聖書 — 口語訳 (1955)

ルカによる福音書 1

概要

ルカによる福音書1章は、序文で始まります。著者は、テオピロが聞いたことの確かさを知るために、すべてを詳しく調べたと述べます。続いて、二つの特別な誕生のお告げが語られます。年老いて子のなかったザカリヤとエリサベツの子ヨハネと、御使ガブリエルがマリヤに告げたイエスの誕生です。マリヤはエリサベツを訪ね、賛歌を歌います。章は、ヨハネの誕生と、上から臨む日の光を告げるザカリヤの預言で結ばれます。神は、しばしば思いがけない仕方で、約束を果たされます。

この章の5つの区分

  1. 1-4節序文:テオピロのための確かな事実
  2. 5-25節ザカリヤへのヨハネ誕生のお告げ
  3. 26-38節マリヤへのイエス誕生のお告げ
  4. 39-56節エリサベツへの訪問とマリヤの賛歌
  5. 57-80節ヨハネの誕生とザカリヤの預言

1わたしたちの間に成就された出来事を、最初から親しく見た人々であって、

2御言に仕えた人々が伝えたとおり物語に書き連ねようと、多くの人が手を着けましたが、

3テオピロ閣下よ、わたしもすべての事を初めから詳しく調べていますので、ここに、それを順序正しく書きつづって、閣下に献じることにしました。

4すでにお聞きになっている事が確実であることを、これによって十分に知っていただきたいためであります。

5ユダヤの王ヘロデの世に、アビヤの組の祭司で名をザカリヤという者がいた。その妻はアロン家の娘のひとりで、名をエリサベツといった。

6ふたりとも神のみまえに正しい人であって、主の戒めと定めとを、みな落度なく行っていた。

7ところが、エリサベツは不妊の女であったため、彼らには子がなく、そしてふたりともすでに年老いていた。

8さてザカリヤは、その組が当番になり神のみまえに祭司の務をしていたとき、

9祭司職の慣例に従ってくじを引いたところ、主の聖所にはいって香をたくことになった。

10香をたいている間、多くの民衆はみな外で祈っていた。

11すると主の御使が現れて、香壇の右に立った。

12ザカリヤはこれを見て、おじ惑い、恐怖の念に襲われた。

13そこで御使が彼に言った、「恐れるな、ザカリヤよ、あなたの祈が聞きいれられたのだ。あなたの妻エリサベツは男の子を産むであろう。その子をヨハネと名づけなさい。

14彼はあなたに喜びと楽しみとをもたらし、多くの人々もその誕生を喜ぶであろう。

15彼は主のみまえに大いなる者となり、ぶどう酒や強い酒をいっさい飲まず、母の胎内にいる時からすでに聖霊に満たされており、

16そして、イスラエルの多くの子らを、主なる彼らの神に立ち帰らせるであろう。

17彼はエリヤの霊と力とをもって、みまえに先立って行き、父の心を子に向けさせ、逆らう者に義人の思いを持たせて、整えられた民を主に備えるであろう」。

18するとザカリヤは御使に言った、「どうしてそんな事が、わたしにわかるでしょうか。わたしは老人ですし、妻も年をとっています」。

19御使が答えて言った、「わたしは神のみまえに立つガブリエルであって、この喜ばしい知らせをあなたに語り伝えるために、つかわされたものである。

20時が来れば成就するわたしの言葉を信じなかったから、あなたは口がきけなくなり、この事の起る日まで、ものが言えなくなる」。

21民衆はザカリヤを待っていたので、彼が聖所内で暇どっているのを不思議に思っていた。

22ついに彼は出てきたが、物が言えなかったので、人々は彼が聖所内でまぼろしを見たのだと悟った。彼は彼らに合図をするだけで、引きつづき、口がきけないままでいた。

23それから務の期日が終ったので、家に帰った。

24そののち、妻エリサベツはみごもり、五か月のあいだ引きこもっていたが、

25「主は、今わたしを心にかけてくださって、人々の間からわたしの恥を取り除くために、こうしてくださいました」と言った。

26六か月目に、御使ガブリエルが、神からつかわされて、ナザレというガリラヤの町の一処女のもとにきた。

27この処女はダビデ家の出であるヨセフという人のいいなづけになっていて、名をマリヤといった。

28御使がマリヤのところにきて言った、「恵まれた女よ、おめでとう、主があなたと共におられます」。

29この言葉にマリヤはひどく胸騒ぎがして、このあいさつはなんの事であろうかと、思いめぐらしていた。

30すると御使が言った、「恐れるな、マリヤよ、あなたは神から恵みをいただいているのです。

31見よ、あなたはみごもって男の子を産むでしょう。その子をイエスと名づけなさい。

