聖書 — 口語訳 (1955)

ヨハネによる福音書 19

概要

ピラトはイエスをむち打たせ、「見よ、この人だ」と人々の前に示し、やがて宗教指導者たちに屈します。イエスは十字架を負ってゴルゴタへ行き、「ユダヤ人の王」と記された罪状書きの下につけられます。ヨハネは聖書の成就をいくつも書き留めています。十字架の上でイエスは母を愛弟子に託し、「すべてが終った」と言って息を引き取られます。アリマタヤのヨセフとニコデモが、園にある新しい墓に遺体を納めます。

この章の4つの区分

  1. 1-16節ピラトの前のイエス:「見よ、この人だ」「あなたがたの王だ」
  2. 17-27節ゴルゴタ:罪状書き、分けられた着物、ヨハネに託された母
  3. 28-37節「かわく」「すべてが終った」そして突き刺されたわき腹
  4. 38-42節アリマタヤのヨセフとニコデモがイエスを葬る

1そこでピラトは、イエスを捕え、むちで打たせた。

2兵卒たちは、いばらで冠をあんで、イエスの頭にかぶらせ、紫の上着を着せ、

3それから、その前に進み出て、「ユダヤ人の王、ばんざい」と言った。そして平手でイエスを打ちつづけた。

4するとピラトは、また出て行ってユダヤ人たちに言った、「見よ、わたしはこの人をあなたがたの前に引き出すが、それはこの人になんの罪も見いだせないことを、あなたがたに知ってもらうためである」。

5イエスはいばらの冠をかぶり、紫の上着を着たままで外へ出られると、ピラトは彼らに言った、「見よ、この人だ」。

6祭司長たちや下役どもはイエスを見ると、叫んで「十字架につけよ、十字架につけよ」と言った。ピラトは彼らに言った、「あなたがたが、この人を引き取って十字架につけるがよい。わたしは、彼にはなんの罪も見いだせない」。

7ユダヤ人たちは彼に答えた、「わたしたちには律法があります。その律法によれば、彼は自分を神の子としたのだから、死罪に当る者です」。

8ピラトがこの言葉を聞いたとき、ますますおそれ、

9もう一度官邸にはいってイエスに言った、「あなたは、もともと、どこからきたのか」。しかし、イエスはなんの答もなさらなかった。

10そこでピラトは言った、「何も答えないのか。わたしには、あなたを許す権威があり、また十字架につける権威があることを、知らないのか」。

11イエスは答えられた、「あなたは、上から賜わるのでなければ、わたしに対してなんの権威もない。だから、わたしをあなたに引き渡した者の罪は、もっと大きい」。

12これを聞いて、ピラトはイエスを許そうと努めた。しかしユダヤ人たちが叫んで言った、「もしこの人を許したなら、あなたはカイザルの味方ではありません。自分を王とするものはすべて、カイザルにそむく者です」。

13ピラトはこれらの言葉を聞いて、イエスを外へ引き出して行き、敷石(ヘブル語ではガバタ)という場所で裁判の席についた。

14その日は過越の準備の日であって、時は昼の十二時ころであった。ピラトはユダヤ人らに言った、「見よ、これがあなたがたの王だ」。

15すると彼らは叫んだ、「殺せ、殺せ、彼を十字架につけよ」。ピラトは彼らに言った、「あなたがたの王を、わたしが十字架につけるのか」。祭司長たちは答えた、「わたしたちには、カイザル以外に王はありません」。

