽き足りた者は食のために雇われ、飢えたものは、もはや飢えることがない。うまずめは七人の子を産み、多くの子をもつ女は孤独となる。

6主は殺し、また生かし、陰府にくだし、また上げられる。

7主は貧しくし、また富ませ、低くし、また高くされる。

8貧しい者を、ちりのなかから立ちあがらせ、乏しい者を、あくたのなかから引き上げて、王侯と共にすわらせ、栄誉の位を継がせられる。地の柱は主のものであって、その柱の上に、世界をすえられたからである。

9主はその聖徒たちの足を守られる、しかし悪いものどもは暗黒のうちに滅びる。人は力をもって勝つことができないからである。

10主と争うものは粉々に砕かれるであろう、主は彼らにむかって天から雷をとどろかし、地のはてまでもさばき、王に力を与え、油そそがれた者の力を強くされるであろう」。

11エルカナはラマにある家に帰ったが、幼な子は祭司エリの前にいて主に仕えた。

12さて、エリの子らは、よこしまな人々で、主を恐れなかった。

13民のささげ物についての祭司のならわしはこうである。人が犠牲をささげる時、その肉を煮る間に、祭司のしもべは、みつまたの肉刺しを手に持ってきて、

14それをかま、またはなべ、またはおおがま、または鉢に突きいれ、肉刺しの引き上げるものは祭司がみな自分のものとした。彼らはシロで、そこに来るすべてのイスラエルの人に、このようにした。

15人々が脂肪を焼く前にもまた、祭司のしもべがきて、犠牲をささげる人に言うのであった、「祭司のために焼く肉を与えよ。祭司はあなたから煮た肉を受けない。生の肉がよい」。

16その人が、「まず脂肪を焼かせましょう。その後ほしいだけ取ってください」と言うと、しもべは、「いや、今もらいたい。くれないなら、わたしは力づくで、それを取ろう」と言う。

17このように、その若者たちの罪は、主の前に非常に大きかった。この人々が主の供え物を軽んじたからである。

18サムエルはまだ幼く、身に亜麻布のエポデを着けて、主の前に仕えていた。

19母は彼のために小さい上着を作り、年ごとに、夫と共にその年の犠牲をささげるために上る時、それを持ってきた。

20エリはいつもエルカナとその妻を祝福して言った、「この女が主にささげた者のかわりに、主がこの女によってあなたに子を与えられるように」。そして彼らはその家に帰るのを常とした。

21こうして主がハンナを顧みられたので、ハンナはみごもって、三人の男の子とふたりの女の子を産んだ。わらべサムエルは主の前で育った。

22エリはひじょうに年をとった。そしてその子らがイスラエルの人々にしたいろいろのことを聞き、また会見の幕屋の入口で勤めていた女たちと寝たことを聞いて、

23彼らに言った、「なにゆえ、そのようなことをするのか。わたしはこのすべての民から、あなたがたの悪いおこないのことを聞く。

24わが子らよ、それはいけない。わたしの聞く、主の民の言いふらしている風説は良くない。

25もし人が人に対して罪を犯すならば、神が仲裁されるであろう。しかし人が主に対して罪を犯すならば、だれが、そのとりなしをすることができようか」。しかし彼らは父の言うことに耳を傾けようともしなかった。主が彼らを殺そうとされたからである。

26わらべサムエルは育っていき、主にも、人々にも、ますます愛せられた。

27このとき、ひとりの神の人が、エリのもとにきて言った、「主はかく仰せられる、『あなたの先祖の家がエジプトでパロの家の奴隷であったとき、わたしはその先祖の家に自らを現した。

28そしてイスラエルのすべての部族のうちからそれを選び出して、わたしの祭司とし、わたしの祭壇に上って、香をたかせ、わたしの前でエポデを着けさせ、また、イスラエルの人々の火祭をことごとくあなたの先祖の家に与えた。

29それにどうしてあなたがたは、わたしが命じた犠牲と供え物をむさぼりの目をもって見るのか。またなにゆえ、わたしよりも自分の子らを尊び、わたしの民イスラエルのささげるもろもろの供え物の、最も良き部分をもって自分を肥やすのか』。

30それゆえイスラエルの神、主は仰せられる、『わたしはかつて、「あなたの家とあなたの父の家とは、永久にわたしの前に歩むであろう」と言った』。しかし今、主は仰せられる、『決してそうはしない。わたしを尊ぶ者を、わたしは尊び、わたしを卑しめる者は、軽んぜられるであろう。