32彼は大いなる者となり、いと高き者の子と、となえられるでしょう。そして、主なる神は彼に父ダビデの王座をお与えになり、

33彼はとこしえにヤコブの家を支配し、その支配は限りなく続くでしょう」。

34そこでマリヤは御使に言った、「どうして、そんな事があり得ましょうか。わたしにはまだ夫がありませんのに」。

35御使が答えて言った、「聖霊があなたに臨み、いと高き者の力があなたをおおうでしょう。それゆえに、生れ出る子は聖なるものであり、神の子と、となえられるでしょう。

36あなたの親族エリサベツも老年ながら子を宿しています。不妊の女といわれていたのに、はや六か月になっています。

37神には、なんでもできないことはありません」。

38そこでマリヤが言った、「わたしは主のはしためです。お言葉どおりこの身に成りますように」。そして御使は彼女から離れて行った。

39そのころ、マリヤは立って、大急ぎで山里へむかいユダの町に行き、

40ザカリヤの家にはいってエリサベツにあいさつした。

41エリサベツがマリヤのあいさつを聞いたとき、その子が胎内でおどった。エリサベツは聖霊に満たされ、

42声高く叫んで言った、「あなたは女の中で祝福されたかた、あなたの胎の実も祝福されています。

43主の母上がわたしのところにきてくださるとは、なんという光栄でしょう。

44ごらんなさい。あなたのあいさつの声がわたしの耳にはいったとき、子供が胎内で喜びおどりました。

45主のお語りになったことが必ず成就すると信じた女は、なんとさいわいなことでしょう」。

46するとマリヤは言った、「わたしの魂は主をあがめ、

47わたしの霊は救主なる神をたたえます。

48この卑しい女をさえ、心にかけてくださいました。今からのち代々の人々は、わたしをさいわいな女と 言うでしょう、

49力あるかたが、わたしに大きな事を してくださったからです。そのみ名はきよく、

50そのあわれみは、代々限りなく 主をかしこみ恐れる者に及びます。

51主はみ腕をもって力をふるい、心の思いのおごり高ぶる者を追い散らし、

52権力ある者を王座から引きおろし、卑しい者を引き上げ、

53飢えている者を良いもので飽かせ、富んでいる者を空腹のまま帰らせなさいます。

54主は、あわれみをお忘れにならず、その僕イスラエルを助けてくださいました、

55わたしたちの父祖アブラハムとその子孫とを とこしえにあわれむと約束なさったとおりに」。

56マリヤは、エリサベツのところに三か月ほど滞在してから、家に帰った。

57さてエリサベツは月が満ちて、男の子を産んだ。

58近所の人々や親族は、主が大きなあわれみを彼女におかけになったことを聞いて、共どもに喜んだ。

59八日目になったので、幼な子に割礼をするために人々がきて、父の名にちなんでザカリヤという名にしようとした。

60ところが、母親は、「いいえ、ヨハネという名にしなくてはいけません」と言った。

61人々は、「あなたの親族の中には、そういう名のついた者は、ひとりもいません」と彼女に言った。

62そして父親に、どんな名にしたいのですかと、合図で尋ねた。

63ザカリヤは書板を持ってこさせて、それに「その名はヨハネ」と書いたので、みんなの者は不思議に思った。

64すると、立ちどころにザカリヤの口が開けて舌がゆるみ、語り出して神をほめたたえた。

65近所の人々はみな恐れをいだき、またユダヤの山里の至るところに、これらの事がことごとく語り伝えられたので、

66聞く者たちは皆それを心に留めて、「この子は、いったい、どんな者になるだろう」と語り合った。主のみ手が彼と共にあった。

67父ザカリヤは聖霊に満たされ、預言して言った、

68「主なるイスラエルの神は、ほむべきかな。神はその民を顧みてこれをあがない、

69わたしたちのために救の角を 僕ダビデの家にお立てになった。

70古くから、聖なる預言者たちの口によって お語りになったように、

71わたしたちを敵から、またすべてわたしたちを 憎む者の手から、救い出すためである。

72こうして、神はわたしたちの父祖たちに あわれみをかけ、その聖なる契約、

73すなわち、父祖アブラハムにお立てになった 誓いをおぼえて、

74わたしたちを敵の手から救い出し、

75生きている限り、きよく正しく、みまえに恐れなく仕えさせてくださるのである。

76幼な子よ、あなたは、いと高き者の預言者と 呼ばれるであろう。主のみまえに先立って行き、その道を備え、

77罪のゆるしによる救を その民に知らせるのであるから。

78これはわたしたちの神のあわれみ深い みこころによる。また、そのあわれみによって、日の光が上から わたしたちに臨み、