16そこでピラトは、十字架につけさせるために、イエスを彼らに引き渡した。彼らはイエスを引き取った。

17イエスはみずから十字架を背負って、されこうべ(ヘブル語ではゴルゴタ)という場所に出て行かれた。

18彼らはそこで、イエスを十字架につけた。イエスをまん中にして、ほかのふたりの者を両側に、イエスと一緒に十字架につけた。

19ピラトは罪状書きを書いて、十字架の上にかけさせた。それには「ユダヤ人の王、ナザレのイエス」と書いてあった。

20イエスが十字架につけられた場所は都に近かったので、多くのユダヤ人がこの罪状書きを読んだ。それはヘブル、ローマ、ギリシヤの国語で書いてあった。

21ユダヤ人の祭司長たちがピラトに言った、「『ユダヤ人の王』と書かずに、『この人はユダヤ人の王と自称していた』と書いてほしい」。

22ピラトは答えた、「わたしが書いたことは、書いたままにしておけ」。

23さて、兵卒たちはイエスを十字架につけてから、その上着をとって四つに分け、おのおの、その一つを取った。また下着を手に取ってみたが、それには縫い目がなく、上の方から全部一つに織ったものであった。

24そこで彼らは互に言った、「それを裂かないで、だれのものになるか、くじを引こう」。これは、「彼らは互にわたしの上着を分け合い、わたしの衣をくじ引にした」という聖書が成就するためで、兵卒たちはそのようにしたのである。

25さて、イエスの十字架のそばには、イエスの母と、母の姉妹と、クロパの妻マリヤと、マグダラのマリヤとが、たたずんでいた。

26イエスは、その母と愛弟子とがそばに立っているのをごらんになって、母にいわれた、「婦人よ、ごらんなさい。これはあなたの子です」。

27それからこの弟子に言われた、「ごらんなさい。これはあなたの母です」。そのとき以来、この弟子はイエスの母を自分の家に引きとった。

28そののち、イエスは今や万事が終ったことを知って、「わたしは、かわく」と言われた。それは、聖書が全うされるためであった。

29そこに、酢いぶどう酒がいっぱい入れてある器がおいてあったので、人々は、このぶどう酒を含ませた海綿をヒソプの茎に結びつけて、イエスの口もとにさし出した。

30すると、イエスはそのぶどう酒を受けて、「すべてが終った」と言われ、首をたれて息をひきとられた。

31さてユダヤ人たちは、その日が準備の日であったので、安息日に死体を十字架の上に残しておくまいと、(特にその安息日は大事な日であったから)、ピラトに願って、足を折った上で、死体を取りおろすことにした。

32そこで兵卒らがきて、イエスと一緒に十字架につけられた初めの者と、もうひとりの者との足を折った。

33しかし、彼らがイエスのところにきた時、イエスはもう死んでおられたのを見て、その足を折ることはしなかった。

34しかし、ひとりの兵卒がやりでそのわきを突きさすと、すぐ血と水とが流れ出た。

35それを見た者があかしをした。そして、そのあかしは真実である。その人は、自分が真実を語っていることを知っている。それは、あなたがたも信ずるようになるためである。

36これらのことが起ったのは、「その骨はくだかれないであろう」との聖書の言葉が、成就するためである。

37また聖書のほかのところに、「彼らは自分が刺し通した者を見るであろう」とある。

38そののち、ユダヤ人をはばかって、ひそかにイエスの弟子となったアリマタヤのヨセフという人が、イエスの死体を取りおろしたいと、ピラトに願い出た。ピラトはそれを許したので、彼はイエスの死体を取りおろしに行った。

39また、前に、夜、イエスのみもとに行ったニコデモも、没薬と沈香とをまぜたものを百斤ほど持ってきた。

40彼らは、イエスの死体を取りおろし、ユダヤ人の埋葬の習慣にしたがって、香料を入れて亜麻布で巻いた。

41イエスが十字架にかけられた所には、一つの園があり、そこにはまだだれも葬られたことのない新しい墓があった。

42その日はユダヤ人の準備の日であったので、その墓が近くにあったため、イエスをそこに納めた。

鍵となる聖句

5節
イエスはいばらの冠をかぶり、紫の上着を着たままで外へ出られると、ピラトは彼らに言った、「見よ、この人だ」。

ピラトは、いばらの冠をかぶり紫の上着を着たイエスを「見よ、この人だ」と示します。嘲ろうとした人々は、意図せずイエスのありのままの姿、すなわち辱めを受け入れる王を示すことになります。

