聖書 — 口語訳 (1955)
ルカによる福音書 5
概要
ルカによる福音書5章は、人を召し、造り変えられるイエスを示します。イエスはシモンの舟から群衆に教え、奇跡の大漁のあとで、ペテロ、ヤコブ、ヨハネを召されます。彼らはすべてを捨ててイエスに従います。イエスは重い皮膚病の人をいやし、屋根からつり降ろされた中風の人の罪をゆるして癒されます。これに律法学者たちは憤ります。続いて取税人レビを召し、罪人たちと食事をともにされます。断食についての問いには、新しい布切れと新しいぶどう酒のたとえで答えられます。イエスがもたらすものは、古い枠には収まりません。この章は、罪をゆるし、失われた者を捜される救い主を示しています。
この章の5つの区分
1さて、群衆が神の言を聞こうとして押し寄せてきたとき、イエスはゲネサレ湖畔に立っておられたが、
2そこに二そうの小舟が寄せてあるのをごらんになった。漁師たちは、舟からおりて網を洗っていた。
3その一そうはシモンの舟であったが、イエスはそれに乗り込み、シモンに頼んで岸から少しこぎ出させ、そしてすわって、舟の中から群衆にお教えになった。
4話がすむと、シモンに「沖へこぎ出し、網をおろして漁をしてみなさい」と言われた。
5シモンは答えて言った、「先生、わたしたちは夜通し働きましたが、何も取れませんでした。しかし、お言葉ですから、網をおろしてみましょう」。
6そしてそのとおりにしたところ、おびただしい魚の群れがはいって、網が破れそうになった。
7そこで、もう一そうの舟にいた仲間に、加勢に来るよう合図をしたので、彼らがきて魚を両方の舟いっぱいに入れた。そのために、舟が沈みそうになった。
8これを見てシモン・ペテロは、イエスのひざもとにひれ伏して言った、「主よ、わたしから離れてください。わたしは罪深い者です」。
9彼も一緒にいた者たちもみな、取れた魚がおびただしいのに驚いたからである。
10シモンの仲間であったゼベダイの子ヤコブとヨハネも、同様であった。すると、イエスがシモンに言われた、「恐れることはない。今からあなたは人間をとる漁師になるのだ」。
11そこで彼らは舟を陸に引き上げ、いっさいを捨ててイエスに従った。
12イエスがある町におられた時、全身重い皮膚病にかかった人がそこにいた。イエスを見ると、顔を地に伏せて願って言った、「主よ、みこころでしたら、きよめていただけるのですが」。
13イエスは手を伸ばして彼にさわり、「そうしてあげよう、きよくなれ」と言われた。すると、重い皮膚病がただちに去ってしまった。
14イエスは、だれにも話さないようにと彼に言い聞かせ、「ただ行って自分のからだを祭司に見せ、それからあなたのきよめのため、モーセが命じたとおりのささげ物をして、人々に証明しなさい」とお命じになった。
15しかし、イエスの評判はますますひろまって行き、おびただしい群衆が、教を聞いたり、病気をなおしてもらったりするために、集まってきた。
16しかしイエスは、寂しい所に退いて祈っておられた。
17ある日のこと、イエスが教えておられると、ガリラヤやユダヤの方々の村から、またエルサレムからきたパリサイ人や律法学者たちが、そこにすわっていた。主の力が働いて、イエスは人々をいやされた。
18その時、ある人々が、ひとりの中風をわずらっている人を床にのせたまま連れてきて、家の中に運び入れ、イエスの前に置こうとした。
19ところが、群衆のためにどうしても運び入れる方法がなかったので、屋根にのぼり、瓦をはいで、病人を床ごと群衆のまん中につりおろして、イエスの前においた。
20イエスは彼らの信仰を見て、「人よ、あなたの罪はゆるされた」と言われた。
21すると律法学者とパリサイ人たちとは、「神を汚すことを言うこの人は、いったい、何者だ。神おひとりのほかに、だれが罪をゆるすことができるか」と言って論じはじめた。
22イエスは彼らの論議を見ぬいて、「あなたがたは心の中で何を論じているのか。
23あなたの罪はゆるされたと言うのと、起きて歩けと言うのと、どちらがたやすいか。
24しかし、人の子は地上で罪をゆるす権威を持っていることが、あなたがたにわかるために」と彼らに対して言い、中風の者にむかって、「あなたに命じる。起きよ、床を取り上げて家に帰れ」と言われた。
25すると病人は即座にみんなの前で起きあがり、寝ていた床を取りあげて、神をあがめながら家に帰って行った。
26みんなの者は驚嘆してしまった。そして神をあがめ、おそれに満たされて、「きょうは驚くべきことを見た」と言った。
27そののち、イエスが出て行かれると、レビという名の取税人が収税所にすわっているのを見て、「わたしに従ってきなさい」と言われた。
28すると、彼はいっさいを捨てて立ちあがり、イエスに従ってきた。
29それから、レビは自分の家で、イエスのために盛大な宴会を催したが、取税人やそのほか大ぜいの人々が、共に食卓に着いていた。