79暗黒と死の陰とに住む者を照し、わたしたちの足を平和の道へ導くであろう」。

80幼な子は成長し、その霊も強くなり、そしてイスラエルに現れる日まで、荒野にいた。

鍵となる聖句

4節
すでにお聞きになっている事が確実であることを、これによって十分に知っていただきたいためであります。

ルカは目的を述べます。確信を与えることです。彼の福音書は、神話としてではなく、目撃者と丹念な調査に基づく記録として示されています。

37節
神には、なんでもできないことはありません」。

告げられた誕生に驚くマリヤに、御使が語った言葉です。すべての問いに答えるわけではありませんが、約束されたことを果たされる神の力の上に、その後の物語を据えています。とりわけエリサベツのことがその証しです。

38節
そこでマリヤが言った、「わたしは主のはしためです。お言葉どおりこの身に成りますように」。そして御使は彼女から離れて行った。

マリヤの答えは、備えのできた心の模範です。自分を主のはしためとし、すべてを理解しないままみ言葉を受け入れます。恐れ、問いかけもしましたが、最後には神に身をゆだねます。

45節
主のお語りになったことが必ず成就すると信じた女は、なんとさいわいなことでしょう」。

エリサベツは、信じた女をさいわいな人と宣言します。マリヤの信仰は、神が語られたことは必ず成就するという信頼として描かれ、この章はそれをザカリヤの疑いと対比させています。

78-79節
これはわたしたちの神のあわれみ深い みこころによる。また、そのあわれみによって、日の光が上から わたしたちに臨み、 暗黒と死の陰とに住む者を照し、わたしたちの足を平和の道へ導くであろう」。

ザカリヤは預言の中で、神のあわれみと、上から臨む日の光について語ります。暗黒の中にいる者を照らす光というこのイメージは、イエスの働きを告げるものであり、待降節によく読まれます。

この章に登場する人物

説教が語っていること

洗礼者ヨハネ:イエスを指し示す人生の三つの刻印ジェレミー・メイエは、バプテスマのヨハネが、ザカリヤとエリサベツの奇跡の子であり、ガブリエルによって告げられたことを思い起こさせます。イエスを指し示す生き方の三つの特徴を挙げます。神との確かな関係、自分の召命への確信、そしてイエスに場所を譲るへりくだりです。要約を読む →荒野に道を備えましょう:ウェイメーカーになりましょう説教者は、イザヤ書40章3節と、エリサベツの子が胎内でおどったルカによる福音書1章41節に基づいて語ります。他の人のために道を備える前に、まず自分自身を備えるよう招きます。要約を読む →インマヌエル:王はここにおられる、あなたは決して一人ではない牧師キャシーは、ガブリエルからマリヤへのお告げ、ルカによる福音書1章26節から35節を読み、イエスを、最初は家畜小屋に来られ、再び来られる王として示します。イエスは真の神であり真の人であり、あなたの試練の中であなたとともにおられます。要約を読む →ヨセフの葛藤、神が示された思いがけない答え説教者はガブリエルからマリヤへのお告げ(ルカによる福音書1章26節から38節)を取り上げたあと、ヨセフの側に立ちます。自分の理解を超えた状況にどう反応するのか、そして神が夢を通してどのようにヨセフに語られるのかを語ります。要約を読む →

ルカによる福音書1章についてよくある質問

ルカによる福音書1章には何が書かれていますか

ルカによる福音書1章は、ザカリヤへのバプテスマのヨハネ誕生のお告げと、御使ガブリエルによるマリヤへのイエス誕生のお告げを語ります。マリヤはエリサベツを訪ね、賛歌を歌います。章は、ヨハネの誕生と、救い主の到来を告げるザカリヤの預言で結ばれます。

ルカによる福音書1章37節の「神には、なんでもできないことはありません」とはどういう意味ですか

御使は、前例のない誕生をマリヤに告げたあと、この言葉を語り、年老いたエリサベツが身ごもっていることを思い起こさせます。この節は、神のみ言葉は、神にその力があるからこそ成就すると語っています。望むものを手に入れるための一般的な決まり文句ではなく、神ご自身が告げられたことに結びついた約束です。

マリヤの賛歌とは何ですか

ルカによる福音書1章46節から55節にあるマリヤの歌で、「わたしの魂は主をあがめ」で始まります。マリヤは、神の真実、聖さ、そしてへりくだった者への心づかいをほめたたえます。旧約聖書のハンナの祈りに近いこの歌は、カトリック、正教会、プロテスタントなど、多くのキリスト教の伝統の中で歌われています。

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