11節
イエスは答えられた、「あなたは、上から賜わるのでなければ、わたしに対してなんの権威もない。だから、わたしをあなたに引き渡した者の罪は、もっと大きい」。

イエスはピラトに、その権威は上から与えられたものだと答えられます。イエスはこの場面に押し流された人ではなく、その主であり続け、責任にも軽重があることを示されます。

19-22節
ピラトは罪状書きを書いて、十字架の上にかけさせた。それには「ユダヤ人の王、ナザレのイエス」と書いてあった。 イエスが十字架につけられた場所は都に近かったので、多くのユダヤ人がこの罪状書きを読んだ。それはヘブル、ローマ、ギリシヤの国語で書いてあった。 ユダヤ人の祭司長たちがピラトに言った、「『ユダヤ人の王』と書かずに、『この人はユダヤ人の王と自称していた』と書いてほしい」。 ピラトは答えた、「わたしが書いたことは、書いたままにしておけ」。

十字架の上の罪状書きは、ヘブル、ローマ、ギリシヤの三つの言葉で、イエスがユダヤ人の王だと告げます。ピラトは書き直しを拒みます。「わたしが書いたことは、書いたままにしておけ」。

30節
すると、イエスはそのぶどう酒を受けて、「すべてが終った」と言われ、首をたれて息をひきとられた。

「すべてが終った」は、ギリシア語では一つの言葉で、日常では負債が支払われたとき、務めが果たされたときに使われました。そのあとイエスは、来られた目的を成し遂げて、ご自分から霊をゆだねられます。

34-37節
しかし、ひとりの兵卒がやりでそのわきを突きさすと、すぐ血と水とが流れ出た。 それを見た者があかしをした。そして、そのあかしは真実である。その人は、自分が真実を語っていることを知っている。それは、あなたがたも信ずるようになるためである。 これらのことが起ったのは、「その骨はくだかれないであろう」との聖書の言葉が、成就するためである。 また聖書のほかのところに、「彼らは自分が刺し通した者を見るであろう」とある。

ヨハネは、突き刺されたわき腹と、くだかれなかった骨を強調します。そこに聖書の成就を見ており、読者が信じるようになるための目撃証言として書いています。

この章に登場する人物

説教が語っていること

ヨハネによる福音書19章についてよくある質問

ヨハネ19章30節の「すべてが終った」はどういう意味ですか

ヨハネが用いるギリシア語は、完成した働きや清算された負債のように、何かが終わりまで成し遂げられたことを意味します。イエスは、来られた目的が果たされたと宣言されます。多くのクリスチャンにとって、これは救いの働きが完全であり、私たちの努力で加えるものは何もないという意味です。その範囲の説明は伝統ごとに異なりますが、重要性については一致しています。

なぜイエスは母をヨハネに託されたのですか

26節と27節で、イエスは十字架のそばに母と愛弟子が立っているのをごらんになり、母と子として互いを受け入れるよう告げられます。弟子はその時から母を自分の家に引きとりました。本文は、苦しみの中にあってもイエスの優しさを示し、近しい人々の間に新しい家族のきずなを築いています。

なぜヨハネは、イエスのわきから流れ出た血と水について語るのですか

ひとりの兵卒がやりでイエスのわきを突きさすと、血と水とが流れ出ました。ヨハネは、それを見た者があかしをしていると述べ、読者が信じるようになるためだと言います。また、骨がくだかれないこと、刺し通した者を見ることという、二つの聖書の言葉の成就も見ています。血と水については、注解者がさまざまな象徴的な読み方を示しています。

ヨハネ19章のアリマタヤのヨセフとニコデモは誰ですか

二人は、それまで権力者を恐れて目立たないようにしてきたイエスの弟子です。イエスの死後、二人は表に出ます。ヨセフはピラトにイエスの遺体を願い出て、ニコデモは多量の香料を持って来ます。二人は遺体を、十字架の場所に近い園にある新しい墓に納めます。

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