31見よ、日が来るであろう。その日、わたしはあなたの力と、あなたの父の家の力を断ち、あなたの家に年老いた者をなくするであろう。

32そのとき、あなたは災のうちにあって、イスラエルに与えられるもろもろの繁栄を、ねたみ見るであろう。あなたの家には永久に年老いた者がいなくなるであろう。

33しかしあなたの一族のひとりを、わたしの祭壇から断たないであろう。彼は残されてその目を泣きはらし、心を痛めるであろう。またあなたの家に生れ出るものは、みなつるぎに死ぬであろう。

34あなたのふたりの子ホフニとピネハスの身に起ることが、あなたのためにそのしるしとなるであろう。すなわちそのふたりは共に同じ日に死ぬであろう。

35わたしは自分のために、ひとりの忠実な祭司を起す。その人はわたしの心と思いとに従って行うであろう。わたしはその家を確立しよう。その人はわたしが油そそいだ者の前につねに歩むであろう。

36そしてあなたの家で生き残っている人々はみなきて、彼に一枚の銀と一個のパンを請い求め、「どうぞ、わたしを祭司の職の一つに任じ、一口のパンでも食べることができるようにしてください」と言うであろう』」。

鍵となる聖句

2節
主のように聖なるものはない、あなたのほかには、だれもない、われわれの神のような岩はない。

「主のように聖なるものはない」。ハンナは、前の章に記された苦しみの時を経て、神の聖さと確かさをたたえることから賛美を始めます。

8節
貧しい者を、ちりのなかから立ちあがらせ、乏しい者を、あくたのなかから引き上げて、王侯と共にすわらせ、栄誉の位を継がせられる。地の柱は主のものであって、その柱の上に、世界をすえられたからである。

神は貧しい者をちりの中から立ちあがらせ、乏しい者を引き上げて、王侯と共にすわらせます。ハンナの祈りは、弱さの状況をひっくり返される神を描いています。

10節
主と争うものは粉々に砕かれるであろう、主は彼らにむかって天から雷をとどろかし、地のはてまでもさばき、王に力を与え、油そそがれた者の力を強くされるであろう」。

ハンナは、主が力を与え、強くされる王と油そそがれた者について語ります。イスラエルにはまだ王がいなかったときのことです。多くのキリスト者は、そこにメシヤの遠い予告を見ています。

30節
それゆえイスラエルの神、主は仰せられる、『わたしはかつて、「あなたの家とあなたの父の家とは、永久にわたしの前に歩むであろう」と言った』。しかし今、主は仰せられる、『決してそうはしない。わたしを尊ぶ者を、わたしは尊び、わたしを卑しめる者は、軽んぜられるであろう。

神は、ご自身を尊ぶ者を尊び、卑しめる者は軽んぜられると言われます。この言葉は、子らを神よりも尊んだエリに向けられています。

35節
わたしは自分のために、ひとりの忠実な祭司を起す。その人はわたしの心と思いとに従って行うであろう。わたしはその家を確立しよう。その人はわたしが油そそいだ者の前につねに歩むであろう。

神は、ご自身の心と思いに従って行う忠実な祭司を約束されます。この約束はまずサムエルに当てはまりますが、多くの人は、真の大祭司であるキリストを告げるものとも読んでいます。

この章に登場する人物

説教が語っていること

サムエル記上2章についてよくある質問

ハンナの祈りのメッセージは何ですか(サムエル記上2章1節から10節)?

ハンナは、聖なる神、力ある者の弓を折り、弱い者に力を与え、貧しい者をちりの中から引き上げる神をほめたたえます。この祈りは、サムエルの誕生を祝うだけでなく、状況を逆転させ、信じる者を守る神を示しています。また、王と油そそがれた者を告げ、ダビデの物語への備えとなっています。

なぜエリの子らはさばかれるのですか?

エリの子ホフニとピネハスは、よこしまな祭司で、いけにえの肉を力ずくで取り、主への供え物を見下しました。エリは彼らをとがめますが、効果はありません。神の人は、神がエリを、神よりも子らを尊ぶ者と見ておられると告げます。34節は、二人の子が同じ日に死ぬと予告しています。

「わたしを尊ぶ者を、わたしは尊び」とはどういう意味ですか(サムエル記上2章30節)?

神はエリに向かって、祭司の務めは世襲の地位ではなく、神に対する尊敬の上に成り立つと告げておられます。神を卑しめる者は軽んぜられます。この言葉は、自動的な成功の約束ではなく、一つの原則です。神は、人がどのようにご自身に仕え、ご自身のものをどう扱うかを真剣に見ておられます。

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