30ところが、パリサイ人やその律法学者たちが、イエスの弟子たちに対してつぶやいて言った、「どうしてあなたがたは、取税人や罪人などと飲食を共にするのか」。
31イエスは答えて言われた、「健康な人には医者はいらない。いるのは病人である。
32わたしがきたのは、義人を招くためではなく、罪人を招いて悔い改めさせるためである」。
33また彼らはイエスに言った、「ヨハネの弟子たちは、しばしば断食をし、また祈をしており、パリサイ人の弟子たちもそうしているのに、あなたの弟子たちは食べたり飲んだりしています」。
34するとイエスは言われた、「あなたがたは、花婿が一緒にいるのに、婚礼の客に断食をさせることができるであろうか。
35しかし、花婿が奪い去られる日が来る。その日には断食をするであろう」。
36それからイエスはまた一つの譬を語られた、「だれも、新しい着物から布ぎれを切り取って、古い着物につぎを当てるものはない。もしそんなことをしたら、新しい着物を裂くことになるし、新しいのから取った布ぎれも古いのに合わないであろう。
37まただれも、新しいぶどう酒を古い皮袋に入れはしない。もしそんなことをしたら、新しいぶどう酒は皮袋をはり裂き、そしてぶどう酒は流れ出るし、皮袋もむだになるであろう。
38新しいぶどう酒は新しい皮袋に入れるべきである。
39まただれも、古い酒を飲んでから、新しいのをほしがりはしない。『古いのが良い』と考えているからである」。
鍵となる聖句
シモンは答えて言った、「先生、わたしたちは夜通し働きましたが、何も取れませんでした。しかし、お言葉ですから、網をおろしてみましょう」。
ペテロは本職の漁師で、夜通し働いても何も取れませんでしたが、イエスのお言葉に従います。すべてが筋道立って納得できるまで待たない従順が、ここに示されています。
シモンの仲間であったゼベダイの子ヤコブとヨハネも、同様であった。すると、イエスがシモンに言われた、「恐れることはない。今からあなたは人間をとる漁師になるのだ」。
ペテロの恐れに対して、イエスは召命をもって答えられます。恐れることはない、あなたは人間をとる漁師になる。召命は、完全になったあとに来るのではなく、自分が罪深い者だと認める人との出会いの中で与えられます。
イエスは彼らの信仰を見て、「人よ、あなたの罪はゆるされた」と言われた。
中風の人を癒す前に、イエスは彼を運んできた人々の信仰を見て、ゆるしについて語られます。いちばん深い必要は、体のことだけではないと、この出来事は教えています。
イエスは答えて言われた、「健康な人には医者はいらない。いるのは病人である。 わたしがきたのは、義人を招くためではなく、罪人を招いて悔い改めさせるためである」。
イエスは、レビとその友人たちとの食事を、医者のたとえで説明されます。イエスは病人のために来られ、罪人を悔い改めに招かれます。これは罪を認めることではなく、自分の必要を認める人々への招きです。
まただれも、新しいぶどう酒を古い皮袋に入れはしない。もしそんなことをしたら、新しいぶどう酒は皮袋をはり裂き、そしてぶどう酒は流れ出るし、皮袋もむだになるであろう。 新しいぶどう酒は新しい皮袋に入れるべきである。
新しいぶどう酒は新しい皮袋を必要とします。イエスは、ご自分がもたらすものは、古いものにただ並べて加えられるのではなく、新しくされることを受け入れる必要があると示されます。断食のような以前の習わしとの正確な関係については、キリスト者の間で理解が分かれています。
この章に登場する人物
このテーマで祈る
説教が語っていること
ルカによる福音書5章についてよくある質問
ルカによる福音書5章の奇跡の大漁はどういう意味ですか
一晩何も取れなかったあと、ペテロはイエスのお言葉に従って網を下ろし、おびただしい魚を得ます。そこでペテロはイエスがだれであるかを悟り、自分が罪深い者だと認めます。イエスは彼を人間をとる漁師へと召し、最初の弟子たちはすべてを捨てます。この物語は、イエスへの従順が、もとの職業を超えた召命へと開かれることを示しています。
なぜイエスは中風の人の罪を先にゆるされたのですか
20節で、イエスは屋根を開けた人々の信仰を見て、いやす前にゆるしを宣言されます。律法学者たちはこれを冒瀆と見ます。神おひとりだけが罪をゆるされるからです。そこでイエスは、罪をゆるす権威があることを示すために、その人を癒されます。いちばん深い必要は、体のことだけではありません。
新しいぶどう酒と古い皮袋のたとえはどういう意味ですか
イエスは断食についての問いに、新しいぶどう酒を古い皮袋に入れる者はいない、皮袋が裂けるからだと答えられます。ご自身の到来は新しいことであり、古い習慣の中に閉じ込めておくことはできない、という意味です。このたとえの正確な広がりについては議論がありますが、だれもがそこに、イエスがもたらす新しさを迎え入れるようにとの招きを見ています。
ルカによる福音書 5を引用している記事
口語訳(1955年)— パブリックドメイン。